経理業務を効率化すべき理由と8つの方法、正しい進め方2024.10.17

経理業務効率化の必要性

働き方改革の推進が求められる中、原料や資材費の高騰、最低賃金の値上げ、業績の不振や人手不足などに悩まされる企業は少なくありません。

状況を打破するためさまざまな解決策が模索されていますが、その1つが経理業務の効率化です。

中小企業では特に、経理は少人数に任されることが多い業務です。しかし業務量は多く、働き方改革の逆を行く長時間労働や、業務の属人化といった問題も生じがちです。一方で、経理業務は定型化できるものが多く、効率化もしやすいのが特徴です。

今回は、経理業務の効率化について、その必要性や進め方、具体的な方法を解説します。

経理の業務効率化が必要な理由

経理の業務効率化が必要な理由

経理業務の効率化が重要なのは、会社が直面する課題の解決につながるからです。業界・業種を問わず、多くの企業で経理業務に次のような課題が生じています。

  • 業務過多で長時間労働が多い
  • 業務が属人化・ブラックボックス化している
  • 経理知識・経験のある人材が不足している
  • ミスが多発したり、作業が滞ったりしている
  • 専任者がおらず、本業と兼務している
  • 経理に求められる役割が変化している

それぞれ順番に見ていきましょう。

業務過多で長時間労働が多い

経理の業務過多による長時間労働

経理業務は細かい作業が多く、日次・月次・年次それぞれの場面で行うべき業務もあります。決算などは法律や税金の手続きが関わってくるため、後回しにもできません。

経理担当者の長時間労働や休日出勤が常態化している企業は多く見受けられます。

属人化・ブラックボックス化している

経理の属人化・ブラックボックス化

中小企業では、経理担当者が1人しかいないことも珍しくありません。

担当者が独自のやり方で業務を行うことになり、それをチェックできる知識のある人もいないことが多いため、属人化やブラックボックス化になりがちです。

属人化・ブラックボックス化すると、担当者が休みを取ったり休職・退職となったりした途端に、業務が滞ります。また、社員による不正が行われやすい環境を作ってしまいます。

経理担当者が定着しない

経理業務の効率化が必要な理由

経理担当を新たに雇っても、定着せずすぐに退職してしまう、という嘆きの声もよく聞かれます。

「経理」と一口に言ってもさまざまな業務、さまざまなやり方があるため、経験者だからと雇用しても、スムーズに行くとは限りません。

教えてもらえると思いきや引き継ぎなしで業務を始めなくてはならない、女性同士の人間関係がうまくいかない、など退職の要因はさまざまです。

経理経験のある優秀人材の採用も難しい

経理経験のある優秀人材の採用も難しい

経理業務はどの企業でも必要なため、求人は常にある状態です。さらに転職市場は売り手優位が続いています。そのため、優秀な人材ほど、より好条件の企業に取られてしまいます。

なるべく低コストで優秀な人材を…と思っても、応募が来ない、来ても条件に満たないなどして、採用も簡単ではありません。

ミスや作業の遅延が多発している

経理業務のミスの多発や作業の遅延が起きている状態

本業と経理を1人で兼務しているような場合や、繁忙期、業務方による疲弊、経験や知識不足など、さまざまな理由でミスが発生します。

しかし経理業務は、正確な処理が必須であり、支払いなどの期日やルールも守らねばなりません。

ひとたび大きなミスが発生すれば、取引先や顧客からの信用を失います。決算関連の業務が遅れれば、タイムリーな経営判断の妨げにもなり得ます。

専任者がおらず、本業と兼務している

経理業務を効率化すべき背景

個人事業主や1人社長など、少人数で事業を行っている場合に多いのが、営業や製造などの業務と経理を同じ人が兼任するパターンです。

兼任だと経理に慣れていない人も多いため、作業に時間もかかり、本業を圧迫しがちです。処理を間違えてしまうリスクもあります。

求められる役割が変化している

経理の業務効率化が必須の理由

従来、経理部門が手掛ける主な業務と言えば次のような作業に限られるケースがほとんどでした。

  • 伝票処理
  • 月次決算
  • 税務申告書/開示書類の作成 など

しかし現在はこれらの業務だけでなく、経営判断に必要な情報をリアルタイムで報告することも求められています。

つまり、通帳や現金の残高を合わせるような作業に時間をかけてはいられなくなっているのです。

経理の業務効率化で得られる4つのメリット

経理の業務効率化で得られる4つのメリット

一般に、業務の効率化は生産性の向上につながると言われます。

経理部門でも例外ではなく、業務効率化によって次のようなメリットが生まれ、課題の解決や生産性の向上につながります。

社員の負担軽減

経理業務では、数字の入力などの単純作業や書類の煩雑なやり取りなどに時間を取られることが多く、担当者の負担になっています。

ルーティン作業が効率化できれば、作業時間も短縮され、より重要度の高い業務、付加価値の高い業務に時間を割くことができます。たとえば、経営分析やガバナンスの強化、部内のマネジメントといった業務です。

時間的・金銭的なコストの削減

経理業務の効率化による時間的・金銭的なコストの削減

経理業務の効率化で作業時間が短縮できれば、残業や休日労働などが減り、人件費の削減につながります。同時に社員は労働環境への満足度が上がりますし、会社は過労死などのリスクが防止できます。

社員のモチベーションが上がり、離職率の低下につながれば、会社は社会的信用を高められますし、規定の要件を満たせば、雇用関連の助成金を受け取れる可能性もあります。

IT化による効率化なら、用紙代や印刷代、郵送費といったコストも減らせます。

人的ミスの削減

入力などの作業を人間が行うと、どんなに注意したつもりでもミスが発生しがちです。

しかし、ITツールを導入して業務効率化を図れば、入力項目や単純計算のミスなどをなくすことができます。

集計作業も正確かつ迅速にできるので、たとえば経営会議の資料にミスがあり、それにより経営判断に悪影響を及ぼすようなこともなくなります。

経営判断のスピード化

経理部門でのデータ集計が遅れれば、経営判断も遅くなり、戦略を誤ったり好機を逃したりする恐れがあります。

業務効率化で月次決算が早期化できれば、経営陣の意思決定のスピード化につながり、さらにその実行もタイムリーかつスピーディーに行えることに。経理部門から会社全体に、大きなメリットをもたらすことができます。

現状では経理に関する悩みを抱えていない企業であっても、後回しにせず業務の効率化を図る意義は大いにあります。

経理業務を効率化するための5つのステップ

経理業務を効率化するための5つのステップ

経理業務の効率化は、正しい方法で進める必要があります。多額な費用をかければできるというわけではなく、やり方を間違えれば失敗してしまいます。次のような手順で着実に行いましょう。

  • 1)経理業務を棚卸しし、見える化する
  • 2)見える化した各人の業務を一覧にし、共有する
  • 3)可視化した業務とフローについて、改善点を探す
  • 4)改善点をまとめ、対応策を決める
  • 5)対応策を実行に移す

それぞれ説明します。

1)経理業務を棚卸し→見える化

まずは、経理担当者ごとの具体的な業務内容を見える化します。誰がどのような業務を行っているかを明確にしましょう。

ポイントは、業務内容を時系列に紙などに書き出していくことです。出勤から退勤まで、いつ何を行っているかを思い出し、「作業内容」「作業の目的」「作業の頻度」「かかる時間」を書きます。日次の業務、月次の業務、年一の業務なども忘れず洗い出します。

このとき、作業内容は具体的な行動にまで細分化しましょう。たとえば「請求書発行」なら、請求するデータの作成、プリントアウトなどに細分化できます。

2)各人の業務を一覧にして共有

1)で各担当者の業務を洗い出したら、一覧にまとめ、業務フローも可視化します。

それを部門内で共有し、「誰が」「いつ」「何を」しているかを明確にします。

書類のファイリングやデータの保存についても、保存場所・保存期間や方法などを確認することで、問題点が見えてくる可能性があります。

3)業務とフローの改善点を検討

次に、可視化した業務について、改善点を明らかにしましょう。 主なポイントは次の5点です。

  • 慣習だけのムダな業務はないか
  • 二度手間など不要・非効率な流れがないか
  • 各人の業務量のバランスは取れているか
  • ITツールなどで簡素化できる業務はないか
  • 社外リソースに頼れる業務はないか

それぞれ具体的に見ていきましょう。

ムダな業務はないか

まずは、洗い出した業務の中で、慣例で行ってはいるものの実質的に不要な作業がないかを確認します。

過去には必要だったけれども、今では法令や社内体制などが変わって必要のなくなっている作業があるかもしれません。

また、行わなくても問題のない作業、時間をかけてまでする必要のない作業、1人の社員のためだけに手間をかけている作業などがないかもチェックポイントです。

不要・非効率な流れはないか

経理の業務効率化をすべき理由

業務の流れも、不要だったり非効率だったりしていないかを確認します。

たとえば、「この作業とこの作業を別の人がするのは非効率」「チェックが二度手間になっている」など。担当者には、ファイリングの仕方や保管場所1つでも負担になることがあります。

複数人で作業する場合、口には出さなくても個人レベルで「本当はこうした方が…」と改善点を見出しているケースは多いものです。機会を作って洗い出しましょう。

業務量のバランスはどうか

また、業務量に偏りがないかどうかの確認も必要です。

1人の社員の業務負担が他の社員より多く、それが原因で残業になってはいないか。知識や経験がないのにベテラン社員と同じ量の仕事を振り分けられていないか。

業務に関する知識量や仕事のスピードなどに差がある場合は、進め方のコツや知識を共有する機会を設けるのも1つの方法です。

簡素化・省力化できる業務はないか

次に、ツールやシステムの導入により簡素化・省力化できる業務がないかを検討します。

選択肢としては、たとえば交通費や仮払金を精算する経費精算システムの導入や、請求書の発行ができるWeb請求書発行システム、給与計算システムなどの導入があります。

紙でのやり取りをなくせないか、小口現金の取り扱いを止められないかも大きなポイントです。

社外リソースに頼れる業務はないか

社外の専門家に委託できる業務がないかも検討します。

たとえば事務用品の購入のたびに外出・精算している場合、専門業者にオンライン発注すれば済むのではないか、など。

給与計算や記帳業務に多くの時間が取られているなら、税理士や社会保険労務士に依頼する、もしくはアウトソーシングするという選択肢もあります。

4)改善点をまとめ、対応策を決定

改善すべき点が明らかになったら、それぞれの対応策を検討します。ムダな作業は廃止、ムダな流れは是正するなどしていきましょう。

現場の声を無視しては反発を招き、徹底されないおそれがあるので、実際に業務を行う人の意見を聞きながら決めていきます。

費用がかかるシステムなどを導入する場合、複数のシステムや業者から、自社の状況と課題解決の両方が叶う最適なものを選ぶことが重要です。

ITツールの導入や業務効率化などに関しては、補助金や助成金の制度を活用できる場合があります。
ただし対象となるにはツールの導入より申請が先なため、導入前に制度の情報収集を行いましょう。

5)対応策を実行に移す

対応策が決まれば、なるべく早く実行に移します。とはいえ、一度に大幅な変更を行うと、社内全体の混乱を招き、対外的にも影響を及ぼす恐れがあります。

慣れるのに時間がかかるような変更は、段階的に進めるのも1つの方法です。複数の対応策を実行に移す場合には、順番にも注意が必要です。

改善策の具体的な方法については、次の章で見ていきましょう。

経理業務を効率化する8つの方法

経理業務の効率化には、次のような方法があります。

  • マニュアルの作成
  • 業務フローの見直し
  • Excelの活用
  • 会計ソフトの利用
  • ペーパーレス化
  • キャッシュレス化
  • 各種システムの導入
  • アウトソーシングの活用

それぞれ説明していきます。

マニュアルの作成

現時点で経理業務にかかるマニュアルがない場合は、マニュアルの作成で業務の効率化が図れます。マニュアルはあっても業務内容に合わせて更新されていない場合は、作り直しましょう。

属人化している業務も、誰もがわかる状態になれば、担当者の休暇などで滞るようなことがなくなります。

マニュアルを作る過程で、業務の洗い出しが必須となり、ムダや改善点が見えてくるメリットもあります。

業務フローの見直し

業務フローに問題が見つかれば、不要な作業や流れは廃止、不自然な流れは修正します。その際に、業務量のバランスも同時に見直すとよいでしょう。

経理部門内で明確な分業制になっているなら、部門内でジョブローテーション(担当業務替え)を行い、属人化やブラックボックス化を解消するのも1つの方法です。

Excelの活用

Excelの活用で経理業務を効率化

効率化にはエクセル(Microsoft Excel)の活用もおすすめです。低コストで使えるほか、日々の交通費精算書、請求書、見積書などの書類を幅広く作成できます。

インターネット上に公開されているさまざまな帳票のテンプレートを使えば、簡単に利用できます。関数やマクロなどを駆使したオリジナルのデータ管理・分析も可能になります。

会計ソフトの利用

経理業務を効率化するための方法、会計ソフトの利用

会計ソフトの導入でも、大幅な効率化が可能です。特にクラウド型なら、PCにインストールする必要がなく、ネット環境さえあればどこからでもアクセス可能、常に最新のソフトを使用できます。

多くの製品には銀行口座やクレジットカードの明細が自動的に反映されるようになっています。

記帳作業の大幅な時間短縮になるだけでなく、経理知識が豊富でない人にも使いやすい仕組みになっています。

ペーパーレス化

経理業務のペーパーレス化

経理は業務上、請求書や領収書など数多くの書類を取り扱います。かつてはすべてが紙でしたが、近年ではデータでの取引も増え、電子帳簿保存法によって経理業務のペーパーレス化も進んでいます。

経理業務をペーパーレスにすれば、手書きや手入力、発送、ファイリングなどの作業が減り、業務効率化ができます。

同時に、紙や印刷にかかる費用や保管スペースの削減、手入力による人的ミスの防止になるほか、リモートワークもしやすくなります。

キャッシュレス化

経理業務効率化の方法の1つ、キャッシュレス化

小口現金を廃止し、キャッシュレス化することも業務効率化につながります。

両替や現金の補充、現金出納帳への記入、金庫の管理といった煩わしい業務が不要になるほか、手元の現金と現金出納帳の残高が合わず、原因特定に時間をかけるようなムダもなくなります。紛失・盗難のリスクもありません。

小口現金を減らすだけでなく、ネットバンキングに切り替えれば、銀行振込にかかる時間を大幅に削れます。法人クレジットカードを導入して、社員に追加カードを発行し、社員が立て替えた経費の一括管理をするなどの方法もあります。

各種システムの導入

経理業務効率化の方法の1つ、システム導入で笑顔の女性

会計ソフト以外に、次のようなシステムの導入でも大幅な業務効率化ができます。

  • 経費精算システム
  • 請求書発行システム
  • 資産管理システム

経費精算システムでは、会計ソフトへの手入力、経費の集計・入力などの作業を自動化できるだけでなく、電子化によるペーパーレス化および、承認・申請といった業務を省力化できます。また、請求書発行システムを導入すれば、請求書の作成や印刷・発送、入金確認などの負担も軽減されます。

また資産管理システムの導入によって、所有するすべての固定資産が簡単に把握できるようになるほか、必要な投資判断やリース資産の管理、正確な減価償却なども自動化することができます。

アウトソーシングの活用

経理業務効率化の方法の1つ、アウトソーシングの活用

最近では、経理業務のアウトソーシング(経理代行)も多くの企業で活用されています。外部の専門業者に経理業務を代行してもらうことで、自社で行う業務を減らすのです。アウトソーシングする先は、大きく分けて次の3つです。

  • 税理士
  • クラウドサービス
  • 経理代行サービス

記帳代行・仕分けはもちろん、給与振込や請求書発行などの業務をピンポイントで代行してもらうことも可能です。貸借対照表や損益計算書の作成、年末調整の処理などもアウトソーシングすれば、大幅な効率化につながります。

さらに、アウトソーシングの活用には、特定の経理担当社員による属人化やブラックボックス化の防止、人件費や採用コストや人件費の削減などのメリットがあります。

経理業務の効率化は自社に合った方法で

経理の業務改善で笑顔になった女性社員たち

経理業務の効率化は、どの企業でも必須の課題です。まずは業務を棚卸しし、属人化やブラックボックス化を解消して業務を見える化、会計ソフトや各種システムの導入による省力化、アウトソーシングによる一部作業の切り離しなどで改善を図りましょう。

ただし、システムの導入やアウトソーシングにもコストはかかるため、自社に必要な機能や代行内容を選び、各種ある商品・サービスの中から選択する必要もあります。

特にアウトソーシングを検討する際は、信頼できて業務の質の高い業者を選ぶことが大切です。


経理代行ならBricks&UKアウトソーシング

Bricks&UKアウトソーシングは、税理士法人Bricks&UKを母体とする経理のアウトソーシング会社です。

人材不足に悩む中小企業の事業主様をサポートすべく、経理業務のすべてを委託できるサービスを開始したのが始まり。税理士法人が母体であることもあり、正確かつ質の高い経理代行サービスを提供しています。

現在使用中のソフト・ツールの変更なし、引継ぎなしでのお引き受けも可能です。1カ月からのお試しも可能なBricks&UKアウトソーシングに、ぜひ一度ご相談ください。

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