経理業務を効率化するメリットと方法2021.06.08
働き方改革が推進される中で、昨今では多くの企業で経理業務の効率化を図る動きが見られます。
もともと経理は膨大な業務量を少人数に対応させている企業が多く、「残業時間の長さ」や「属人化による業務改善策の立てにくさ」などの課題に悩まされやすいです。
その一方、経理業務には定型化されているものが多く、効率化しやすいという特徴も見られます。
つまり、工夫次第で大幅な効率化を実現できる可能性があるのです。そこでこの記事では、経理業務に課題を抱えている企業に向けて、経理業務の効率化を図る必要性/メリット/進め方/具体的な方法などをわかりやすく紹介します。
経理業務を効率化すべき理由
経理業務の効率化を図る必要性は非常に高いですが、これには主に以下の理由が挙げられます。
- 経理業務は属人化/ブラックボックス化しやすい
- 社員が本来の業務に専念できない
- 人材不足への対策
- 正確かつ迅速な処理の実現
- 経理に求められる役割の変化
それぞれの理由を順番に詳しく紹介します。
経理業務は属人化/ブラックボックス化しやすい
もともと経理は会社に直接的な利益をもたらす部門ではないため、人員が最小限に抑えられる傾向にあります。とりわけ中小企業では、少人数(場合によっては1人)の担当者にすべての経理業務を担わせているケースが多く見られる状況です。
こうした企業では経理担当者が独自のやり方によって業務を手掛けている場合が多く、特定の専門知識が求められる点も相まって、属人化/ブラックボックス化の進行につながっています。
つまり、特定の経理担当者以外から業務内容、問題点などが見えにくく、改善策の策定・実行が難しい状況にあるのです。
また、経理担当者の変更によりミスの発生頻度が上昇するなど、業務が滞るリスクも問題視されています。
さらに、上記の事情により、経理業務の非効率化だけでなく、担当者の退社時およびセキュリティ面におけるリスクの大きさも問題視されています。
そのため、業務の効率化によって特定の担当者に依存しない経理環境を整備しつつ、現場の負担を軽減する必要があります。
社員が本来の業務に専念できない
前述のとおり、経理業務の遂行には高度な専門知識が求められるために、属人化しやすい傾向があります。
そのため、新年度および繁忙時などに別の部署からスタッフを増員する際、指導に非常に多くの手間がかかってしまうのです。これにより、本来の経理担当者が業務に専念できなくなり、経理部門の非効率化につながっています。
人材不足への対策
経理に求められる業務は増加しているにも関わらず、人材不足が深刻化している状況です。
今後も人材不足が進行すれば、経理部門の担当者にかかる負担もますます増大するものと見られます。
なお、人材不足は経理担当者の負担増加だけでなく属人化にもつながるため、早急に解決すべき課題です。
正確かつ迅速な処理の実現
経理はお金を取り扱う非常に重要な部門であり、1円単位まで正確に処理しなければなりません。仮に経理業務でミスが発生すれば、取引先からの信用を失うおそれがあります。しかし、「ミスが許されない」と意識するあまり石橋を叩くような作業スピードで進めるケースもあり、業務速度が遅いことで業務効率の低下につながりかねません。
その一方で、経理部門は会社の経営判断に直結しており、業務スピードも求められます。仮に決算関連業務の精度が低かったり遅延が生じたりしまうと、タイムリーかつ的確な経営判断を下せなくなり、事業にも大きな悪影響を及ぼしかねません。
とりわけ月初めや月末などの時期には請求処理が集中しやすく、膨大な業務量をこなすために残業を余儀なくされるケースが多いです。また、この時期には経理担当者が膨大な業務量に忙殺されて疲労が蓄積しており、ミスや2度手間などが発生しやすい傾向もあります。そのため、経理業務の効率化を通じて、正確かつ迅速な処理の実現が求められているのです。
経理に求められる役割の変化
従来、経理部門が手掛ける主な業務は、伝票処理/月次決算/税務申告書/開示書類の作成などでした。
しかし、現代は経営環境が大幅に変化しており、経営判断に必要な情報をリアルタイムで報告することが求められています。
これに伴い、経理部門でも付加価値の高い業務をこなす必要性が生じているため、従来の経理業務の効率化によってこうした変化に対応できる環境を整えなければなりません。
経理業務を効率化するメリット
経理業務を効率化すると生産性の向上が期待できますが、これに伴い以下のようなメリットがもたらされます。
社員の負担軽減
社員の負担軽減は、業務の効率化による生産性の向上がもたらす代表的なメリットです。
経理業務において、書類の煩雑なやり取りや入力などの単純作業を効率化できれば、それだけ業務時間の短縮につながります。
煩雑な業務にかかる時間が短縮されると、経理担当者の負担軽減にもつながるため、より付加価値の高い業務(例:経営分析)に時間を割り当てることが可能です。
時間的/金銭的なコストの削減
経理業務の効率化によりルーティン作業のスピードが向上すれば、業務時間が全体的に短縮されるため、人件費などの金銭的なコスト削減にもつながります。
また、業務の効率化に伴い紙データを減らせば、用紙代/印刷代/郵送費などのコスト削減も可能です。
なお、不必要な残業時間の削減は、余暇の時間が生まれるために社員の幸福度向上にもつながります。
つまり、残業時間の削減は、労使ともにメリットの大きい取り組みです。そのほか、残業時間を削減する主なメリットには、以下の項目が挙げられます。
- 社員の意欲/モチベーションを向上させられる
- 過労死リスクを低減させられる
- 社会的信用を向上させられる
- 社員の離職率を低下させられる
ミスの減少
経理業務における入力などの単純作業は、人が行うためにどれほど正確な業務を心がけていてもミスを完全に無くすことは不可能に近いです。
しかし、経理業務の効率化に伴いITツールを導入すると、入力や計算などの単純なミスを無くせます。
また、集計作業も大幅に迅速化できることから、より高度な業務に関するアウトプットにもつなげることが可能です。
加えて、社員が持ち帰ったパソコンを紛失して顧客情報が流出したり、メールの誤送信で取引停止に追い込まれたりなど、個人のミスが会社の運営を揺るがすような事態も回避できます。
経営判断のスピード化
もともと会社は、社長が方針を発表したうえで、それに沿って現場が動いた結果として利益を上げる仕組みのもとで運営されています。そして、この取りまとめ役として、経理部門が位置付けられているのです。
もしも業務効率化によって経理業務がスピーディーに処理できるようになれば、月次決算が早期化できるために、経営陣の意思決定のスピード化にもつなげられます。 意思決定を実行に移すスピードも向上することから、経理部門に留まらず会社全体における業務スピードの向上が期待できます。そのため、現状では経理に関する悩みを抱えていない企業であっても、後回しにせず業務の効率化を図る意義は大きいです。
経理業務の効率化の進め方:3ステップ
経理業務の効率化を進めるためには具体的にどうしていったらいいでしょうか。3ステップで説明します。
各担当者の具体的な業務を見える化する
まずは、経理の担当者ごとに具体的な業務内容を見える化していきます。ここでは、具体的にどのような業務を行っているのか、その内容を洗い出して明確にしましょう。
洗い出す際のポイントとしては、時系列順に業務内容を紙などに記載していくと良いです。つまり、朝から勤務終了に至るまで、どのような業務があるのかを思い出しながら書いていくと、抜け漏れを防げます。
このように、時系列順に業務内容を書き出したうえで、担務内容/作業目的/頻度/かかる時間などを記載するだけでも、効率化のポイントが見えてくるケースがあります。
とはいえ、これだけでは見える化が足りない部分も多いため、組織内で担当者の持つ知識を共有する施策も取り入れましょう。ここでは、毎日の業務報告の義務付けについて、いつ/誰が/何を/どのように情報を共有するのか明確にしたうえで仕組みを構築しておくと、業務の見える化が着実に進みます。
その内容について、次のポイントで改善策を検討する
業務を見える化した後は、その内容について、以下の3ポイントから改善策を検討します。
- 慣習だけの不要な業務、二度手間など無駄な流れがないか
- ITツールなどを使って簡素化できないか
- 外部に委託できる業務はないか
まずは、前のステップで洗い出した業務内容を、具体的な行動が見えるレベルまで細分化しましょう。
具体例を挙げると、請求書発行の業務は、請求するデータの作成、印刷の業務などに細分化することが可能です。これにより、二度手間で無駄な流れなどが見えてきます。
次に、ITツールなどの使用によって、業務を簡素化できないか検討します。例えば、経費精算システムを導入すると、経費精算業務における属人化を解消できるため、業務自体の時間短縮などを実現可能です。
最後に、外部に委託できる業務の検討を行います。
例えば、事務用品を購入するたびに小口で精算していると、かかる手間は非常に大きいです。
しかし、事務用品の専門業者に注文して伝票をまとめてもらえば、手間を大幅に削減できます。
以上の3ステップを順番に検討していくことで、改善策の効果的な検討につなげましょう。
改善策を実行に移す
前ステップで検討した改善策を実際に講じていきます。
とはいえ、実際にどのような改善策があるのか把握しておかないと、適切でない方法で経理業務の効率化を図ってしまい、十分な効果が得られないおそれがあるため注意しなければなりません。 そこで、次章では経理業務の効率化を図るための具体的な改善策について取り上げますので、しっかりと把握したうえで自社の課題解決に役立てましょう。
経理業務を効率化する6つの方法
ペーパーレス化
もともと経理業務では数多くの書類を発行・受領しており、それぞれの書類を法律で定められた期間にわたって保存しておかなければなりません。そこで、書類の発行・保存を効率化するうえで、ペーパーレス化は必要不可欠だといえます。政府も電子帳簿保存法の改正を重ねており、ビジネス文書のペーパーレス化を推進している状況です。 実際にペーパーレス化を図る際は、後述する経費精算システムの導入などが効果的です。
キャッシュレス化
経理業務において小口現金を採用していると、両替/現金の補充/現金出納帳の記入/金庫の管理などで煩わしい業務が発生します。また、小口現金の残高と現金出納帳の残高が合わないことで、原因特定のために無用な時間を費やしてしまうケースも少なくありません。こうした経理業務の非効率を解消するうえで、キャッシュレス化は必要不可欠の施策です。
キャッシュレス化により小口現金を無くし、経費精算を銀行振り込みに変えることで、現金を管理する手間を省略できるために経理業務の効率化につながります。
なお、ネットバンキングに切り替えれば、銀行振り込みを行う時間を大幅に削減可能です。 合わせて、領収書の発行にも手間を感じている場合には、法人クレジットカードの導入もおすすめします。法人クレジットカードを導入すると、社員に追加カードを発行できるため、社員が立て替えた経費の一括管理が可能です。
エクセルの活用
会計ソフトを導入していなかったり、導入していても最低限の機能しか使えなかったりするケースでは、マイクロソフトのエクセル(Excel)を活用するのもひとつの方法です。エクセルを活用するだけでも、日々の交通費精算書/請求書/精算書/見積書などの書類を幅広く作成できるようになります。これは個人レベルでも採用できる改善策であるため、経理業務の効率化について会社から予算が出ないケースにおいてもおすすめです。
会計ソフトの利用
まだ会計ソフトの導入が済んでいないならば、会計ソフトの導入によって経理業務の大幅な効率化が期待できます。特にクラウド型の会計ソフトであれば、導入に際して会社のパソコンにソフトをインストールする必要がなく、インターネット環境さえあればクラウドサーバー上で常に最新のソフトを使用可能です。
最近では多種多様なクラウド会計ソフトが登場していますが、多くの製品には銀行口座/クレジットカードなどの明細が自動的に会計ソフト上に反映される機能が備わっています。
これにより、手入力での記帳業務が不要となるため、作業時間の大幅な短縮が可能です。
各種システムの導入
会計ソフトだけでなく以下のような経理業務に関するシステムを導入すると、効率化が大幅に進みます。
- 経費精算システム
- 請求書発行システム
- 資産管理システム
例えば、経費精算システムを導入すれば、会計ソフトへの手入力/経費集計/入力などの作業を自動化できるだけでなく、電子化によるペーパーレス化および、承認/申請業務自体を省力化できるメリットがあります。また、請求書発行システムの導入によって、請求書作成 /印刷と発送/期日の入金確認などの業務負担を軽減可能です。
そして、資産管理システムの導入では、所有するすべての固定資産が簡単に把握できるようになるほか、必要な投資判断/リース資産の管理/正確な減価償却なども自動化できます。
アウトソーシングの活用
最近では、経理業務をアウトソーシング(経理代行)する会社が増加しています。アウトソーシングとは、外部の専門業者に経理業務を代行してもらうサービスのことです。以下では、主なアウトソーシング先をまとめました。
- 税理士に任せる
- クラウドサービスの利用
- 経理代行サービスの利用
これらの専門家やサービスを活用すれば、記帳代行・仕分けだけでなく、給与振り込みや請求書の発行などの業務をピンポイントで代行してもらうことも可能です。
例えば、貸借対照表や損益計算書の作成、年末調整の処理などは大きな手間がかかりやすいため、アウトソーシングできれば大幅な効率化につながります。
また、アウトソーシングの活用次第では、特定の経理担当者に業務が属人化してしまう事態も回避できるため、社員の退職のたびに発生する採用コストが抑えられるうえに、引き継ぎの手間を軽減できる点もメリットです。
自社で負担になっている経理業務を洗い出したうえで、アウトソーシングの活用を検討しましょう。
まとめ
この記事では、経理業務の改善を図りたい方に向けて、経理業務の効率化を図る必要性、メリット、進め方、具体的な方法などを幅広く紹介しました。
経理業務の効率化は、経理業務の属人化・ブラックボックス化の解消/経理担当者を本来の業務に専念させる/人材不足への対策などを理由として、多くの企業で実施されています。
また、経理業務の効率化が実現すれば、多くのメリットを享受できます。実際に経理業務の効率化を図る際は、経理担当者の業務を見える化しつつ、改善策を検討しましょう。これにより、自社に適した改善策を選択できます。
なお、もしも経理代行サービスの利用をご検討中でしたら、Bricks&UKアウトソーシングにおまかせください!
Bricks&UKアウトソーシングは、税理士法人Bricks&UKを母体としたBricks&UKグループが運営するアウトソーシング会社です。
人材不足に悩む中小企業様をサポートすべく、経理業務のすべてを委託できるサービス内容を展開しております。税理士法人が母体とする会社であり経験豊富な税務スタッフが多数在籍していることから、正確かつ質の高い経理代行サービスの提供が可能です。これまで使っていたソフトやツールを活用し、引継ぎなしでも業務を遂行いたしますので、「経理業務の効率化を図りたい」とお考えでしたら、まずはBricks&UKアウトソーシングにお気軽にご相談ください!