経理アウトソーシングにはどこまで委託できる?コストやリスクも解説2025.05.29

経理担当者が急に退職してしまったり、社長自らが経理作業に時間を取られていたりする場合に活用したい、経理のアウトソーシングサービス。
企業規模や業種にかかわらず、導入する企業は増えています。とはいえサービス内容など詳しいことはまだよく知られていないのが現状で、「どこまでやってくれるの?」という声も多く聞かれます。
そこでこの記事では、経理アウトソーシングの利用前に知っておきたい、委託可能な業務範囲や委託できない業務の種類について解説します。よくある疑問も解消していくので参考にしてください。
この記事は私が監修しました!
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「株式会社Bricks&UKアウトソーシング」 業務コンサルタント
経理の業務設計・運用に優れたコンサルタントが、効率的で正確な業務請負いをお約束します。
目次
アウトソーシング可能な経理業務の内容

一般的に、経理のアウトソーシングでは次のような業務が委託できます。
- 売上に関する業務
- 支出・仕入れに関する業務
- 資金に関する業務
- 経理関連のコンサルティング
具体的に見ていきましょう。
売上に関する業務

売上に関して、次のような業務がアウトソーシングできます。
- 請求書発行
- 売掛管理
- 売掛金の消込
- 受取手形の管理
- 売上伝票の起票
- 会計ソフトへの入力
請求書発行
見積書や納品書などの資料にもとづいて請求書を作成し、メールや郵送で顧客などに送付します。
売掛管理
請求書を紙で作成している場合には、請求書作成ソフトの選定や設定からサポートします。
売掛金の残高や入金の状況をシステム上で確認・管理します。
入金予定日を過ぎた案件の連絡など、キャッシュフローの改善につながるサポートも可能です。
売掛金の消込
銀行の入金データと請求情報を照合し、消込処理を行います。
システムで自動化するため、人的ミスを減らし、正確に処理することができます。
受取手形の管理
受け取った手形の情報をシステムで管理、期日管理や電子記録債権への移行手続きなどをサポートします。
安全かつ効率的な資金管理が可能です。
売上伝票の起票
販売データや注文情報にもとづき、売上伝票を作成します。
これもシステムを利用するため、正確な作業が可能。その後の会計処理や分析に役立ちます。
会計ソフトへの入力
売上伝票や入金データなどの情報にもとづき、会計ソフトへの入力を行います。
システム連携などにより入力を自動化し、転記ミスなども防げます。
支出・仕入れに関する業務

支出や仕入れに関する次のような業務も、アウトソーシングの業務範囲内です。
- 振込一覧表の作成
- 振込代行
- 給与振込代行
- 買掛金管理
- 在庫管理
- 立替経費精算・照合
振込一覧表の作成
支払期日が近づいた費用をリスト化し、振込をスムーズかつ正確にできるようにします。
振込代行
振込一覧表にもとづいて、銀行振込の手続きを代行します。
オンラインで手続きするため、時間の無駄や人的ミスも大幅に減らせます。
給与振込代行
給与計算データから振込データを作成、安全なネットワークを通じて振込代行を行います。
複数の金融機関への送金も、アウトソーシングすれば一括で処理。期日どおりかつ正確に振り込みます。
買掛金管理
仕入先からの請求書情報を一元管理して、支払期日や残高を把握します。
支払いの遅れやミスが防げ、信頼関係の維持につながります。
在庫管理サポート
仕入先の情報管理や在庫数のモニタリングから、過去データにもとづく在庫回転率の分析や需要予測といった、発注に関する情報提供などを行います。
過剰在庫や欠品をなくし、資金繰り悪化の防止につながります。
立替経費精算・照合
経費申請と領収書などを照合し、内容の整合性を確認した上で会計システムに入力、仕訳を行います。
内容の承認を受け、従業員の口座に立替金の振り込み手続きを行います。
資金に関する業務

資金に関しての、次のような業務も委託可能です。
- 預金管理
- 口座間資金移動
- 出納帳の作成
- 残高照会
- キャッシュフロー一覧表の作成
- 返済・回収計画書の作成
預金管理
銀行口座が複数あっても、入出金状況や残高を一元的に管理します。
インターネットバンキングを使いますが、多くは提供されたアクセス権限の範囲内で業務を行うため安心です。
口座間資金移動
複数の銀行口座間の資金移動を代行します。
もちろん、クライアントの指示や承認を必須とするため、代行業者が勝手にお金を動かすことはありません。
出納帳の作成
領収書や通帳明細などにもとづいて、現金や預金の収入・支出を出納帳に記録します。
作成した出納帳のデータは会計ソフトに入力され、いつ・どこからでもアクセス可能です。
残高照会
日次・月次など定期的に、または指示に応じて銀行口座の残高情報を確認し、報告します。
照会した残高の履歴は記録・管理し、推移を把握できるようにします。
キャッシュフロー一覧表の作成
現金収入と支出を一定期間ごと、取引の種類ごとに集計、営業・投資・財務の区分に整理し、キャッシュフロー一覧表を作ります。
区分ごとの現金の増減額や期間中の現金の増減額などで、資金繰りの状況を可視化します。
返済・回収計画書の作成
借入や貸付について、借入・貸付の条件をもとに、返済や回収の期日、元金・利息の金額、残高などを記載した返済計画書・回収計画書を作成します。
経理関連のコンサルティング

経理アウトソーシングでは、作業の代行だけでなく、次のような業務改善に関するコンサルも行っています。
- 業務改善
- 生産性向上
- 利益率アップ
- キャッシュフロー
- BPRによる業務フロー改善
アウトソーシングの契約前には、現状や課題についてのヒアリングが行われるのが一般的です。また、契約したら業務の引き継ぎを行います。
そこで判明する作業の無駄や非効率なプロセスを放置せず、業務の標準化や自動化など、より効率的で正確性を保てる経理体制の構築をサポートします。
代行スタート後には、さまざまな資料から収益構造の問題点や改善点、資金繰りの問題点などが見えてきます。体制や業務フロー、在庫管理や支払いなど各種の条件を見直し、最適化を支援します。
経理アウトソーシングでは請け負えないこと

経理アウトソーシングは、ある程度決まったルーティン作業に適しています。そのため、事業の核心的な部分や、専門知識や個別の判断が必要だったり、法的な制約があったりする業務は請け負えません。
たとえば次のような項目は業務の対象外となっています。
- 税理士など資格が必要な独占業務
- 現金を扱う業務
- 金融機関との折衝
- 投資などの資産運用
- 経理部門の予算や業績の管理
経理に関連する業務に、決算や納税などがあります。しかし、税務申告書の作成や税務相談、確定申告などは税理士が専門です。資格を持つ人だけができる「独占業務」のため、アウトソーシングでは受けられません。
ただ、経理アウトソーシング業者には、税理士法人が母体となっている、税理士と提携している会社も数多く存在します。その場合、必要部分は税理士が担当します。
また、経理アウトソーシングは主にインターネットバンキングを使って代行サービスを行っています。犯罪防止の観点からも、現金の受け渡しを伴う業務は委託できない業者がほとんどです。
戦略的な判断が必要な予算管理や業績管理、金融機関との折衝や投資などの資産運用についても、代行することはできません。
「マニュアル化できる仕事」でないと委託はできない、と考えるとわかりやすいでしょう。
こんな場合でも利用できる?アウトソーシングの一問一答
委託する業務は、企業や状況によっても異なる部分は多いです。ここでは、業務の範囲ではなく、状況に応じた委託の可否について、よくある疑問を解消していきましょう。
Q.繁忙期だけの委託でもいい?

→A.はい、大丈夫です
繁忙期だけスポット的にアウトソーシングする、というのはよくあるパターンです。たとえば決算期だけの利用や、事業のニーズが高まる時期だけの利用など。
ただし、繁忙期の場合は申し込み期限が定められているケースもあります。そのため、直前に委託しようとしても断られる恐れが。前もってスケジュールや業務範囲、料金などを詰めておくとよいでしょう。
Bricks&UKアウトソーシングでは、「月初の4営業日だけ人手がほしい」など、経理ならではの繁忙期にだけ利用することも可能です。
「1人雇うほどでもないけど、月初の繁忙期は手伝ってほしい」というお客様のニーズにお応えします。
Q.業務が紙ベースでも委託できる?

→A.はい、できます
領収書などの資料を郵送するなどして、紙ベースの作業を委託することも可能です。
ただ、業務の効率化にはペーパーレス化が必須であり、アウトソーシング会社ではシステムやソフトを使って業務を行います。そのため、クライアントにもITシステムの導入支援を行っています。
Bricks&UKアウトソーシングでは、引き継ぎ時の業務設計も得意としています。
紙ベースでも無理のない範囲でデータに落とし込みをしたり、郵送ベースでも仕事が回るようにしたりなど、ご相談しながら決めていきます。
紙ベースの仕事が多く、アウトソーシング会社に断られてきたという会社様も、ぜひBricks&UKアウトソーシングにご連絡ください。
Q.経理処理が特殊でも対応できる?

→A.代行業者によります
すべてのアウトソーシング業者が請け負えるわけではありませんが、対応できる業者も多く存在します。
たとえば、建設業の工事進行基準、不動産の会計管理など、一般的な会計処理ではないケース。もしくは、自社開発のシステムを使っているケースなどもあるでしょう。
この場合は、委託時にすり合わせをしておくことが必要です。また、多くの場合、追加料金がかかるなど、費用は割高になる傾向です。
Q.経理マニュアルがなくても委託できる?

→A.はい、できます
委託の際は、業務を自社の担当者から代行業者に引き継ぐ必要があります。マニュアルがあるとスムーズで早いですが、なくても代行可能な業者は複数あります。
ただしマニュアルがない場合は、業務の引き継ぎをより念入りにしておく必要があります。委託後、不明点が見つかるたびに確認などをしていては、業務が滞るなどのムダが生まれてしまいます。
アウトソーシングをしないとしても、マニュアルの作成は業務効率化につながるので、作っておくことをおすすめします。
Bricks&UKアウトソーシングでは、すべてのお客様・すべての業務に対し、マニュアルを作成します。
キー操作の1つ1つまでマニュアルに落とし込み、作業クオリティに個人差が出ることを防ぎます。
現在マニュアルのない会社様も、Bricks&UKアウトソーシングのオリジナルマニュアルを作成しますのでご安心ください。
Q.現行の会計ソフトはそのまま使える?
→A.業者によります
現在使っているソフトウェアをそのまま使えるかどうかは、委託する業者によって異なります。さまざまなソフトに対応する業者もいれば、指定するソフトの導入を必須とする業者もいます。
ただ、現行のソフトを使うためには、業者側が適応するための追加料金が必要となる可能性も。互換性についても確認しておきたいところです。
逆に、特殊かつインストール型など古いソフトを使っている場合は、手間やコストはかかっても最新の便利なクラウド型に変えた方がよい可能性も高いです。
Bricks&UKアウトソーシングでは、ほとんどの会計ソフトに対応可能です。
ただ、もしお客様にこだわりがなければ、業務内容を確認した上で、コスト面・操作面でよりお客様に合うソフトをご提案することもあります。
会計ソフトの導入をご検討されている会社様も、ぜひ一度ご相談ください。
知っておきたい!経理のアウトソーシングに潜むリスク

経理アウトソーシングは、便利なサービスではあるものの、利用の仕方や委託先の選択によっては、よい効果が得られないことも。実際、委託して失敗したというケースも少なくありません。
そのため、あらかじめ経理アウトソーシングのリスクについても知っておく必要があります。ここでは、4つのリスクについて見ていきましょう。
- コスト増加の可能性がある
- 物理的な距離による制約がある
- 内製化が難しくなる
- 質の高い業者ばかりではない
それぞれ解説します。
コスト増加の可能性がある
経理アウトソーシングは、人的コスト、採用コストなどの削減を目的に、多くの企業で活用されています。しかし、委託内容や社内の状況、業者との契約によって、結果的に高額な費用がかかる恐れがあるので注意が必要です。
たとえば、システム導入時の連携費用、取引数の増加に伴う料金の増加、イレギュラー対応への追加料金などによって、「パートを雇った方が安く済んだかも…」という事態になり得ます。
一般的にコストが高くなりやすいのは、「マニュアルに落としにくい」「イレギュラーが多い」業務です。
どんな仕事がコストパフォーマンス良く委託できるのかについては、ぜひ一度ご相談くださいませ。
物理的な距離による制約がある
業者とは主に電話やメールなどでやり取りするため、社内での対面のやり取りと比べて不便に感じることもあります。相手や案件によって、細かなニュアンスを伝えること、その場ですぐに解決させることなどは難しいかもしれません。
また、紙でのやり取りがある場合には、郵送によるタイムラグは避けられず、郵送中にトラブルが発生する可能性もゼロではありません。
内製化が難しくなる
特に経理業務をまるごとアウトソーシングした場合、社内の人材は経理業務の経験を積めません。
会計ソフトなどは常時アップデートされていき、法改正などによって経理のやり方も変化していきます。しかし、アウトソーシングに任せると、そのノウハウも自社には残りません。
そのため、さまざまな事情によりアウトソーシングをやめて内製化しようとする際には、経理経験者の雇用や、アウトソーシング業者からの引き継ぎ、適応するシステムの導入に苦労する可能性も高いです。
質の高い業者ばかりではない
アウトソーシング自体は、業務効率化やコストダウンに効果的で便利なサービスです。しかし、今や請け負う業者の数も多く、中には質が高いとは言えない業者も存在しています。
たとえば、知識や経験に乏しい担当者がいてスムーズに業務が進まない、連絡がなかなか取れない、なんてことも。
広告では他社より安い料金を提示していたのに、実際にはことごとく追加代金がかかって高くついたりするケースもあります。
従量課金制の業者の場合、一見すると安価に思えるかもしれません。しかし実際にいろいろと依頼をすると、全体のコストが跳ね上がるケースがあります。
見積もりの段階でどんな料金体系かを確認し、どこまでやってもらえるのかを明確にするなど、細かい打ち合わせが必要です。
経理アウトソーシング成功のための5つのポイント

上記のようなリスクを回避し、自社に合ったアウトソーシング業者に委託するにはどうすればいいか。それには次の5つのポイントを押さえておく必要があります。
- 自社のニーズを明確にする
- 委託する業務範囲を明確にする
- 業者は比較検討して選ぶ
- 委託後もコミュニケーションを欠かさない
- 定期的に効果測定を行う
それぞれ見ていきましょう。
自社のニーズを明確にする
まずは、経理をアウトソーシングする目的を明確にする必要があります。目的がはっきりしないと、効果がないのにダラダラと続けてしまうなど、結果として大きな損失となりかねません。
目的をはっきりさせることで、適切な業者を選ぶための基準ができ、失敗を防げます。
また、たとえば目的がコストの削減ならどの程度の削減を目指すのか、業務効率化ならどの程度の時間を短縮し、どの部分を効率化させたいのかなど、より具体的にしておくと効果が測りやすいでしょう。
委託する業務範囲を明確にする
どの業務をどこまでアウトソーシングするのか、その範囲も明確にしておくことが重要です。
業者がどこまでやってくれるか、細かい部分は業者によって異なります。そのため、たとえば「この業務に付随するこっちの業務も当然やってくれるだろう」と思っていると、範囲外で追加費用が必要となることも。
より悪いのは、認識のズレによって、委託したつもりの業務が放置されてしまうことです。
業者は比較検討して選ぶ
委託先選びも重要です。比較せず決めてしまうのはリスクが高いので、必ず2社以上から話を聞き、比較検討して選びましょう。
比較する際は、料金やサービスの範囲はもちろん、自社が委託したい業務や自社と同じ業界・業種の代行実績、業務知識があるかどうかも重要です。
具体的なセキュリティ対策のほか、問い合わせの際の担当者の対応、質問したときのレスポンスなどもチェックして比較してください。
委託後もコミュニケーションを欠かさない
アウトソーシングに丸投げする場合でも、投げっぱなしでなく、定期的もしくは頻繁にコミュニケーションを取ることが必要です。もし最初に認識のズレが生じた場合、それが長期間放置されることでトラブルに繋がります。
連絡もれのないようにする、資料提出などのルールを守るなどして業者と信頼関係を築けば、アウトソーシングの効果もより高くなるでしょう。
お客様と業者とのコミュニケーションは、非常に重要です。
Bricks&UKアウトソーシングでは、メールのほか「ChatWork」「LINE」「Slack」「Teams」など様々な連絡ツールに対応し、リアルタイムにコミュニケーションできるよう整備しています。
コミュニケーションにストレスがない業者を選ぶことも、ぜひ検討してみてください。
定期的に効果測定を行う
アウトソーシングへの委託後は、委託の目的が果たせているかどうかの効果測定をしましょう。コストは目標どおり削減できているか、時短を実現できているか、など。
さらに、生産性の変化やキャッシュフローの改善度合いも見ていく必要があります。
期待した効果が得られていない場合には、業務内容や連携方法などの見直し、場合によっては委託業者の変更を考える必要性も出てきます。
どこまで依頼できるかは委託前に要確認

経理アウトソーシングは、日々の記帳から資金繰りの管理まで、経理業務のほとんどを代行できるサービスです。とはいえ、現金を手渡すような業務や重要な判断が求められる業務は代行できません。
経理業務をアウトソーシングすることで、業務効率化やコストカットが図れますが、業者との間で委託範囲に認識のずれなどがあってはトラブルのもとです。必ず事前に確認し、自社のニーズに合った業者を選びましょう。
当社「Bricks&UKアウトソーシング」では、丁寧なヒアリングで貴社に最適なソリューションをご提案します。業務プロセス改善のコンサルティングも得意としていますので、ぜひご相談ください。