手書きの帳簿にはデメリットが多い!帳簿付けが難しい場合の対策とは2025.02.25

帳簿付けは今やパソコンで行うのが主流ですが、まだ手書きの帳簿を使っているケースも少なくないようです。これから事業を始めるにも、「まずは手書きでいいか」と考える人がいるかもしれません。
しかし、帳簿の手書きには、メリットよりデメリットの方が多いので注意が必要です。手書きを選ぶ理由が何であれ、パソコンを使った方が将来的にも便利です。
今回は、手書きで帳簿を付けることのメリット・デメリットを解説します。帳簿付けの手間やストレスを解消する方法も紹介するので、参考にしてください。
手書きで帳簿を付けているお客様は、今でもまれにいらっしゃいます。
ずっと手書きでやってきた方にとって、これまでのやり方を変えるのには不安や抵抗があるかもしれません。
ですが、たとえば手書きだと保管場所が必要ですし、転記ミスにも気づきにくく、後からではもうわからなくなってしまいます。
そもそも手で書くのは面倒ですし、時間がかかるだけで、いいことはありません。逆に手書きをやめて困ることはないので、私からもぜひ「やめていただいて大丈夫ですよ」とお伝えしたいですね。
「帳簿」とは

帳簿とは、事業によって生じる日々のお金のやり取りを記録するものです。正確には「会計帳簿」と言い、決算書を作成するのに使います。取引状況の把握や、会社の財政・経営状況の把握に欠かせない資料です。
法人と、確定申告をする個人事業主にとって、帳簿付けは義務となっています(商法第19条、会社法第432条)。帳簿の作成だけでなく、保存も必須です。
帳簿を付けずにいた場合や、帳簿に虚偽の記載をした場合、100万円以下の過料(行政罰)に処せられる可能性があります。
記帳の方法

帳簿を付けることを、「記帳」といいます。記帳には、2種類の方法があります。1つは「単式簿記(簡易簿記)」、もう1つは「複式簿記」と呼ばれるものです。
白色申告は単式簿記(簡易簿記)
単式簿記は、1つの取引について、単純にお金の増減を記録するものです。家計簿やおこづかい帳などは、単式簿記の形式です。
記帳は簡単ですが、「収支」しかわからないのが難点です。たとえば、単式簿記では借金も単にプラスのお金になります。そのため、手元資金や財産の正確な把握ができません。
65万円控除の青色申告は複式簿記
複式簿記は、すべての取引を「借方(かりかた)」と「貸方(かしかた)」で「仕訳」して記録するものです。
お金の増減について、原因と結果をセットにして記帳するため、お金の流れがより詳しく正確に記録され、財産状況や経営状況の把握に役立ちます。
青色申告で65万円の控除を受けるには、複式簿記で帳簿を付ける必要があります。
帳簿の種類

帳簿にはいくつもの種類があり、大きく主要簿と補助簿に分けられます。
- 主要簿…複式簿記で作成が必要なもの
- 補助簿…単式簿記で必要となるもの。主要簿を補うために作成
それぞれ説明します。
主要簿
主要簿とは、次の2つを指します。
- 仕訳帳
- 総勘定元帳
仕訳帳とは、日々の取引のすべてを「借方」「貸方」に分けて日付順(発生順)に記録していくもの。「仕訳日記帳」とも呼ばれます。
「総勘定元帳」は、すべての取引を「勘定科目」ごとにまとめたもの。勘定科目とは、「現金」「売上」などのように、取引内容をわかりやすく分類する見出しのようなものです。
補助簿
補助簿とは、主要簿の内容を補足する帳簿類を指します。法による作成義務はないものの、取引別のお金の流れを見るのに必要です。
詳しい補助簿があるほど取引内容が明確になり、経営戦略を立てる際などに役立ちます。
補助簿の例: 現金出納帳、売掛帳、買掛帳、経費帳、固定資産台帳 など
何が必要かは、事業内容などによって会社ごとに異なります。
現金出納帳は、小口現金の出入りを記録する帳簿です。売掛帳は取引先別の掛け売りの状況を把握するために作成し、貸し倒れなどの防止に役立てます。買掛帳では取引先別の掛け払いの状況が把握できるので、払いもれや二重払いの防止につながります。
交通費などの経費については経費帳に記録し、車や設備機器などの管理は固定資産台帳で行います。
帳簿付けの方法

帳簿を付けるには、主に次の3つの方法があります。
- 紙の帳簿に手書きする
- Excelで帳簿を作成する
- 市販の会計ソフト(クラウド型)を利用する
好きな方法を選べばよいのですが、現在では多くの企業・個人事業主が会計ソフトを利用しています。
会計ソフトにも種類があり、以前は特定のパソコンにインストールして使うものが一般的でした。しかし今は、オンラインでいつでもどこからでも利用できる「クラウド型」が主流です。
とはいえ現在でも、IT導入に消極的な中小企業や、担当者が高齢だったりパソコンに不慣れだったりする場合など、Excelや昔ながらの手書きの帳簿作成が行われています。
帳簿の手書きにはメリットよりデメリットが多い
上記のような中小企業、あるいは起業のタイミングでも、あえて手書きを選ぶケースはあるでしょう。帳簿を手書きすることにはメリットもありますが、デメリットも多いので総合的に判断したいところです。
まずは手書きのメリットを見ていきましょう。
帳簿を手書きすることのメリット

手書きの帳簿作成には、次のようなメリットがあります。
- 簿記などの知識が身に付く
- パソコンが苦手・不慣れでも関係ない
- 「書く」ことにより状況が頭に入りやすい
- 停電や通信障害などの影響を受けない
帳簿を手書きする場合、簿記などの知識がなければ勉強しながら行う必要があります。結果として、だんだんと知識が身に付きます。
紙に手書きするため、パソコンが使えなくても作成できます。また、紙に「書く」という作業は、理解力や記憶力の向上に役立つと言われています。そのため、帳簿の内容がより頭に入りやすいでしょう。
パソコンは停電やインターネットの通信障害などで使えなくなったりしますが、手書きならそれとも無縁です。
帳簿を手書きすることのデメリット

メリットがある一方、帳簿を手書きすることには、次のようなデメリットもあります。
- 手間や時間、ストレスがかかる
- 書き間違い・転記ミスなどが起きやすい
- 文字の乱れや癖で見にくくなりがち
- 過去のデータが探しにくい
- 保管スペースにかかるコストが高くなる
- 汚損・紛失のリスクがある
- バックアップにも手間がかかる
注目したいのは、前項のメリットよりデメリットの方が多いことです。手書き以外の方法との比較を交えて見ていきましょう。
手間や時間、ストレスがかかる
手書きで帳簿を作るには、多くの手間と時間がかかります。しかも作成すべき帳簿は複数あります。毎日忙しい中、すべての帳簿を手書きで付けることは、精神的にもストレスとなるでしょう。
手書きでなくExcelなら、関数やマクロが使えて効率的ですし、会計ソフトなら自動化でさらに効率的です。業務効率がよくなり、ストレスも軽減されます。
書き間違い・転記ミスなどが起きやすい

手書きではどうしてもミスが起こりがちです。帳簿から別の帳簿への転記ミスや、書き間違いなどがあると、数字が合わず、他の帳簿との整合性も取れなくなる恐れがあります。
その点、会計ソフトならシステムを使えば自動反映されます。転記の必要もミスの心配もありません。
文字の乱れや癖で見にくくなりがち
手書きの帳簿には、どうしても書く人の癖や、性格・忙しさといった状況が文字に表れます。後から見た場合、文字や数字の判別が難しい可能性も。数字を1つ見間違うだけでも大ごとになり得ます。
Excelや会計ソフトの場合は、文字を入力するので乱れはありません。癖の強い文字によって判読不能だったり読み間違いが生じたりすることもなく安心です。
過去のデータが探しにくい

過去のデータを知りたくても、紙で保管していると探すのが大変です。整理整頓されていればまだよいですが、忙しくて整理する暇もなくぐちゃぐちゃのまま、というケースも少なくありません。
その点、手書きでなくExcelや会計ソフトでの帳簿作成なら、電子データで保存されるので検索も簡単。探すのに時間はほとんどかかりません。
保管スペースにかかるコストが高くなる
帳簿には、7年や10年などの保存期間が定められています。紙の帳簿を10年分も保管しておくとなると、それなりのスペースが必要です。
オフィスに倉庫スペースを確保する、貸倉庫を利用するなどすれば、賃料などがかかります。しかし電子データで保存しておけば、余分なスペースはいりません。
汚損・紛失などのリスクがある

手書きの帳簿には、紙なので燃えたり濡れたり、なくしたりといった複数のリスクがあります。災害などは突然起こるため、持って避難することもほぼできません。
整理整頓がされていなければ、古いものと勘違いして捨ててしまったりする可能性も。Excelや電子データの場合、破損や消失のリスクはあっても紙とは異なります。災害でパソコンが使えなくなっても、クラウド上のデータは健在です。
バックアップにも手間がかかる
帳簿は、保存の義務もありますし、経営判断の参考にするため過去分もバックアップを取る必要があります。しかし、複合機で紙をすべてスキャンして保存するのも大変な作業です。
会計ソフトを使っていてもバックアップは必要ですが、バックアップの作業も復元する作業も、システムの指示通りにすれば簡単です。
帳簿付けの手間やストレスを軽減する方法
帳簿付けは、毎日継続して行わねばならず、手書きでは大きな手間とストレスになります。最後に、帳簿付けの手間やストレスを少しでも軽くする方法として、2つの手段を紹介します。
- 市販の会計ソフトを利用する
- 経理をアウトソーシングする
それぞれ見ていきましょう。
市販の会計ソフトを利用する

前の章でも比較したように、市販の会計ソフトを使えば、手書き帳簿のデメリットのほとんどは克服できます。
帳簿付けの作業が大幅に効率化できるほか、経理の知識がない人でも簡単に操作できるように作られています。
クラウド型を導入すれば、法改正などにもタイムリーに対応できます。いつ・どこからでもアクセスできて便利なほか、データが共有されることで属人化による不正などのリスクも減らせます。
経理をアウトソーシングする

経理を外部の代行業者にアウトソーシングするというのも1つの方法です。記帳だけでも委託すれば、大幅に作業が効率化でき、従業員の残業やミスも減らせるでしょう。
アウトソーシングするには業務の棚卸しなど準備が必要なため、社内環境の再整備、業務効率化のいい機会にもなります。コストも、人件費より低く抑えられるメリットがあります。
ちなみにアウトソーシングでも、使うのは市販の会計ソフトです。会計ソフトの使い方が不安な場合は、ITのシステム・ソフトの導入時からサポートしてくれる業者を選びましょう。
手書き帳簿からの卒業もBricks&UKがお手伝いします!

帳簿は手書きでもよいのですが、業務の効率化やリスクの面で考えるとデメリットが多いのが実状です。
今後は経理・会計業務のIT化も必須となることが予想されるため、早めに手書きから脱却することをおすすめします。
会計ソフトの導入に不安や抵抗がある場合でも、当社「Bricks&UKアウトソーシング」が丁寧にサポートいたします。利用は1カ月のお試しも可能ですので、お気軽にご相談ください。