経理アウトソーシングのメリット・デメリットと委託先選びのポイント2024.11.06
経理をアウトソーシングすることで、本業に専念できたり人件費が削減できたりなどのメリットがあります。
しかし反面、デメリットとなる要素もあるため要注意。メリット・デメリットの両方を把握した上で利用しなくてはなりません。
今回は、経理アウトソーシングのメリット・デメリットと、委託先のアウトソーシング会社を選ぶポイントを紹介します。
デメリットの章では、デメリットを補うための対策もお伝えするので、ぜひ活用してください。
経理アウトソーシングのメリット
経理アウトソーシングを活用することには、次のように複数のメリットがあります。
- コア業務に専念できる
- 雇用関連の手間やコストが省ける
- 属人化やブラックボックス化が防げる
- 繁忙期・閑散期に振り回されない
- 法改正への適応などの苦労がなくなる
- 社内の人間による不正やミスがなくなる
- 高効率・高品質な業務が期待できる
それぞれ説明していきます。
コア業務に集中できる
経理アウトソーシングの最大のメリットは、コア業務に集中できることです。コア業務とは、企業に直接的に利益をもたらす業務、主となる業務を指します。
中小企業の場合、社長が本業のかたわらで経理を担当したり、他部門の社員が兼務したりするケースも少なくありません。しかしそれでは、本業にかける時間が減ってしまいます。経理の知識がなければ、負担はさらに大きいでしょう。
経理をアウトソーシングすれば、経費の精算や記帳などに時間を割くことなく、コア業務に集中できます。そうなれば業務効率が上がり、売上のアップなど生産性の向上にもつながります。
雇用関連の手間やコストが省ける
経理アウトソーシングに丸投げすれば、経理担当の社員を雇う必要がなくなり、雇用にかかる手間やコストも削減できます。
社員の雇用には、まず求人広告の費用や選考、面接、通知などに時間や手間を取られます。入社時には備品の整備、労働保険・社会保険の加入手続きも必須です。
教育にも費用がかかりますし、月々の給料に加えて有休、ボーナス、福利厚生など、社員にかかる会社の負担は小さくありません。経理担当には繁忙期の残業代もつきものです。
退職となれば、退職金の支払いや社会保険の脱退手続きといった手間やコストがかかります。定着しない場合、無駄にコストがかさんでしまいます。
属人化やブラックボックス化が防げる
経理アウトソーシングでは、経理専門の業者と情報共有して作業をしてもらいます。そのため、特定の担当者への属人化や、実体が見えないブラックボックス化が防げます。すでになっている場合も、アウトソーシングによって解消できます。
属人化やブラックボックス化している場合、当人にしかわからない、適切でないやり方をしている場合も多いのが問題です。
その点、アウトソーシング業者なら効率よく適切な方法で作業するため、将来的に内製化する際もスムーズに行くでしょう。
繁忙期・閑散期に振り回されない
経理には、繁忙期と閑散期があります。しかしアウトソーシングしてしまえばそれに振り回されることもありません。業者は経理専門なため、先を予測して作業ができるほか、業者によっては業務量に応じた依頼も可能です。
繁忙期には深夜までの残業や休日労働も発生しがち。割増手当が必要になります。一方、閑散期で時間を持て余す状態でも、勤務していれば給与の支払いは避けられません。
経理と本業を兼務、かつ繁忙期も重なれば、どちらも大変です。他部門の人員をヘルプに回すとしても、慣れない作業で混乱しかねません。
法改正への対応も適正にしてくれる
経理アウトソーシングで業務を外部委託すれば、法改正への対応も任せることができます。社内で対応が必要な場合も、何をすればいいのかの的確な情報が得られます。
電子帳簿保存法の改正やインボイス制度などが記憶に新しいですが、今後も時代に即した法改正や新たな制度の開始はいつされるかわかりません。
自社で経理業務を行う場合は、正確な情報を早めにキャッチして準備をしなくてはなりません。新たな制度は理解が難しいものも多く、かみ砕いた情報を得られるのは大きなメリットです。
社内での不正やミスがなくなる
経理のプロに業務を任せれば、自社の社員による不正や人的ミスも防ぐことができます。
社内では経験や知識の乏しい社員に任せざるを得ないケースも多いですが、数字にミスがあれば、正しい経営判断ができません。ミスでリアルタイムの数字が把握できずにいれば、重要なタイミングを逃す恐れも。
代行業者なら専門の人材ばかりなので、ミスも防げます。ブラックボックス化も防げるため、帳簿の改ざんや金銭の横領といった不正のリスクも抑えられます。
高効率・高品質な業務が期待できる
経理のアウトソーシングでは、複数の企業の経理業務を請け負っています。多くは経理を専門にしているため、ITなどを活用して効率化を高めています。
そのため、高い業務品質が期待できますし、効率の良い方法・流れで作業を進めてくれるはずです。
一部業務のみ委託する場合は、流れで改善すべき内容などをアドバイスしてもらえる可能性もあります。
経理アウトソーシングのデメリット
一方で、経理をアウトソーシングすると、次のようなことがデメリットとなり得ます。
- 代行業者への委託コストがかかる
- 当事者意識が薄れる恐れがある
- 経理や法令などのノウハウが蓄積しない
- 引き継ぎ作業が必要になる
- 経理処理にタイムラグが発生する恐れがある
- セキュリティ面でのリスクもある
これらのデメリットには、対処法もあります。それも踏まえた上で、メリットとデメリットを総合的に見て自社での必要性・有益性を判断してください。
代行業者への委託コストがかかる
経理アウトソーシングを活用すれば、社員を雇う分のコストが不要になるのがメリットです。しかし、外部業者への委託となるので、委託費用はどうしてもかかります。
一般的には、アウトソーシングは社員を雇うより低コストで済みますが、場合によってはアウトソーシングの方が高くつく可能性も。
基本は低料金でも、急ぎの場合などにオプション料金が発生し、結果として常に高額となるケースもあります。基本の契約内容と自社の業務を比較する、相見積もりを取る、契約対象を限定するなどして 費用を抑える必要があります。
当事者意識が薄れる恐れがある
経理業務を丸投げした場合、経理の作業については管理の必要がなくなります。本業に専念できるのはメリットですが、それだけでなく、経営判断に必要な数字まで見なくなる人がいるので要注意です。
アウトソーシングすることで、当事者意識が薄れてしまうと、本業に時間をかけることはできても経営に支障が出てきます。
委託するのはあくまで作業的な手間・コストであり、肝心な経営面まで手放しては逆効果です。数字は随時把握し、経営に役立ててください。
知識やノウハウが社内に蓄積されない
法改正や新たな制度への対応をする必要がないのは手間を省く面ではメリットです。しかし、そのノウハウやメソッドが社内に残らないのは、成長という面ではデメリットとなります。
法改正など必要な部分については、経理部門の人間でなくても知らないと困るでしょう。また、将来的に内製化に戻そうとしたとき、最新のノウハウを得るのに手間も時間もかかります。
対策としては、一部業務のみアウトソーシングする、情報共有が常に可能な業者に委託するなどが考えられます。
引き継ぎ作業が必要になる
アウトソーシングするためには、何らかの事業がない限りは代行業者への引継ぎが必要です。
社内で行っていた経理業務をすべて洗い出し、社外の人に伝えるわけですから簡単ではありません。手間も時間もかかります。
しかし、引き継ぎのために業務を棚卸しすることで、隠れていた問題が発覚して解決につながるなど、見えていなかった部分も見えてくる可能性があります。
アウトソーシングを依頼する前に棚卸しすれば、業務の効率化ができ、依頼の必要がなくなる可能性もあります。
タイムラグが生じる可能性がある
先方の都合などで、すぐ処理してほしい事項が発生することもあります。その場合、すぐに顔を見ながら話ができる社内とは違い、対応に少し遅れが出てしまう可能性も。
コミュニケーションが円滑な会社であれば、外部の業者とは意思疎通がしづらく感じるかもしれません。それまで自分がすべて把握していたのであれば、もどかしく思うこともあるでしょう。
スケジュールや状況、情報を共有するなど、普段から密に連絡が取れる業者にアウトソーシングするのが安心です。
社内でも、普段からできる限りイレギュラー対応せずに済むように業務をすすめる、部下であればそう指導する必要もあります。
セキュリティ面でのリスクもある
経理アウトソーシング業者は数多くあり、すべてが高品質で信頼できる業者かどうかはわかりません。そのため、セキュリティ意識の低い業者に頼んでしまうと、情報漏えいなどの大きなリスクにつながります。
契約する際には、業務範囲や料金、サポート体制に加え、セキュリティ面での対策・対応もしっかりと確認して決めなくてはなりません。
アウトソーシング業者選定のチェックポイント
経理アウトソーシングのメリットを最大限に活用するため、そしてデメリットを最小限にするためには、委託する代行業者の選定が重要です。
業者を選定する際は、必ず複数の業者から相見積もりを取ったうえで、次のような項目に注目して選びましょう。
- 同業種での実績はあるか
- 自社に必要なサービス・サポートを行ってくれるか
- 業務内容と料金のバランスは取れているか
- 連絡はしやすいか、レスポンスは早いか
- セキュリティ対策は万全か
それぞれ見ていきましょう。
実績はどれくらいあるか
経理と一口に言っても、業種によって異なる事情など特徴があります。そのため、まず確認しておきたいのは、自社と同じ業種での実績があるかどうか、ということです。
同じ業種での実績があれば、それをもとに効率の良い業務が期待できます。依頼時の引き継ぎも早く済むでしょう。
実績を聞く場合、「ある」という答えだけではごく短期間だけといった可能性も。期間や請け負った業務の範囲なども確認してください。
同じ業種での実績がない場合、補う方法やそれを超えるメリットがあるかどうかがポイントです。
自社に必要なサービス・サポートを行ってくれるか
業者によって、行うサービスの範囲やサポートの内容は少しずつ異なります。自社に合った業者を選ぶには、サービスの範囲、サポート内容を具体的に確認することも大切です。
特に、給与計算などで他の会社とは違ったやり方をする必要があったり、さまざまなパターンでの処理が必要だったりする場合は、料金が高額になったり、サポート対象外となったりするケースもあります。
業務内容に見合った料金かどうか
どの業務に料金がいくらかかるのか、業務範囲と費用とが釣り合っているかも確認すべきポイントです。しっかり確認しておかないと、自社の希望どおりの作業には複数のオプション料金を支払わねばならない、なんてことに。
基本料金が安い業者は、あれこれとオプション設定がされていたり、人数に応じた費用が別でかかったりしがちです。
しかし、料金が高ければすべて網羅されているかと言えば、そうでもないので注意が必要です。
連絡はしやすいか、レスポンスは早いか
アウトソーシングでは、その場ですぐ指示や確認ができないため、連絡の取りやすさ、レスポンスの早さも重要になってきます。
十分な人数のスタッフがいるはずなのに電話に出るのが遅かったり、問い合わせに対する回答が遅かったりするのは要注意。業者の対応が遅ければ、自社の動きも遅れます。相手のいることであれば、信頼低下にもつながりかねません。
同時に、問い合わせ時の対応で業者や担当者と相性がよさそうかも見ておくのがおすすめです。
セキュリティ対策は万全か
業者からの情報漏洩やデータの紛失のリスクはゼロではありません。セキュリティに関する意識と、実際にどのような対策を取っているのかも確認しましょう。
口頭で確認するのでもよいですが、アンケート形式の書面で自社のセキュリティガイドラインに基づく複数の質問をし、回答してもらうと比較がしやすいです。
データの暗号処理や利用・持ち出しの制限、監視カメラの設置、入退室時の記録方法などのほか、マルウェアなどサイバー攻撃への対策も確認します。
セキュリティの話が相手から出るようであれば、意識が高いものと考えられます。自社のセキュリティの甘さを指摘してくれるような業者であれば、より信頼できるでしょう。
実際に契約する際は、秘密保持契約を締結することも大切です。
経理アウトソーシングのメリットを活用しよう
自社の重要なデータを扱う経理業務をアウトソーシングすることには、効率化やコスト削減など複数のメリットがあります。しかし、デメリットとなる部分もあるので注意が必要です。
しかし、事前にデメリットを把握しておけば、対策を取ることも可能です。たとえばコスト増を防ぐには、相見積もりを取ったり、必要最小限の内容で委託したりすることで予防できます。
経理アウトソーシングを委託できる業者は数多くありますが、サービス内容や範囲、料金はそれぞれ異なるので、必ず比較して選んでください。
賢く選択して、業務の効率化とコストの削減、ひいては生産性の向上につなげていきましょう。
当社「Bricks&UK Outsourcing」は、これまでの実績により経理アウトソーシングが陥りがちな失敗や他社の状況を熟知したうえで、最大のメリットを享受できるようご支援します。
まずは一度、お気軽にご相談ください。