経理アウトソーシングの失敗リスクとは?実際の例から学ぶ原因と対策2024.10.03

【この記事の監修者】 株式会社Bricks&UK Outsourcing業務コンサルタント
経理の業務設計・運用に優れたコンサルタントが、効率的で正確な業務請負いをお約束します。

経理のアウトソーシングを当社にご依頼いただくうちの3割は、「他社からの乗り換え」です。つまり、いったん別の経理代行業者と契約したものの、何らかの原因でうまくいかなったケースが一定数あるということです。

経理アウトソーシングを請け負う業者は数多く存在しますが、「どこも同じ」ではありません。しっかり検討して、自社に合った業者を選ぶ必要があります。

今回は、経理アウトソーシングに失敗してしまったという実際の事例を紹介。失敗の原因を明らかにし、それを踏まえた委託先業者の選定ポイントや注意点を解説します。

【失敗事例1】新たなシステムに適応できず、生産性が低下

経理アウトソーシングの失敗事例その1

岐阜県にある建設会社A社は、数件の経理アウトソーシング会社から見積もりを取り、月額コストが最も安かったところを選びました。

低コストで効率化できるはずが…

料金は安かったものの、ホームページや担当者の話に「クラウド化」「システム化」など先進的な言葉が多く使われ、スマートで効率的なサービスだという印象を受けたそうです。

そして業務を始めると、「経費精算はこのシステムを入れてください」「給与計算はこっちのソフトを」と、まずシステムの全面的な変更を指示されました。

慣れないシステムでミスが増加

しかしもともと、紙やエクセルを長年利用してきたA社。慣れないシステムへの対応に、従業員から多くの戸惑いの声が寄せられました。それでも、「そのうち慣れるだろう」と3か月ほど契約を続けます。

しかし、従業員の苦手意識を払拭することはやはり難しかったよう。入力ミスや確認作業などが増えてしまい、効率化できるどころか、生産性が下がってしまったのです。

そのためA社は、委託先を再検討せざるを得なくなりました。

【失敗事例2】社外専門家との連携のため、増員が必要に

経理アウトソーシングの失敗事例その2

次は、港区のシステム会社B社の例です。

B社では、従業員が5名を超えたタイミングで経理のアウトソーシングを検討し始めました。経理専門に事務員を採用するより、外部委託した方が退職のリスクや人件費の負担がなくなる、というのがその理由です。

数社から見積もりを取り、中でも特に条件の良かった1社と契約しました。

代行業務自体に不満はないが…

委託後、経理の通常業務については問題なく、満足度も高かったのですが、問題は頻繁に必要となる社労士や税理士とのやり取りでした。

契約した業者は経理代行のみを請け負っており、社労士や税理士との間に入ってもらうことはできません。そのため、給与計算の結果や税務関連の資料を提出するための人材が新たに必要となる事態に。

雇うより低コストになるはずが…

結局B社では、経理代行業者と税理士・社労士とのやり取りをするため、パート社員を1名採用せざるを得ませんでした。

そもそも、経理担当社員の採用コストや、退職リスクを考えてのアウトソーシング。それなのに新規採用が必要となってしまい、余計にコストがかかる結果となってしまったのです。

【失敗事例3】委託先への引継ぎ不足で大混乱

経理アウトソーシングの失敗事例その3

最後に紹介するのは、愛知県でサプリメントの卸売り販売を行うC社の事例です。

C社では、経理担当の社員が産休に入るため、経理アウトソーシングの一時的な利用を検討していました。

プロならスムーズに業務を引き継げるはず?

卸売りという業態の特性上、売上規模に対して経理担当者の業務が多いという事情があります。新規採用して教えるより、プロに頼んだ方が早いと考えました。

経理のアウトソーシングにあたっては、まず自社から代行サービス会社へ業務の引継ぎが必要です。候補に挙がった委託先のスタッフは、知識が豊富で説明も上手。引継ぎについては確認しなかったものの、問題なさそうだと安心して契約を行ったそうです。

経理の知識は豊富でも…

しかし、実務を担当するのは別の人物でした。当然その担当者にも経理の一般的な知識はあるものの、引継ぎの説明はほとんど産休に入る社員まかせ。代行する側の担当者は終始受け身で、聞いているだけだったそうです。

C社としては、必要事項の確認など委託先が主導権をもって引継ぎをしてくれるものと思っていた、とのことでした。

引継ぎしたはずなのに大混乱

産休に入る当人も、業務の引き継ぎに慣れているわけではありませんでした。ましてや別の会社の人間への引継ぎで、相手は経理のプロだと聞いていれば、どこまで説明すべきかも難しいところでしょう。

そのため、十分な引き継ぎができたわけではありませんでした。

そしていざ当人が産休に入ると、必要な業務の抜けや漏れが多く発生する事態に。「わかる人が誰もいない」状態となり、C社も委託先も大混乱となりました。

経理アウトソーシングの失敗原因と予防策

上記3社の経理アウトソーシングの事例では、失敗の原因として次のようなことが挙げられます。

  • 自社の実状に合わない委託先を選んでしまった
  • 委託についての社内周知・理解が不足していた
  • 業者が税理士・社労士と連携していなかった
  • 委託先の担当者が引継ぎに不慣れだった

では、どうすれば失敗が防げたのでしょう。ここからは、失敗原因を踏まえた経理アウトソーシング委託時の注意点を解説します。

注意点は次の4つです。

  • 導入のしやすさも考慮して選ぶ
  • 事前に社内の理解を得て、土台を作る
  • 税理士・社労士と連携している業者を選ぶ
  • 委託先の実績・体系などを確認しておく

それぞれ解説します。

導入のしやすさも考慮して選ぶ

過度なルールやシステムの変更は、予想外のコストの発生や社員への負担増など、大きなデメリットになります。

会計など各種ソフトに関しては、複数の種類のソフトに対応している業者なら、今使っているソフトのままで問題ないケースも。また、引き継ぎや社員への説明など、向き合うリスクを想定して導入の提案をしてくれる業者もあります。

変更による一時の負担はつきものですが、負担を減らすために活用するのが経理アウトソーシングです。導入しやすいかどうかも視野に入れて選んでみてください。

事前に社内の理解を得て、土台を作る

結果的に良いものだとしても、いきなりシステムが変わり、慣れないソフトの使用を強制されることは、忙しい社員にとって大きな負担です。経理を他社に任せることに不安や疑問を持つ社員がいる可能性も。

何をするにしても、事前説明のない指示や変更には摩擦が生じがちです。導入前に社内周知をし、ソフトの変更などが必要であれば事前の講習や説明会を行うなど、社内で導入の土台作りをすることをおすすめします。

誰でもすぐに見られるようなマニュアルを用意するなどの対策も効果的です。

税理士や社労士と連携している業者を選ぶ

経理代行を請け負う業者にも種類があり、経理代行しかしない業者もあれば、税理士事務所や社労士事務所を母体とし、サービスを連携できる業者もあります。

事業経営には税務申告が必須ですし、従業員がいるなら労務管理も必須です。すべて別の業者にバラバラに委託するよりは、提携している業者を利用した方が、それぞれの手続きがスムーズにできて効率的です。

ただ、社内業務を一部アウトソーシングするとしても、当然ながら完全に切り離すわけではありません。
そのため、委託先の種類によらず誰かしら社内の人材が間に入ることは必須です。

委託先の実績・体系を確認しておく

経理アウトソーシングの利用では、不十分な引継ぎによってトラブルとなることが多くあります。そのため、トラブルを避けるには、実績が十分にある業者を選ぶのが得策です。

話を聞く際は、これまで他社の引継ぎ・代行の実績がどれくらいあるか、自社と同じ業種での実績があるか、自社の業務を引き継ぐ担当者はどんな人物か、などを確認してください。

経理業務に関する社内マニュアルがない場合、この機会に作っておくことをおすすめします。

マニュアル作成の過程で、ムダな作業の洗い出しや業務フローの見直しもできますし、委託先への引継ぎもスムーズに。将来的な内製化にも大いに役立ちます。

経理アウトソーシングは「投げて終わり」ではない

経理アウトソーシングの使い方

この記事では、経理アウトソーシングの「活用に失敗」した実例を3つ紹介しました。しかし、経理アウトソーシングの活用による「経営の失敗」を危惧する声もあります。

それは、経理を代行業者に任せることで「経営者が数字を見なくなり、経営危機に陥るリスクがある」ということです。

使い方を間違えないことが大切

しかし、どんなツールやサービスも「使い方」が重要です。経理アウトソーシングにも、さまざまな活用法があります。

たとえば資金繰り表の作成までを頼み、定期的に数字を把握することも当然可能です。

業者に仕事を任せて終わりではなく、作業に必要な資料やデータを遅滞なく提出したり、完成した資料を確認したりと、自社ですべきことはする必要があります。

効率化のために有効活用を

数字の把握などは、どんな場合でも事業経営に必須であり、経理をアウトソーシングしたからできない、不要になる、というものではありません。

経営まで丸投げしてしまえば、経理アウトソーシングも事業の失敗につながってしまうことに。

失敗事例を参考にしたうえで、負担の軽減や業務の効率化のためにぜひ、経理アウトソーシングを有効に活用してください。

「Bricks&UKアウトソーシング」は税理士法人が母体

Bricks&UKアウトソーシング」は税理士法人が母体

当社「Bricks&UKアウトソーシング」は、税理士法人を母体とし、社会保険労務士事務所もグループに持つ経理代行サービスです。

経理業務の丸投げや、現在ご利用のツール・ソフトの活用、1カ月お試しなどでの利用もOK。改善すべき点がある場合には、適切な方法もご提案いたします。

人手不足の解消や業務効率化に経理アウトソーシングをお考えなら、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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