経理に向かない人が事業を営むリスクとは?本業に専念する方法も解説2025.08.08

経理なんて向いてないのに― と思いながらも、コスト削減のために自分で領収書の整理や記帳に時間を費やす事業主は少なくありません。

数字を見るだけで気が重くなる。細かい作業にイライラする。それでも「やらなきゃいけない」のが経理です。しかし、向いていない経理を無理して続けると、ミスやトラブルのリスクも高まります。

この記事では、経理に向かない人が事業と経理を兼任することで生じるリスクと、その回避策について解説します。

経理に向かない事業主が経理を行うリスク

経理に向かない事業主が経理を行うリスク

経理業務を事業主が自ら抱えるケースは少なくありません。コストの節約も必要ですし、事業で「数字が苦手」などと言っていられません。

しかし、経理に向かない人が事業と経理の両方を行うことには、次のようなリスクがあります。

  • 経理業務が後回しになる
  • 知識不足などでミスや不備が起きやすい
  • 経理の繁忙期は事業に集中できない
  • 体調不良時などの代わりがいない

具体的に見ていきましょう。

経理業務が後回しになる

事業主が経理を兼任する場合、本業より経理の方が優先度が低く、後回しになるのは仕方のないことかもしれません。

しかし、後回しが続くと、処理すべき作業がどんどんたまります。まとめて処理すればいいと思っても、「この領収書って何だっけ?」とわからなくなることも。

自社だけのことならまだしも、支払いが遅れては相手方からの信頼を損ねることに。逆に未払金が回収できず、資金不足に陥るリスクもあります。

知識不足でミスや不備が起きやすい

事業と経理を兼任する事業主に多いのが、経理知識がほぼなく、自信がないまま処理を進めてしまうこと。しかし、経理業務は税法などにもとづく作業も多く、守るべきルールもあります。

知らずに自己流で処理すると、帳簿の記載ミス、税務申告の漏れなどが起きる可能性が。法令は頻繁に改正されるため、作業もその都度アップデートが必要です。無自覚でも法令違反となれば、事業主として責任を問われます。

数字や簿記が苦手で、帳簿の内容を正しく理解できなければ、経営判断にも影響しかねません。

経理の繁忙期は事業に集中できない

経理には、月末月初や決算期などの繁忙期があります。特に普段の作業をためてしまっていた場合、繁忙期には業務量がグンと増え、処理が間に合わないほか、本業にも支障をきたす可能性が。

繁忙期に経理で意識や時間をとられると、絶好のビジネスチャンスに気づけない恐れも。気づいたとしても、思うように動けなければ、チャンスを逃してしまいます。

体調不良時などに代わりがいない

体調不良でも経理を代わってくれる人がいなくて憂鬱な事業主

個人事業主など1人で事業を行う人は、経理も本業もすべて自分で担っています。そのため、自分が倒れた時に代わりとなる人がいません。

たとえば確定申告には、守るべき期限があります。天災や重病などやむを得ない事情なら延長もできますが、延長期限を過ぎても申告しなければ、延滞税などのペナルティが科されます。

経理に向かないのはこんな人

経理に向かない人

経理業務は、さまざまな作業がありながら単調でもあり、継続して行うことから、向き・不向きが大きく分かれる仕事でもあります。

経理に向かないのは、次のような人です。

  • 数字が苦手
    (見るだけでストレス)
  • 大雑把な性格で、細かい作業が嫌い
    (チェックは苦手)
  • オフィスで座っているより現場で動きたい
    (じっとしていられない)
  • ルールより感覚で動くタイプ
    (枠にとらわれたくない)
  • 飽き性である
    (単純作業はつまらない)

こうした人が経理を担当すると、苦手なことの繰り返しでストレスを感じやすくなります。

作業に集中できず、経理に不可欠な正確さに欠けたり、ミスが増えたりする可能性も高いです。

事業主は経理に向かない?その理由とは

事業主が経理に向かない理由

事業経営をするような人は、経理には向かないとも言われます。

もちろん、すべての事業主が経理を苦手とするわけではありません。ですが、それぞれに向いている人の特徴を比べてみると、かなり違うのがわかります。

比較項目経理事業経営
仕事の特性・正確性
・継続性
・ルール遵守
・柔軟性
・創造性
・リスク判断
求められる資質・慎重さ
・緻密さ
・分析力
・着実さ
・調整力          
・決断力
・大胆さ
・先を読む力
・行動力
・戦略的思考力
成果の評価軸・ミスの少なさ
・安定性
・売上
・成長
・革新性
他者との関わり・他部署との連携・調整・社外との交渉
・意思決定
・人を動かす
行動の基準マニュアル・制度・前例に従う目的・成果・状況に応じて判断

経理に向いている人と事業経営に向いている人では、業務の性質や必要な考え方、求められる資質が大きく異なっています。

事業主が経理に苦手意識を持つのも、自然なことかもしれません。

経理に向かない事業主がとるべき対応策

経理に向かない事業主がとるべき対応策

自分は経理に向かないと思いつつ、本業も経理も自分で抱えるのには大きなリスクがあります。では、経理のリスクを回避しつつ、事業に集中するにはどうすればいいのでしょうか。

対応策として挙げられるのは次の5つです。

  • 会計ソフトを使って、自分で効率化する
  • 経理経験のある人を雇う
  • 外部専門家にスポットで相談する
  • 経理業務の一部をアウトソーシングする
  • 経理業務をまるごとアウトソーシングする

それぞれ見ていきましょう。

会計ソフトを使って、自分で効率化する

会計ソフトとは、帳簿の作成や仕訳、集計などを効率化するツールです。銀行口座やクレジットカードと連携できるものも多く、記帳の手間やミスを減らせます。

ただ、基本的な簿記の知識や入力などの操作の習得は必須で、完全に自動化できるわけではありません。

経理経験のある人を雇う

経理経験のある人を雇えば、経理作業はその人に任せ、自分は本業に専念できます。ポイントは「経理経験者」を雇うことです。

ただし、人を雇うには、採用の手間や人件費という新たな負担が増えます。また、採用に失敗したり、すぐに辞められたりすれば、また探すところから始めねばなりません。

外部専門家にスポットで手を借りる

基本的には自分でやるけれど、困ったときだけ相談したい、ずっとじゃなくて決算期だけサポートしてもらいたい―そんな時は、税理士などの専門家に相談、スポット(単発)で請け負ってもらう方法もあります。

ただ、継続的なサポートには顧問契約料などが必要となりますし、単発の依頼では専門家にも状況把握は難しく、最善のアドバイスができない可能性があります。

経理業務の一部をアウトソーシングする

アウトソーシング、つまり外部の専門家に経理業務の一部を委託するという手もあります。たとえば、記帳や請求書の発行、振込業務などを代行してもらうのです。

時間がかかる、ストレスとなる作業を専門家に任せることで、経理に関わりつつも負担を減らし、事業に集中する時間や気持ちのゆとりを作ることができます。

経理業務をまるごとアウトソーシングする

一部だけでなく、すべての経理業務を外部に委託するのも1つの方法です。経理全般をアウトソーシングし、決済など判断・責任をともなう最重要業務のみ自社で行います。

経理業務をまるごと減らせるので、自分は本業に専念できます。任せるのは経理の専門家なので、正確さや法令遵守の面でも心配無用です。

ただ、アウトソーシングする先の業者によって、業務範囲などが異なるため、委託先選びは慎重にしなくてはなりません。

経理をアウトソーシングするってどうなの?

経理をアウトソーシングするってどうなの?

事業に集中するためとはいえ、経理を外部に委託するなんてどうなの?と怪訝に思う人もいるでしょう。しかし、経理を委託する企業は増えています。というのも、ルーティン作業の多い経理は、実はアウトソーシング向きなのです。

この章では、経理をアウトソーシングすることのメリットや注意点、委託先とその選び方について解説します。

経理をアウトソーシングするメリット

経理をアウトソーシングすると、事業に集中どころか「専念」できるようになります。さらに、次のようなメリットもあります。

  • 経理のプロによって、正確な作業が可能になる
  • 正確なデータにより、正しい状況把握や意思決定ができる
  • 人材雇用にかかる各種のコストや労力も不要である
  • 必要な業務だけ依頼でき、コストの無駄も防げる
  • 業務プロセスの改善、IT化などもサポートしてくれる

たとえば、手書きで帳簿を作成している場合、会計ソフトの導入からサポートしてもらえます。業務プロセスに無駄があれば、改善することで生産性のアップにつながる可能性も高いです。

どこまで任せられるのか

外部の専門家に委託できるのは、次のような経理業務です。

  • 領収書・レシートの整理・入力
  • 会計ソフトへの仕訳入力
  • 請求書の作成・送付・管理
  • 未収金・未払金の確認
  • 振込・支払業務の補助
  • 月次・年次の帳簿整理・集計

このように、日常的な経理業務のほとんどは外部委託が可能です。

ただし、対応範囲やサービス内容は業者によって異なるため、契約前に必ず確認しておきましょう。

委託できる外部専門家は主に3種類

経理を委託できる業者として、主に3つの選択肢があります。

  • 税理士・会計事務所
  • 経理アウトソーシング会社
  • 経理フリーランス

それぞれの特徴・違いを見ておきましょう。

税理士・会計事務所

税務・会計の専門家に、経理だけでなく税務・会計まで一貫して任せられる選択肢です。確定申告や個別の税務相談も可能です。

スポットでも委託できますが、月または年単位での顧問契約が一般的です。費用は高めなので、売上や利益が安定してきたタイミングで検討するのが現実的です。

経理アウトソーシング会社

定型的な経理業務を、会社として組織的に請け負うのが経理アウトソーシング会社です。多くの場合、クラウド会計ソフトの導入や業務プロセスの構築・改善など、体制づくりからサポートしてくれます。

費用も税理士・会計事務所への委託や人件費と比べて安い傾向ですが、料金体系は業者によって異なるので要注意。大きく分けて、固定制と従量課金制があります。

税務申告などの法的手続きに関する業務は対象外ですが、税理士と提携して請け負うケースも多いです。

経理フリーランス

企業での経理経験者や税理士資格を持つ人などが個人で経理業務の代行をするフリーランスもいますす。個人なので、対応する業務範囲など、比較的柔軟に対応してくれます。

費用は比較的安い傾向ですが、得意分野や経験、スキルの個人差が大きく、事前の判断が難しいという一面もあります。

経理をアウトソーシングする際の注意点

経理をアウトソーシングする際の注意点

経理をアウトソーシングする上で最も重要なのは、「自社に合った委託先を選ぶこと」です。サービスの範囲や内容、料金は業者によって異なるため、委託先を間違えるとコスト増にもなりかねません。

まずは、経理業務の何をどこまで任せたいのか、委託したい業務範囲を明確にしておきましょう。そして、次のようなポイントで選んでください。

確認すべき項目ポイント
委託可能な業務の範囲・どこまで請け負ってくれるか(イレギュラー対応は可能か)
・自社でしなくてはならないことは何か
料金体制と料金・料金体制(固定制・従量課金制など)
・追加代金が必要な業務はないか
業者の責任範囲・トラブル時など、業者はどこまで責任を負うのか
セキュリティ体制・どのようなセキュリティ対策を取っているか
(社内対策、社外向け対策)
連絡手段・相談体制・担当者は1人体制かチーム体制か
・連絡手段は何か、使いやすい方法か
・相談しやすい姿勢・雰囲気か

正式契約の前には、契約解除の条件、違約金の有無などについても必ず確認しておきましょう。

上記のポイントで自社に合ったアウトソーシング先を選べば、委託後のトラブル・後悔を防ぎ、経理を安心して任せることができます。

経理に向かない人はプロに任せるべし

経理に向かない人はアウトソーシングに任せるべし

自分が経理に向かないと感じるなら、無理せずプロに任せるのも立派な経営判断です。

経理のアウトソーシングは、専門家の力を借りて自分の負担を軽減し、事業に専念できるという大きなメリットがあります。コストも人件費より安く抑えられる傾向にあります。

ただし、委託先次第では、かえって手間やコストが増えるリスクも。そうした失敗を防ぐには、委託できる範囲や料金体系、セキュリティ体制など、事前に確認すべきポイントを押さえて選ぶことが大切です。

当社「Bricks&UKアウトソーシング」では、母体である税理士法人と提携し、経理業務の代行や業務プロセスの改善などを行っています。柔軟なサービスで、お客様に最善の課題解決方法を提案します。ぜひお気軽にご相談ください。

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