アウトソーシングと派遣はどう違う?メリットや注意点などを解説2024.09.10

アウトソーシングと派遣の違い

人材不足で新規採用も難しい今、業務量の増加や従業員の突然の退職などをきっかけに、外部業者の活用を考える企業が増えています。近年特に企業規模を問わず活用されているのが、業務を外部に委託する「アウトソーシング」です。

しかし、外部リソースを使うという面では、かねてより「人材派遣」が多く活用されています。それなのになぜ「アウトソーシング」が注目されているのでしょう?そもそも、人材派遣とアウトソーシングでは何がどう違うのでしょうか。

この記事では、アウトソーシングと人材派遣の特徴やサービス内容を比較します。それぞれのメリット・デメリットや向き・不向きを解説するので、選ぶ際の参考にしてください。

アウトソーシングと派遣、それぞれの定義

アウトソーシングと人材派遣のそれぞれについておさらいしておきましょう。

アウトソーシングとは

アウトソーシングとは
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「アウトソーシング(outsourcing)」とは、自社の業務の一部を切り出して外部に委託し、委託先の持つ専門的なスキルやノウハウを活用することです。

法による定義がないため解釈の違いはあるものの、多くは「外部委託」「業務委託」と同義で使われています。外部の業者と業務委託契約を結びます。

委託する業務によって、BPO(間接業務など業務プロセスの一部を一括委託)やITO(IT分野の委託)、AMO(アプリ運用・管理の委託)、KPO(データ分析など知的業務の委託)、SPO(営業部門の委託)といった種類も存在します。

人材派遣とは

受け入れ企業側にとっての人材派遣とは

受け入れる側の視点でいうと、「人材派遣」とは、自社に必要な経験や知識、スキルを持つ外部人材(派遣スタッフ・派遣社員)を社内に受け入れるものです。

一時的・臨時的な人材確保の手段というのが原則です。

本人と雇用契約を結ぶのではなく、派遣会社と契約を結びます。受け入れには「派遣法」を遵守しなくてはなりません。

派遣法では、特定の業種について人材派遣を禁止しています。弁護士・税理士など独占業務を持つ「士業」や、建設や港湾、警備、病院での医療関連の業務での派遣は認められません(派遣法第4条/紹介予定派遣や産休等の代替を除く)。

アウトソーシングと人材派遣の違い

アウトソーシングと人材派遣との違い

外部に業務を委託するという点では、アウトソーシングも派遣も同じです。アウトソーシングは業務を社外に出すのに対し、派遣は社内に人材を受け入れますが、社員とは扱いが異なります。

アウトソーシングと派遣の大きな違いは、次の4つです。

  • 契約と責任を負う対象の違い
  • 指揮命令系統の違い
  • 対価の対象の違い
  • 業務にあたる期間の違い

それぞれ見ていきましょう。

契約と責任対象の違い

アウトソーシングと人材派遣の違い

アウトソーシングと人材派遣では、契約と責任を負う対象に違いがあります。

アウトソーシングの場合

アウトソーシングでは、委託先企業と準委任あるいは委任契約、または請負契約を締結します。

準委任・委任契約では、委任先の業者が「作業」について責任を持つことが特徴です。運用・保守やコンサルタント業務など、成果物の明示が難しい業務に用いられます。

一方、請負契約では、委託先は成果物の「完成」に対して責任を負います。経理やシステム開発、クリエイティブ業務など、成果物が明確な業務で多く用いられる方法です。

人材派遣の場合

人材派遣では、委託先である派遣会社と委託元である派遣先企業の間で派遣労働に関する基本契約を結び、個々の派遣社員について「労働者派遣契約(個別契約)」を締結します。

派遣先で業務にあたるスタッフは、派遣会社と雇用契約を結んでいる、つまり派遣会社に所属する社員です。

指揮命令系統の違い

アウトソーシングと人材派遣の違い

アウトソーシングでは、委託元から外部の委託先に業務を指示します。実際に業務を遂行するスタッフに指示を出すのは、委託先企業の管理責任者です。委託元から委託先のスタッフに直接指示を出すことはできません。

人材派遣の場合は、委託先である派遣スタッフに対して委託元の管理責任者が業務を直接指示できます。

対価の対象の違い

アウトソーシングでは、「業務の遂行」や「成果物」の対価として報酬が発生します。

一方、人材派遣では、派遣労働者の「労働」もっと言えば「労働時間」に対して報酬が発生します。

アウトソーシングの場合、報酬が発生する条件を明確に定めておかなければ、トラブルが起こる恐れがあります。人材派遣では、当人の業務効率いかんで費用対効果が大きく異なるでしょう。

業務を行う期間の違い

アウトソーシングと人材派遣の違い

アウトソーシングには、業務の委託期間について法的な決まりはありません。委託先と委託元が話し合って、短期間でも長期間でも自由に決められます。

しかし人材派遣は、もともと臨時で一時的な人材の確保のために導入された形態です。そのため、派遣法に基づいて派遣可能期間が決まっています。

無期派遣等でなければ、同一人物による同一の職場・同一の業務は3年が限度。3年を超える場合、当人を直接雇用にするか、別の派遣スタッフと契約する必要があります。

派遣と比較したアウトソーシングのメリット

派遣と比較したアウトソーシングのメリット

では、実際に利用する場合にアウトソーシングと人材派遣ではどのような違いがあるのでしょうか。アウトソーシングに依頼するメリットを、人材派遣との比較という視点で見ていきましょう。

  • 業務の全部あるいは一部をまるごと任せられる
  • 人材管理の必要がない
  • 委託した業務の管理も不要
  • 社内の人間関係に影響しない
  • 業務レベルの質が保てる

これらの逆が、すなわち人材派遣のデメリットと言えます。あわせて説明します。

業務の全部あるいは一部をまるごと任せられる

アウトソーシングへの依頼は、業務単位で行います。たとえば経理部門をまるごと委託することも、給与計算業務だけをすべて委託することも可能です。

人材派遣は、一時的・臨時的な利用という基本の性質上いわゆる「3年ルール」もあり、業務をまるごと任せるには不向きです。派遣スタッフには契約時に決めた業務以外はさせられず、残業になればコストがかさみます。

セキュリティやクオリティの面でもリスクを伴うので、派遣スタッフ個人にすべてを任せるのは現実的ではありません。

人材管理の必要がない

アウトソーシングと人材派遣の違い

アウトソーシングの場合、業務に従事するスタッフの管理はスタッフの雇用主であるアウトソーシング業者が行います。委託した側に管理の必要はありません。

人材派遣の場合、派遣スタッフは自社内で勤務し、業務に関する指示は派遣先企業、つまり自社が行います。そのため、勤怠管理もしなくてはなりません。

委託した業務の管理も不要

アウトソーシングを利用すれば、託した業務の管理はアウトソーシング業者が行ってくれます。

人材派遣の場合は、前述のとおり指揮命令権が派遣先にあるため、人材管理のほか業務の管理も行う必要があります。

社内の人間関係に影響しない

派遣と比べたアウトソーシングのメリット

アウトソーシングでは、委託した業務は自社と異なる場所で行われます。そのため、社内の人間関係には一切影響しません。

人材派遣の場合、職場に社外の人間が入ることで、所属や立場、処遇の違いによる人間関係のいざこざが生じやすくなります。

業務に悪影響を及ぼす恐れもあり、管理する側も対応に苦慮するケースが多いです。

業務レベルの質が保てる

派遣と比べたアウトソーシングのメリット

アウトソーシングでは、業務に関するやり取りは対個人でなく対企業で行います。そのため、委託先スタッフ個人の能力に左右されることはありません(※)。

しかし人材派遣では、派遣先はそもそもスタッフ個人を指名選択できません。

経験やスキルが一定しなかったり、3年ごとの交代で他の社員に負担がかかったりしがちです。

※ただし、委託するアウトソーシング業者自体の質の違いは大きく影響します。

長期間の委託が可能

派遣と比べたアウトソーシングのメリット

アウトソーシングの利用期間に上限はありません。自社に必要な期間で契約可能です。

一方、人材派遣では、無期雇用などの例外を除き、同一のスタッフが同一場所の同一業務に従事できる期間は3年までと派遣法に定められています。

期間を過ぎれば別のスタッフが派遣されますが、人員が交代すれば、都度の手続きや業務指導などの手間も必要です。場合によっては代わる人が見つからず欠員となる可能性もあります。

派遣と比較したアウトソーシングのデメリット

派遣と比べたアウトソーシングのデメリット

アウトソーシングの活用は、場合によっては人材派遣と比べデメリットとなることがあります。あらかじめデメリットも把握しておくことで、失敗や後悔を防ぎましょう。

  • 業務の進捗状況をリアルタイムに把握できない
  • 知識やノウハウが社内に蓄積できない
  • セキュリティ面のリスクが伴う
  • 内製化する場合に手間やコストがかかる

それぞれ見ていきましょう。

業務をリアルタイムに把握できない

アウトソーシングでは業務を社外で行うため、現況を知りたくてもすぐ見ることができません。

電話での確認は可能でも、問い合わせから回答までにある程度の時間がかかります。緊急の問い合わせなどの際は不便に感じるかもしれません。

知識やノウハウが社内に蓄積できない

業務をまるごとアウトソーシングに委託した場合、本来は自社内で蓄積されるはずの業務知識やノウハウを得ることができなくなります。

ただし、一部のみアウトソーシングする場合など、丸投げ状態でなければ自社でもリソースの積み上げが可能です。業者によっては、マニュアルの共有などが可能な場合もあります。

セキュリティ面のリスクが伴う

業務を外部に委託するには、情報を共有しなくてはなりません。そのため、サイバー攻撃やミスによる個人情報などの漏えいリスクがあります。

ただ、この点では派遣社員の受け入れでもリスクがないわけではありません。

内製化する場合に手間やコストがかかる

何らかの理由でアウトソーシングを止め内製化することになった場合、自社に知識やノウハウを取り戻すのは容易ではありません。人材の確保、内製化に向けた業務フローの見直しなども必要です。

採用にもコストがかかりますし、人が増えればPCやデスクなど備品の確保、教育コストも必要です。

アウトソーシング・派遣それぞれに向く業務とは

アウトソーシングと人材派遣は、それぞれどんな業種・業務での活用が向いているのかを見ていきましょう。

アウトソーシング向きの業務

アウトソーシング向きの業務

アウトソーシングに向いているのは、次のような業務です。

  • コア業務でない定型業務
  • 特定の知識やスキルが必要な業務
  • 社内にリソースがなく、採用も困難な業務
  • 長期的かつ安定して委託したい業務
  • 属人化を防ぎたい業務
  • 誰にでもできる作業的な業務

自社のコア業務でない、経理や人事、総務といったバックオフィスの仕事や、コールセンターなどの仕事はマニュアル化しやすく、アウトソーシング向きです。社内では属人化しやすい仕事も、外部に出すことで公正かつ適正な処理が可能になります。

知識や経験のある人材が社内にいないなら、社内で1から教育するより、専門スキルを持つ業者に頼んだ方が質の高い仕事をしてくれるでしょう。時間的にも費用面でもコストの削減になります。

逆に、特別な経験やスキルが必要のない業務も、アウトソーシング向きと言えます。社内の貴重な人材リソースを本業のコア業務に専念させれば、質の高い業務が可能になります。

人材派遣向きの業務

人材派遣向きの業務

人材派遣に向いているのは、次のような業種・業務です。

  • 産休や休職の代替など、臨時的、一時的な業務
  • 店舗や工場、研究所など、特定の場所での業務
  • 担当者が短期で変わることに支障がない業務

人材派遣は、前述のとおりもともと臨時的、一時的に必要となった人材の確保手段です。そのため、自社の社員が産休や育休を取得したり、体調不良や家族の介護により休職を余儀なくされたりなど、一時的に仕事に就けなくなった場合の代替に最適です。

また、自社の敷地内や店舗などの拠点で一緒に働く必要がある業務はアウトソーシングできないため、直接雇用を除けば派遣向きです。

派遣には3年ルールがあるため、長くても3年での人員交代は避けられません。そのため、短期で担当者が変更になっても支障がない業務が向いています。


総じてみると、同じ「外部委託」でも人材派遣よりアウトソーシングの方が、活用に向いているシーンが多様だと言えるでしょう。

アウトソーシングの失敗を防ぐには

アウトソーシングの失敗を防ぐ方法

アウトソーシングは便利な手法ですが、単に業務を切り離すのではなく、自社の企業価値を上げるために利用したいものですよね。依頼前にしっかりとした事前準備をするかどうかで、活用効果は大きく違ってきます。

少なくとも次の点を押さえてアウトソーシングに依頼することをおすすめします。

アウトソーシングの目的を明確にする

アウトソーシングによって自社のどんな課題を解決したいのかを明確にしましょう。それには、現状の課題の洗い出しも必要です。

たとえば多くの企業が、次のような目的でアウトソーシングを活用しています。

  • 業務の効率化
  • 人手不足の解消
  • 専門人材による業務の質の向上
  • 人件費などコストの削減
  • 事業拡大や事業展開に伴うコア業務への集中化
  • 組織のスリム化

自社の課題を洗い出し、それを解消する手段としてアウトソーシングを選ぶことが大切です。

社内の業務フローを見直す

業務の一部をアウトソーシングする場合は、業務フローの見直しが必要です。見直すことで、どの業務、作業をアウトソーシングすれば課題解決ができるかが明確になります。

フローを見直すには、業務の洗い出し、棚卸し作業も必須です。それにより、属人化やブラックボックス化している業務も見えてきます。

これをせずアウトソーシングすると、業者との連携がうまくいかず、逆に業務が滞る、非効率になる可能性が高いです。

複数のアウトソーシング業者を比較して選ぶ

業者によって、得意分野や業務遂行能力などは異なります。事前に数社の評判や知識・スキルなどを確認して、委託先を厳選しましょう。

知り合いの事業主ですでにアウトソーシングを利用している人がいれば、利便性やおすすめの業者などを聞いてみるのも1つの方法です。

ただ、重視する点の違いや相性などもあるため、他社に合う業者が自社にも合うとは限りません。課題が解決できるかどうか、自社に合うかどうかを重視しましょう。

料金設定も数社を比較して選ぶ

外部業者への委託費用は、業者によって大きく異なります。単に料金だけを比較せず、料金に対して業務の範囲はどこまでか、バランスは適正かも確認しておきましょう。

「料金」と「業務内容・実績」のバランスがとれた業者を選ぶのが一番ですが、契約前に見極めるのは難しいものです。無料トライアルの設定があれば試してみるのもよいでしょう。

委託先のセキュリティ対策を確認する

委託する前に、どのようなセキュリティ対策を取っているのか確認しましょう。情報漏洩やサイバー攻撃などへのリスク対策が疎かでは、自社が大きな損害を被るおそれがあります。

委託先がデータを安全に管理しているかどうかは、委託元に監督する義務があります(個人情報保護法第25条)。

アウトソーシングと派遣の違いを理解して上手く活用しよう

アウトソーシングと派遣は、契約や対価、業務を委託できる期間などが異なります。解決すべき課題と、アウトソーシングまたは人材派遣の特質を照らし合わせ、適切な手段を選びましょう。

コア業務に集中し、競争力を上げるためには、経理や人事、総務などのバックオフィス業務をアウトソーシングするのがおすすめです。適正な業者を選べば、コスト削減も叶います。

経理のアウトソーシングを考えるなら、当サイトを運営する「Bricks&UK」にぜひお任せください。経営コンサルティングも得意とする税理士法人が母体であり、さまざまなクライアントからご信頼をいただいています。

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