売掛金管理ミスで資金がショート?リスク回避の経理アウトソーシング2025.12.11

売掛金の請求もれや入金の遅延は、資金繰りを一気に悪化させ、最悪の場合は資金のショートを招きます。
資金がショートすれば、仕入れ代金や家賃、給与なども払えなくなります。最悪の場合、売上はあるのに現金がない、「黒字倒産」になりかねません。
今回は、この売掛金の管理について、やるべきこと、ミスが起こる原因などを見ていきましょう。リスクを回避する方法として、アウトソーシングの活用についても解説します。
目次
売掛金の管理でやることは?基本の業務と流れ

商品を販売したり、サービスを提供したりした際、代金を後から受け取る権利(債権)が「売掛金」です。売掛金は入金されなければ意味がなくなるので、現金として受け取るまで管理しなくてはなりません。
売掛金管理の目的

売掛金を管理する目的は、資金繰りを安定させること、キャッシュフローを可視化すること、そして後の章で紹介する、さまざまなリスクを回避することです。
正確な売掛金残高の把握や入金の管理は、内部統制の強化にもつながります。資産状況を正しく把握し、将来的な資金繰りや投資について正確な判断を下すのにも役立ちます。
売掛金管理の流れ

売掛金管理とは、商品の販売から代金の回収に至るまでの一連のプロセスをチェックすることです。大きく3つのステップに分けられます。
- 取引の発生と請求・記帳業務
- 入金確認(消込作業)
- 滞留・督促管理
これらの業務を正確かつスピーディーに行うことが、資金繰りを安定させる土台となります。それぞれもう少し詳しく見ていきましょう。
請求・記帳業務
商品の納品、サービス提供などのタイミングで売上を計上し、請求書を発行して取引先に送付します。また、売掛金の残高を帳簿に記録(記帳)します。
請求金額と計上された残高が一致しているか、作業の都度、さらに定期的にも確認し、ズレを防ぐ必要があります。
入金確認(消込作業)
支払期日を過ぎても入金がない場合、その売掛金は滞留債権(回収見込みがまだある債権)となります。
取引先へ速やかに連絡し、入金を促す必要があります。滞留期間が長くなるほど回収が難しくなるため、定期的な残高確認と、督促などの迅速なアクションが重要です。
ずさんな売上金管理やミスが招く大きなリスク

売掛金管理には、確認作業と期日管理が必須です。とはいえ、人手不足や業務フローの不備などで管理がずさんになるケースも少なくありません。
しかし、これを「仕方ない」と放置するのはとても危険。会社の信用や存続にかかわります。中小企業で実際に行われている売掛金管理の方法と、それによる具体的なリスクについても見ておきましょう。
現状の売掛金管理と起こりがちなミス

中小企業の多くは、売掛金管理をまだアナログな手法に頼っているのが現状です。
売掛金台帳をExcelやスプレッドシートで作り、手入力しているケースも多いでしょう。もしくは、昔からのやり方で、紙の台帳に手書き、という会社もあるのではないでしょうか。
会計ソフトを導入しているとしても、請求書の発行や入金データの突き合わせ・消込作業は手作業で行っている、という企業はまだまだ多く見られます。
これの何が問題かと言えば、次のようなミスが発生しやすい状況だということです。
| よくあるミス | 発生状況 |
| 売掛金台帳への記載もれ | 売掛金台帳への記載を忘れ、請求書が未発行のまま放置、未回収金を見逃してしまう |
| 消込作業ミス | 入金済のチェック欄を間違え、入金済みの取引先に督促を入れてしまう |
| 請求金額の転記ミス | 請求書に記載する金額を間違えてしまい、入金時に金額が合わない |
| 支払期日の記入ミス | 入金サイクルの違いを見落とし、請求書に記載する期日を間違え、入金が遅れる |
| 振込手数料の計算ミス | 取引先の振込手数料負担ルールを把握しておらず、差額が残り、消込できない |
こういったミスは、大きなリスクにつながります。
アナログな売掛金管理の深刻なリスク

上記のような状態は、まさに担当者のスキルや経験に依存している状態です。手作業・手入力・目視によるチェックでは、手間も時間もかかり、情報共有も難しく、ミスや属人化を招きます。
特に深刻なのは次の3つのリスクです。
- 未回収による資金繰りの悪化
- 取引先とのトラブルや信用の低下
- 担当者のストレスと残業の増加
それぞれ説明します。
未回収による資金繰りの悪化
売掛金は収益ですが、入金されなければ仕入れ代金や給与の支払いができません。不払いとなれば、取引先や社員からの信用も大きく損ねます。
さらに深刻なのは、黒字倒産のリスクです。帳簿の上では黒字なのに、売掛金の未回収で現金が手元にない状態となれば、事実上の倒産という事態になりかねません。
資金繰りが悪化すれば銀行などからの融資を検討することになりますが、金利負担や財務状況のさらなる悪化、経営の不安定さにつながります。もちろん、融資が受けられるとも限りません。
取引先とのトラブルや信用の低下
売掛金管理を怠ったり、入金の見逃しがあったりすると、取引先とのトラブルにも発展します。ビジネスにおいて金銭面でのトラブルは致命的です。
よくあるのは、すでに入金があった売掛金に対し、消込せず再度請求してしまう「二重請求」。もしくは、請求書を送付し忘れる、未回収があることを見逃してしまうなどの「請求もれ」。請求金額や振込先を間違えてしまうケースもよくあります。
どれも、取引先に手間をかけさせるだけでなく、会社としての管理体制を疑われる事態です。一度不信感を持たれると、簡単には覆せません。ミスが連続で起きれば、信頼回復も難しいでしょう。
担当者のストレスと残業の増加
売掛金管理が業務フローの中にしっかり組み込まれていなかったり、アナログ作業になっていたりすると、ただでさえ残業となる繁忙期には深夜残業になりがちです。連日の長時間労働は、心身ともに大きな負担となり、ミスや非効率につながります。
精神的にも余裕がない状態で、手書きや手入力に時間がかかり、印刷では紙切れ、紙詰まりなどに時間を取られる…。こういったことも、ささいなようで大きなストレスです。
「ミスをしないように」というプレッシャーも大きい一方、作業をすっかり忘れて抜けてしまう可能性も。疲弊やストレスが新たなミスを呼び、悪循環になりかねません。
リスク回避のための売掛金管理体制

売掛金管理のミスや不手際が、資金繰りの悪化や信用失墜につながることは明白。しかし、それは担当者個人のスキルや努力の問題でなく、組織自体に問題があるケースがほとんどです。
ではどこに問題があるのか、どうすればリスクを回避できるのか。ポイントは次の3つです。
- ITの活用
- マニュアルの整備
- 他部門との連携強化
それぞれ解説します。
非効率を解消するITシステムとソフトの活用

金額や振込先のミス、請求もれなどは、多くが手書きや表計算ソフトによるアナログ作業によるものです。忙しい中で単純作業に手間や時間がかかる非効率さが、ミスを誘発します。
そのため、会計ソフトや債権管理システムといったITツールの活用、連携がリスク防止につながります。具体的には、ITで次のようなことが効率化できます。
| 改善項目 | 具体例 |
|---|---|
| 入金確認の自動化 | 銀行口座との連携で入金データの取り込みや消込作業を自動化 |
| 残高のリアルタイム把握 | 最新かつ正確な売掛金残高を把握、経営判断も迅速かつ正確化 |
| 督促業務の効率化 | 期日を過ぎた滞留債権を自動で抽出、最適なタイミングで迅速な督促が可能に |
担当者の負担を軽減し、ミスなく正確な作業を可能にし、経営の安定も図れる。ITによる効率化は、最優先に進めたい対策です。
属人化を防ぐマニュアル・チェックリストの作成

経理部門に多い「業務の属人化」も、売掛金管理にミスが起きる原因の1つです。属人化は人手不足などによって生まれ、担当者の退職などの入れ替わり時に発覚し、問題となりがちです。
当人にしかわからないので、他の担当者がチェックするのも、チェックして間違いを見つけるのも困難です。不在時に業務が滞る、慣れない別の担当者が処理することでミスが起こるなどの弊害も引き起こします。
これに対処するには、業務を標準化する、つまり誰でも同じようにできるようにすることが必要です。具体的な方法として、次の2つの整備が挙げられます。
| 整備するもの | 目的・期待する効果 |
|---|---|
| 社内マニュアル | ・知識や手順を会社の財産として残し、共有する ・担当者の不在・異動などの際にもスムーズに対応できる ・新人の早期戦力化に役立つ |
| チェックリスト | ・請求書の金額や支払期日、消込漏れなどのミスを防ぐ ・ダブルチェックでミスの見逃しを防ぐ ・ヒューマンエラーが発生しやすいポイントを押さえ、水際で防ぐ |
作成したら、その内容や利用方法についてオリエンテーションなどを行い、形骸化しないことも大切です。また、法改正などで業務に変更があった場合は、その都度アップデートしていかねばなりません。
部門間のズレをなくす情報共有の仕組み

売掛金の管理には、営業部門と経理との連携も必須です。営業サイドで請求内容の変更や値引きなどをしたのに経理に伝えず、取引先から「間違っているのでは」と問い合わせがくるようなケースも少なくありません。
この問題を解決するには、個人の裁量に任せるのではなく、連携をルール化・仕組み化する必要があります。
| 仕組み・ルール | 目的・期待する効果 |
|---|---|
| 売上・債権情報の共有ルール | ・値引や期日変更など、契約に関する最新情報を営業から経理に速やかに連絡するフローを確立 |
| 与信管理の事前共有 | ・新規取引の開始前に、経理が取引限度額や支払い条件を判断、貸し倒れリスクの高い取引を未然に防ぐ |
| ITツールでの一元管理 | ・CRM/SFA(顧客管理システム)と会計ソフトを連携させ、情報を一元管理する ・部門間でリアルタイムに情報が共有される環境を構築する |
特にトラブルになるのは「忙しくて伝えるのを忘れた」というケースや、「言った」「聞いてない」などですれ違いが起こるケースです。ルール化してツールで管理することで、売掛金回収のプロセスがレベルアップします。
外部専門家へのアウトソーシングという選択肢
社内でIT化を進め、マニュアルを整備し、部門間の連携をルール化するというのは、理想的ではありますが、簡単ではありません。1から体制を整える、もしくは今の体制を大幅に変更するには相当な時間と手間がかかり、業務設計やIT系の専門知識も必須です。
そこで検討したいのが、売掛金の管理を外部の専門家に任せるアウトソーシングです。
アウトソーシングを活用すれば、負担減、リスク回避など大きなメリットがあります。詳しいメリットは次の章で解説します。
売掛金管理をアウトソーシングするメリット

売掛金管理業務をアウトソーシングすることは、単なる一部業務の切り離しではなく、経営改善にもつながる戦略的な選択肢です。
アウトソーシングによるメリットを具体的に説明します。
未回収・貸し倒れリスクを回避

最大のメリットは、専門業者ならではのノウハウやプロセスで、売掛金の未回収や貸し倒れといった資金面のリスクを軽減できることです。
| 活用メリット | 目的・効果 |
|---|---|
| 与信管理の調査・分析 | 新規取引前に信用調査を行い、貸し倒れリスクの判断材料を提供 |
| 正確な債権管理 | 入金確認や消込のミスを削減 請求漏れや二重請求といったエラーをなくす |
| スピーディーで確実な督促 | 期日超過を自動で発見 法務知識に基づいて適切に督促し、回収率を上げる |
経営悪化に直結するリスクを、アウトソーシング業者によって確実に減らせます。
手間や人件費などコストの削減

アウトソーシング会社への委託には費用がかかりますが、実質的にはコストの削減になります。具体的に見てみましょう。
| 削減できるコスト | アウトソーシングの効果 |
|---|---|
| 残業代・人件費、増員コスト | 経理担当者の手間が省けるため、残業代は大幅に削減。 増員にかかる採用コスト、人件費も不要。 |
| システムの導入・運用費 | 高額な債権管理システムなどの導入・維持費用、IT担当者の人件費が不要。 ツールの選択ミスなどによるムダなコストも発生しない。 |
| 備品・消耗品費など | 請求書の印刷・封入・郵送などに伴うコスト、発送の手間などが省ける。 残業時の光熱費なども削減可能。 |
固定費として発生する人件費やシステム維持費が不要になり、変動費としてムダを減らせます。コア業務でない作業にあたっていた従業員の能力も、有効活用できます。
人材の有効活用や退職リスクの回避
売掛金管理をアウトソーシングすることで、担当者の業務負担やストレスが緩和されることは言うまでもありません。
それと同時に、会社にも大きなメリットが生じます。
- 残業代・夜間光熱費・紙代などのコスト削減
- コア業務に従事させるなど人材の有効活用
- 業務量削減による従業員の満足度向上
- 疲弊・ストレスによる退職リスクの回避
売り手市場が続く転職市場で、経理人材はどの業界でもニーズがあります。一度辞められたら優秀な人材を見つけるのは困難なので、働きやすい環境を整え、退職リスクを減らすことも重要な経営戦略の1つです。
売掛金管理を手放してリスクも手放そう

売掛金の管理は、担当者にとって大きな負担であるだけでなく、ミスがあれば経営にも重大なダメージをもたらします。
請求間違いや督促漏れなどの事態を放っておくことは、大きなリスク。ITによるシステム化、業務プロセスやルールの改善によって、効率化することが必要です。
しかし、自社での業務フロー見直しや体制の構築には手間も時間もかかるでしょう。おすすめは、売掛金管理を外部に委託することです。売掛金管理だけでも手放せれば、担当者の負担も会社のリスクも減らすことができます。
当社Bricks&UKアウトソーシングでは、業務プロセスの改善から専門家が強力サポートいたします。ぜひお気軽にご相談ください。

