安易な人件費削減は高リスク?経理のムダを減らして最適化する方法2025.11.20

利益を直接生み出さないバックオフィスの人件費は、経営者にとってムダを感じがちなコストの1つです。「経理なんて1人いれば十分だろう」と人を減らしたりするケースもよく見られます。
しかし、給与カットや人員の削減といった、いわば目先のコストカットには、大きなリスクが潜んでいます。支出は確実に減らせても、従業員のモチベーション低下などにつながるからです。
今回は、安易な人件費削減が招くリスクを解説。さらに、業務効率化につながるより前向きなコスト削減の方法を紹介します。
【この記事の監修者】 株式会社Bricks&UK Outsourcing業務コンサルタント
経理の業務設計・運用に優れたコンサルタントが、効率的で正確な業務請負いをお約束します。
目次
安易な人件費削減が招く大きなリスク

コストカットの手段として、最も手っ取り早く支出を抑えられるのは、給与カットや人員整理でしょう。でも、そこには大きなリスクも潜むので、注意が必要です。
特に侮れないのが次のようなリスクです。
- 従業員のモチベーション低下
- 生産性の低下
- 優秀な人材の離職
- 経理ミスの増加
- 重要業務の質の低下
順に説明します。
従業員のモチベーション低下リスク

経理業務には、正確性やスケジュールの厳守が必要です。経理担当者は、地道ながらもそれぞれ責任感を持って日々の業務に当たっています。
そこに、給与カットや福利厚生の見直し、人員削減の意向などを伝えたら?
「この会社は、自分を正当に評価してくれない」、あるいは、経理業務や自分自身が「軽視されている」と感じます。そして、仕事へのやる気や、上司・会社への信頼を失ってしまいます。
生産性の低下リスク

人件費削減で給与をカットされ、従業員がやる気や会社への信頼を失うとどうなるでしょうか。
まず、業務を「正確に行う」「スピード感を持って行う」など、普段の心がけがおろそかになります。処理スピードが遅くなれば他部署にも影響が出ますし、減った給与を残業代で補おうとする人が出てきても不思議ではありません。
日々の業務の中で問題点に気づいたとしても、「会社をより良くしたい」という意識がなければ、改善を提案する気も起こらないでしょう。
優秀な人材の離職リスク

人件費の削減は、会社にとって必要な「優秀な人材」を退職で失うリスクも伴います。
優秀な人材ほど、部署や会社全体を俯瞰して見ています。社員を大事にしない会社に対しての不信感は、自身だけでなく会社の将来性にも不安を見出し、転職が得策だという考えに至ります。
業務のノウハウや効率の良い処理方法などを知る社員が離職すれば、残された社員の負担は激増します。十分な引き継ぎもなければ、経理が滞る可能性も高いですし、新たな人材の採用も簡単ではありません。
経理ミスの増加リスク

人件費の削減による給与カットやそれによるモチベーションの低下、人員削減や自主退職による人材不足は、経理のミスにもつながります。
集中力が低下し、やる気もない状態では、請求書の入力間違いや転記もれといったミスを引き起こします。
小さなミスでも、取引先などへの支払いもれ・遅れにつながれば、担当者個人ではなく会社全体の信用問題です。
税務申告にミスや漏れがあれば、追徴課税などのペナルティを科せられてしまいます。
経営につながる重要業務の質の低下

最も深刻なダメージは、経営につながる重要な業務の質が下がることです。
人手不足やモチベーションの低下がミスにつながるのは、前述のとおり。ミスをカバーする「目の前の緊急事態」に時間を取られてしまえば、重要な業務が後回しになる、もしくは、締め切りに間に合わせるだけのおざなりな作業になりがちです。
コンプライアンスより利便性やスピードが重視されたり、データの精度が低くなったりすれば、経営に大きなリスクとなるのは明白でしょう。
人件費削減の王道は「業務効率化」

前の章で明らかなように、人件費を給与カットや人員削減といった方法で削減することは、会社にとっての大きなリスクを伴います。しかも、一時的な解決策でしかない、という欠点も。
根本的な解決策は、やはり「業務の効率化」です。人件費を無理に削るのではなく、作業時間や工数を減らす間接的なアプローチで、人件費は削減できます。生産性を高めて「人件費率」を健全に下げる。これが、会社を成長させる賢明な方法です。
具体的には、経理の業務プロセスの改善、ITツールの導入などによる、持続的なコストの削減。即効性は薄くても、続ければ生産性の向上など、より大きなメリットが期待できます。
自社経理のムダはどこ?3つのポイント

経理の業務効率化と言われても、何から手を付ければいいのか迷いますよね。まず確認したいのは、ムダが多く隠れている次のような作業です。
- 定型業務、慣習となっているルーティン作業
- 属人化した作業
- ツールの使い方(機能を有効活用できているか)
それぞれ見ていきましょう。
定型業務、慣習となっているルーティン作業

仕訳や請求書のデータ入力、経費精算の確認など、経理の日常業務の多くは定型的かつ繰り返しの多いルーティンワークです。
こういった作業は、量が多いほど作業に時間がかかります。手作業であればなおさらで、月末月初や決算期には長時間の残業や休日出勤の原因となります。
しかし、こうした作業は今や「人がやらなくていい作業」の1つでもあります。人件費の無駄をなくすには、どの作業にどれだけ時間をかけているかを洗い出しましょう。
属人化した作業

属人化とは、業務の進め方や手順を知っているのが特定の担当者だけである状態のこと。属人化すると、当人不在時には業務がストップします。
休職や急な退職となっても引き継ぎの時間が取れず、苦慮するケースも多く見られます。
苦労して新たな人を採用しても、不安や不満で 早期退職…という繰り返しになりかねません。属人化は不正の温床にもなりやすいので、すぐに対処するのが得策です。
ツールの無効活用
経理を効率化する目的で、さまざまなツールが販売されています。ですが、それを有効活用できていない企業も少なくありません。
これには、業者にすすめられるまま、自社に合わないツールを導入したケースもあれば、便利な機能があるのに使いこなせず、手作業で二度手間になっているようなケースもあります。
何にどんなツールを利用しているか、どの作業がネックで時間がかかるのか、などを確認して、必要なツールを導入する、今ある機能を使えるようにするなどの対処が必要です。
戦略的な人件費削減には経理アウトソーシング

直接的な人件費削減のリスクを回避し、業務効率化を可能にする方法としておすすめなのが、経理のアウトソーシングです。第三者に委託することで、適切な方法かつスピーディーな業務効率化が叶います。
経理には定型作業も多いため、マニュアル化してアウトソーシングするのに向いています。次のようなメリットも見逃せません。
- 人を1人雇うより低コストで済む可能性が高い
- 採用や教育の手間もコストもいらない
- 繁忙期だけなど、便利な使い方ができる
- 「固定費」である人件費を「変動費」にできる
- 経理の業務品質が向上する
- 法改正にもスピーディーに正しく対応できる
人を雇うより低コストの「可能性が高い」と書いたのは、委託するアウトソーシング業者や委託方法などによっては、最適化できず無駄なコストが発生するケースもあるからです。
そのため、アウトソーシング業者も慎重に選ぶことが重要です。
人件費を「コスト」から「投資」に変えよう

安易な人件費の削減には、大きなリスクが伴います。健全に人件費を最適化するには、工数のムダをなくし、従業員が本来の力を存分に発揮できる環境にすることです。
そこで考えたいのが、経理アウトソーシングの活用です。定型業務を外部のプロに任せれば、採用や教育の手間・コストをなくせるだけでなく、時間をよりコアな業務に有効活用できるようになります。
コストではなく投資と考え、経理をアウトソーシングしてみてはいかがでしょうか。
当社Bricks&UKアウトソーシングでも、業務のマニュアル化やフロー改善からサポートしています。ぜひお気軽にお問い合わせください。

