経理の属人化を解消するにはどうすれば?原因とリスク、対処法を解説2024.11.26
中小企業では、経理が属人化されてしまっているケースも多く見られます。
「属人化」とは、業務の進め方や状況が特定の人にしかわからない状態のこと。技術的な分野での属人化は必ずしも悪ではありませんが、経理業務の属人化は大きなリスクとなります。
この記事では、経理が属人化する原因とリスク、属人化を解消して得られるメリットを解説、最後に、解消する方法を紹介します。
経理業務が属人化する7つの原因
経理業務が属人化される原因には、主に次の7つが挙げられます。
- もともと1人でもできる仕事である
- 業務の専門性が高い
- 人手が足りていない
- マニュアルがない
- 分業制にしている
- コミュニケーション不足である
- 業務管理が不十分である
上から2つは「経理」の業務特性による原因ですが、それ以外は組織に原因があると言えます。それぞれ見ていきましょう。
1人でもできる仕事である
経理業務を1人の担当者に任せている中小企業は少なくありません。個人事業主であれば、本業のかたわらで経理をこなす人がほとんどでしょう。フリーランス経理として、1人で仕事を請け負う人もいます。
他の人との共同作業や情報共有をする必要がないため、属人化しやすくなります。
業務の専門性が高い
経理には簿記などの知識が必要です。業務の専門性が高いことも、属人化を招きます。
中小企業や個人事業主では、経営者は本業で常に忙しく、経理については知識不足も相まって担当者に任せきり状態になりがちです。
多少の違和感があっても、知識がないため口出しがしづらいなどの背景から経理部門が孤立する形となり、属人化につながります。
人手が足りていない
人手不足の職場では、経理担当が複数人いてもそれぞれが常に忙しく、日々の処理で精いっぱいな状態です。
他の人の作業にかかわったり、人に聞いたり教えたりする時間もないため、各人の担当業務の中で「その人にしかわからない」作業方法や流れが生まれてしまいます。
マニュアルがない
経理業務のマニュアルがなく、担当者が独自にやり方を考えて進めているような状況も、属人化につながります。
マニュアルがないと、作業の方法や手順の正解がわからぬまま独自のやり方で進めがちです。マニュアルが整備されていない企業では、人手不足で常に多忙、誰にも聞けない状態であることも多く、複数の原因が重なって属人化されていきます。
分業制にしている
企業規模が大きくなると、業務量が増えるため、経理部門にも複数の人材を置いて分業制にする必要があります。しかしその分業制も、属人化を生み出す原因の1つです。
分業制では、各人が特定の業務のみ行う状況で、自分の担当以外のことはノータッチです。そうなると、他の人の利便性や全体のバランスを軽視し、独自のやり方で進める人が出てきます。
コミュニケーション不足である
部署内でコミュニケーションができていなければ、マニュアルがあっても人手が足りていても属人化になり得ます。
普段から会話がなくコミュニケーションが取れていない職場には、他人への配慮なく自分に都合のいい進め方をする人が出てきます。
誰かが処理方法などを変え、その情報共有がされなければ、「その人にしかわからず、誰も手が出せない」という状態になります。
業務管理が不十分である
業務管理ができていない職場は、属人化の温床と言えます。管理されていないことをいいことに、わざと「自分にしかわからない状態」にする人もいるからです。
その理由は、「自分の価値や評価を高めたい」もしくは逆に「知識がないことを隠したい」、あるいは「新たな仕事を覚えるのは嫌だ」といった個人的なものです。
また、周りの人の方が原因となっていることも。
特定の人に大変な作業や責任を押し付けたことによる属人化というのも存在しています。
経理の属人化による5つのリスク
経理業務が属人化していることは、会社にとって大きなリスクです。具体的に言うと、属人化には次のような問題があります。
- 業務の効率が悪化する
- ミスや不正に気付かない
- 休職や退職の際に困る
- 業務評価が正しくできない
- 組織や他の社員の成長を妨げる
それぞれ説明します。
業務効率が悪くなる
経理の属人化は、業務効率を悪くする原因となります。他の社員の手が空いていても、属人化していれば手伝えず、待つだけなどのムダな時間が生まれます。
また、効率の悪いやり方で業務が行われていても、周りの人には気づけません。もしその可能性に気づいても、変える気が当人になければ、改善するのは困難です。
費用面でも、「他の社員は余裕があるのに、1人だけ残業手当や休日出勤でコストがかかる」というような事態が生じます。
ミスや不正に気付かない
業務が属人化されていると、ミスをしても、当人が自己申告しなくてはごまかされてしまいます。誰にも気づかれずに不正を働くことすらできてしまいます。
何らかのきっかけでミスや不正が発覚したときにはすでに遅く、信頼性を失うような大問題となりかねません。
休職や退職の際に困る
数日休むだけでも影響はありますが、休職や退職となればさらに大変です。社外から問い合わせが来ても、答えることができません。
引き継ぎの時間もなければ残された社員に大きな負担となるだけでなく、取引先やクライアントに迷惑をかけることに。業務内容によっては、経営にも悪影響を及ぼします。
そもそも属人化による1人への大きな負担は、休職や退職の可能性も高めます。
また、退職後にミスや不正が発覚し、トラブルになることもあります。
正しい業務評価ができない
社員の業務評価も、属人化によって難しくなります。本人任せになっていると、業務のやり方が正しいのか、効率などの面で最適なのかどうかがわかりません。
業務量が適切かどうかや、スキルと業務量とのバランスがどうか、といった判断、給料に見合っているかどうかの判断も難しくなります。
当人あるいは他の社員が納得できる評価をしなければ、不満が生じます。
部内の人間関係の悪化や離職にもつながりかねません。
組織や他の社員の成長を妨げる
属人化を放置することは、他の社員の成長機会を奪うことでもあります。
通常なら、社員は組織の中でコンスタントに新しい仕事を覚え、その範囲を広げて成長します。しかし属人化されていては他の社員がその業務のスキルや知識、ノウハウを得る機会を持てません。
知識やノウハウは部署にも蓄積されず、古いやり方に固執していれば組織の成長も妨げます。
属人化による「ムダ」は意外と大きいです。
本来、経理業務は月末月初が繁忙期であり、中旬は別の業務を手伝えるはずです。
しかし、中旬も忙しそうにしている経理担当者も多いのではないでしょうか?
これは、時間に合わせて仕事を作り出す「究極のムダ」とも言えるでしょう。
そして、それを指摘できない環境を作り出してしまうのが属人化の怖いところです。
まずは、1つの業務を複数の人が対応できる体制になっているか、確認してみてはいかがでしょうか?
属人化を防止・解消する6つの方法
では、すでに属人化が起きている場合、どうすれば解消できるのでしょうか。また、将来的に属人化させないためにはどうしたらよいのでしょうか。
次のような方法で、属人化を解消・防止することができます。
- 業務内容とフローを見直す
- 経理マニュアルを作成する
- ITツールを導入する
- 情報共有の場を作る
- 定期的にジョブローテーションする
- 経理をアウトソーシングする
それぞれ見ていきましょう。
業務内容とフローを見直す
まずは経理業務を棚卸しし、誰が何をしているのか、何にどれだけ時間がかかっているのかを明確にします。1人ずつ紙などに記入してもらうかヒアリングし、全体を把握しましょう。業務フローも明確にしてください。
各業務の難易度や個人のスキルも踏まえ、作業量に偏りがないか、業務にムダがないかなどを確認します。
不要な作業を廃止する、負担の多い作業を振り分けるなどするほか、状況によっては、増員や一時的な派遣・外注の利用も検討しましょう。
経理マニュアルを作成する
効率化した作業のすべてをまとめたマニュアルを作ります。作成は、管理職でなく作業を行う社員の1人が進めていく形がよいでしょう。作ってあっても古い場合は、見直しが必要です。
ポイントは、シンプルでわかりやすく、それを見れば誰でも作業ができるマニュアルにすることです。各作業の時期やフローも明確に記載し、誰にでも閲覧できるようにしてください。
ITツールを導入する
属人化の解消に役立つITツールの導入も検討しましょう。たとえば業務可視化ツールや、タスク管理ツール、ナレッジマネジメントツールなどが効果的です。
ナレッジマネジメントツールでは、よくある疑問への回答をデータベース化して共有することなどが可能です。「聞きたいけど聞きづらい」「同じことを何度も聞かれて時間が取られる」といった問題も解消できます。
業務を効率化できる会計ソフトや経費精算システムも、未導入であれば検討しましょう。
情報共有の場を作る
定期的なミーティング、ランチミーティングなど、情報共有ができる場所と時間を設けましょう。チャットツールやWeb会議システムを使う方法もあります。
情報共有をしやすい雰囲気づくりも大切です。業務について社員から提案などの話が出たら、まずはしっかりと聞き、相手の意見を認めます。すぐに否定したりすれば、相手も話す気がなくなります。
メンター制度など教育体制を整え、縦のつながりを作るのも効果的です。
定期的にジョブローテーションする
部署内で担当業務の変更・入れ替えを定期的に行い、誰もがどの業務でもできる体制を作りましょう。
ジョブローテーションをする中で、教え合いが生まれ、標準化や利便性を考えた仕事の進め方ができるようになります。
教育体制やマニュアルの整備がきちんとされていれば、ジョブローテーションにかかる負担も軽減できます。
経理をアウトソーシングする
人手が足りない、増員もできない場合や、経理部門に多い女性特有の人間関係で問題が生じているような場合もあるでしょう。
その場合は外部への委託、経理アウトソーシングも視野に入れるのがおすすめです。経理業務はルーティン作業が多く、アウトソーシングにも向いています。
アウトソーシングすれば、必然的に業務が切り離され、属人化は不可能になります。コスト面でも、人を雇うより安く抑えられます。
ただし、一度アウトソーシングを行うと、内製化の際に手間取る可能性があります。
将来的に内製化する可能性が高ければ、一部業務だけをアウトソーシングするなど必要に応じて活用してください。
属人化は、1つの解消方法だけでは解決しません。
防止するためには6つの項目をバランスよく遂行することが大切です。
また、業務フローを可視化する前に、システムを入れることは危険です。
結局「システムの使い方は○○さんでないとわからない」など、また別の属人的要素を生むことになります。
ぜひ、業務フローを作成した後に、自社の問題点を洗い出してみてください。
その際にプロの手を借りることも、検討してみてはいかがでしょうか?
経理の属人化解消で業務を効率化しよう
属人化している業務があると、業務効率の悪化を招いたり、組織や社員の成長を妨げたりします。特に経理部門の場合、属人化で不正やミスが隠れる恐れがあり、大きなリスクです。
属人化を解消するには、まず経理業務を棚卸しし、マニュアルを作るなどして可視化することから始めましょう。属人化の解消に取り組めば、業務の効率化も図れます。
棚卸しとマニュアル作成ができれば、思い切って経理をアウトソーシングするのも1つの方法です。コア業務への集中やコスト削減なども可能になるので、検討することをおすすめします。
経理アウトソーシングについてのご質問・相談は、当社「Bricks&UKアウトソーシング」までお気軽にお問い合わせください。