支払代行は何をどこまで委託可能?メリット・デメリットや注意点も解説2025.02.18

経理担当者に大きな負担となる業務の1つが、請求書の支払い処理です。よくあるのが、紙の請求書を営業担当者が紛失してしまったり、後回しにされた請求書が月末ギリギリになって大量に提出されたりすること。
そのため、月末に作業が集中し、残業を余儀なくされ、ミスも起きやすくなります。
そんな事態を打開できる方法の1つが、「支払代行」の利用です。業務を外部に委託すれば、担当者の負担が減るだけでなく、業務の効率化や正確な処理が可能になります。
今回は、「支払代行」について、その内容や利用のメリット・デメリット、利用の流れや注意点を解説します。
目次
支払代行とは

「支払代行」とは、企業が行う取引先への代金支払いや従業員への給与支払いなどを代行するサービスのことです。言い換えれば支払業務の外部委託、自社側から言えば支払業務のアウトソーシングです。
支払代行の依頼先
支払代行を請け負っているのは、次のような業者です。
- 支払代行サービス業者
- 経理アウトソーシング会社
- 税理士・会計事務所
- 金融機関
支払代行サービス業者は、文字通り支払業務だけを請け負う業者です。経理アウトソーシング会社では、支払代行のみを請け負うほか、その他の経理業務もまとめて代行することが可能です。
税理士・会計事務所の場合、資格が必要な税務申告・税務相談なども請け負えるほか、資金調達のサポートや経営コンサルティングを行うケースもあります。
金融機関では、法人向けサービスの一環として「総合振込サービス」「ファームバンキング」などの名称で、複数の取引先への一括振込や給与振り込みなどを行っています。
類似の名前のサービスとの違い
ここで、似たような名称のサービスとの違いもはっきりさせておきましょう。
振込代行
振込代行と支払代行はほぼ同義です。
厳密に言えば、支払代行には「振込」以外の支払い方法も含まれるニュアンスがあります。しかし実際には、現金や手形、小切手などによる支払いには対応していないケースがほとんどです。
経理代行
経理代行は、支払業務だけでなく、企業の経理業務全般を代行するサービスです。つまり支払代行は、経理代行の一部と言えます。
経理代行では、売掛金・買掛金の管理、請求書発行や出納帳の作成、キャッシュフロー一覧表の作成など幅広い業務を行います。
決済代行
決済代行は、消費者が商品やサービスに対して支払う際、クレジットカードやコンビニ決済など複数の決済手段から選べるようにするために利用されるサービスです。
支払代行が事業者間での支払業務を代行するのに対し、決済代行は主に店舗と消費者との間の取引で活用されるもので、いわば受け取る側の利便性が目的となっています。
支払代行ができること・できないこと
代行業者によって対応する業務の範囲は異なりますが、一般的に「支払代行」でできること・できないことについて見ておきましょう。
支払代行サービスで行えること

支払代行業者に委託できるのは、次のような業務です。
- 支払情報のデータ化
- 振込データの作成
- 支払予定表の作成
- 銀行振込の代行
- 複数口座への一括振込
- 会計システムなどへのデータ連携
請求書から支払情報のデータを作成し、支払予定表を作成します。その予定表にもとづき、取引先などへの銀行振り込みを行います。この際、インターネットバンキングを使うのが一般的です。
支払代行サービスでは行えないこと

次のような場合の支払いは、支払代行の業務範囲ではありません。
- 確定していない分の支払い
- 現金や手形、小切手などでの支払い
支払代行は、確定した支払い分について業務を代行するサービスです。請求書が発行されていない案件や、契約が成立していない段階での先払い、社内で必要な承認を得ていない案件の支払いなどはできません。
また、盗難・紛失等のリスクが高い現金などの支払い方法には、対応していない代行業者がほとんどです。
支払代行を利用するメリット

支払代行の利用には、次のようなメリットがあります。
- 経理業務の効率化
- コア業務への集中
- コストの削減
- ミスや不正の防止
- 正しいデータの把握
- 従業員の負担軽減
それぞれ見ていきましょう。
経理業務の効率化
経理業務の中でも支払いに手間と時間がかかっている企業は少なくありません。支払代行を利用すれば、振込にかかる一連の作業時間が短縮化、効率化できます。
任せた作業はもちろん、専門業者により適切かつ正確に処理されます。
コア業務への集中
支払いにかかっていた労力や時間が削減できる分、社員をよりコアな業務に回せるようになります。
経理部門内であればより高度な業務、他部署との兼務をしているならば本業に集中でき、事業の成長や増益などにつながります。
コストの削減
支払業務のために担当者が毎月長時間の残業となっている場合も、支払代行に任せればその必要はなくなります。
人を雇うよりも低コストで委託でき、時間外労働にかかる賃金や光熱費も削減できます。
ミスや不正の防止
人手不足、多忙や経験不足などによるミスも、支払代行への委託で防止できます。属人化やずさんな経理が不正の温床となることもありません。
複数人によるチェックが行われていたり、万全なセキュリティ対策が取られていたりする業者なら安心でしょう。
正確なデータの可視化
支払代行を利用すると、支払状況がデータで可視化されます。それにより、過去の支払傾向や今後の予測なども分析しやすくなります。
データをしっかりと分析することで、経営状況の正しい把握や適切な経営判断につながります。
従業員の負担軽減
支払業務にかかる従業員の負担が少なくなることで、効率化以外にも大きなメリットがあります。
たとえば多忙な中「ミスは許されない」というプレッシャーに神経をすり減らしたり、営業社員に言いたいことも言えず大量の請求書を処理したりするストレスから解放されます。そうなれば担当者のモチベーションアップや離職防止も期待できます。
支払代行を利用するデメリット

支払代行の利用でデメリットとなるのは、次のようなことです。
- 代行にかかるコスト
- 緊急・即時対応
- 自社の業務ノウハウ・社員の経験
- 委託先業者の倒産リスク
順に説明します。
代行にかかるコスト
残業など人件費や時間外の光熱費の削減ができる一方で、代行業者への支払いは必須です。
支払代行には、代行手数料のほか、初期費用やシステム導入費、オプション料金などがかかる可能性があり、委託先や業務内容によっては高額になる恐れがあります。
即時対応・イレギュラー対応
社内であれば、何かあった場合にも即対応できる可能性があります。しかし、外部業者となるとその場で状況を確認して指示するのとは異なり、即時・当日での対応は難しい可能性が高いです。
また、基本料金に含まれる業務は画一的なものです。業界や自社特有のルールで行う必要がある場合などには、オプション料金(追加料金)がかかります。
自社の業務ノウハウ・社員の経験
外部に委託することで、支払業務に関する業務知識やノウハウが自社に蓄積されなくなります。それは、社員個人が支払業務の実績を積む機会がなくなるからです。
自社が将来的に外部委託をやめようと思ったとき、内製化に苦労する可能性があります。
自社側のITリテラシー
ITの基本的な知識がない人、インターネットバンキングやシステムを使うのが初めての人、長年にわたって紙での作業を行ってきた中高年者などの場合には、適応するのに時間がかかる可能性も。
効率化・時短のはずが、慣れるまでは逆に時間がかかる、ストレスになるなどの可能性もあります。
委託先業者の倒産リスク
信頼できる業者を選んだつもりでも、経営状況まで把握するのは難しいでしょう。代行業者が万が一倒産でもした場合、支払が滞るだけでは済まない可能性も。
重要業務を委託するのですから、そこまでのリスクも想定した契約を結ぶ必要があります。
支払代行の利用の流れ
では、実際に支払代行を利用する場合の、利用までの流れと、代行業者による業務の流れを見ていきましょう。
利用開始までの流れ

支払代行に依頼すると決めたら、次のように進めていきます。
- 1) 情報収集・問い合わせ・見積もり依頼
- 2) 代行業者の選定・契約の締結
- 3) システム導入準備・初期設定、テスト運用
- 4) 本稼働開始
順に見ていきましょう。
1)情報収集~見積依頼
まずは委託先の業者について情報収集をします。候補先をいくつか絞ったら、電話や問い合わせフォームなどで問い合わせ、自社の場合での見積もりを依頼してください。
ホームページの情報で最安値だったとしても、委託したい作業が対象外だったり、初期費用や追加代金が必要となったりすることも多いので注意が必要です。
2)業者の選定・契約
各社から見積書が届いたら、業務範囲や初期費用、追加料金の有無などを比較し、自社に最適な業者を選びましょう。
その後、選定した業者との間で業務委託契約(準委任契約)を締結します。
選ぶ際の注意点については、次の章で解説します。
3)導入準備・初期設定、テスト運用
本稼働に入る前に、社内の体制を整備します。資料の受け渡しなど、業務がスムーズに遂行されるための流れを作っておく必要があります。
また、インターネットバンキングで利用するオンライン口座の開設や、必要に応じてシステムの導入・変更などを行い、初期設定を済ませます。本稼働日までにテスト運用を行い、不具合などがないかも確認しておきましょう。
4)本稼働
契約に基づき、次の項で紹介する流れに沿って委託を開始します。
支払代行業務の流れ

支払代行の業務は、次のような流れとなるのが一般的です。
- 1)自社:請求書の送付
- 2)業者:請求書の整理とデータ化
- 3)業者:支払予定表の作成
- 4)自社:支払予定表の確認
- 5)業者:振込データの作成
- 6)自社:最終確認後、決済
業者によっては、請求書の送付ではなく自社で支払データを作成する必要があるケースもあります。
実際に送金するための決済は、自社で行うのが一般的です。ほとんどの場合、代行業者が口座のお金を動かすことはありません。決済後、指定した日に支払いが実行されます。
支払いが実行された後は、オンラインで支払結果のデータを確認、自社の会計システムで経理処理を行います。報告書がメールなどで届く場合もあります。
支払代行の委託先を選ぶ際の注意点

委託先を選ぶ際は、次の点に注意して失敗を防ぎましょう。
- 相見積もりで業務範囲や料金を比較する
- 隠れコストがないか確認しておく
- 自社に合うサービスかどうかを見極める
- 具体的なセキュリティ対策を確認する
- サポート体制が充実している業者を選ぶ
最適な業者を選択できれば、最大限の効果が期待できます。
相見積もりで業務範囲や料金を比較する
候補となる2~3社から見積もりを取り、業務範囲や料金を細かく比較しましょう。状況によって追加代金が必要となることもあります。
A社は初期費用も月額基本料も不要だったのに、B社では必要になる、といったケースもあります。その場合、合計金額もA社の方が安くなるとは限りません。
隠れコストがないか確認しておく
たとえば委託にあたり、業者指定のシステムを導入する必要があり、導入や自社システムとの連携に費用がかかる場合があります。初期費用に含まれている場合もあれば、それ以外で支払う必要がある可能性も。
料金には、振込手数料のほか、組戻し手数料やデータ修正手数料などが必要となるケースが多いです。また、電話やメールでサポートを受けるのにも、内容などによって別途で費用がかかる場合があります。
自社に合うサービスかどうかを見極める
料金の高い・低いも重要ですが、自社の支払業務に合った対応ができるかどうかも大きなポイントです。たとえば銀行振込以外の支払いが多い場合は、対応してくれる業者を探す必要もあるでしょう。
月によって振込の件数が異なるなら、月額での固定料金制よりも振込件数に応じて変わる従量課金制の方が無駄になりません。
具体的なセキュリティ対策を確認する
委託先のセキュリティ対策も重要です。ISO27001やプライバシーマークの認証を受けているかどうかは大きな判断基準となりますが、その場合でも、対策の内容を具体的に聞いておきましょう。
たとえばデータの暗号化やアクセス制御、バックアップなどの管理体制、アクセス制御の方法などのほか、災害時の対策も確認すると安心です。
サポート体制が充実している業者を選ぶ
問い合わせを何で受けているか(電話、メール、webチャットなど)のほか、対応可能な時間帯も確認しておきましょう。
導入時の設定作業などのサポート、運用後のトラブル対応なども必要です。見積もりを依頼した際、質問した際の相手の対応(態度やスピード感)なども見ておきたいところです。
支払代行の活用で経理の負担を軽減しよう

支払代行サービスは、取引先企業への代金や従業員の給与の支払いに利用できる業務代行サービスです。振込代行とも呼ばれます。
手間のかかる支払業務を外部委託することで、自社の負担が大幅に減り、業務を効率化できます。
依頼できる先には、支払代行だけを専門に行う業者のほか、他の業務もまとめて頼める経理代行サービス、税務相談や確定申告のサポートも受けられる税理士事務所などがあります
どこに頼むかによって、業務範囲や料金、セキュリティ対策やサポート体制などは異なります。自社に何が必要なのかを把握した上で、最適な業者を選びましょう。
支払代行は、弊社(Bricks&UKアウトソーシング)でもほとんどのお客様にご依頼いただいています。
その主な理由は、次の2点です。
①従業員に残高や給与の額を見せたくない
②誰がやっても同じ業務はアウトソーシングして、社員をコア業務に集中させたい
弊社では振込データの作成まで行うので、社員に見られることなく振込業務を完結できます。
さらに、請求書の受取や取引先企業とのやり取りまで行えるので、社内に経理担当を置かずとも、請求書取得から振込設定を完了させることが可能です。
ネットバンキングの初期サポートなども充実しておりますので、お気軽にお問い合わせください。