経理ソフト選びに失敗する原因は?自社に合ったツールで効率化しよう2025.12.25
「経理ソフトを使えば効率化できる」そう思って最新のソフトを導入したのに、「期待したような効果が得られない」、「自社の業務に合わず、使えない機能が多い」という声を最近よく耳にします。
経理ソフトと一口に言っても、機能などの異なるいくつもの種類があります。経理ソフトで業務効率化を成功させるには、自社に合ったソフト選びも重要なポイントです。
今回は、経理ソフト選びに失敗した事例から、その原因と影響、ソフトの導入で失敗しないための注意ポイントなどを解説します。
目次
経理ソフト選びの失敗事例~その原因と影響

まずは実際にあった失敗事例から、原因とそれによる影響を見ていきましょう。
「何がしたいのか」あいまいなまま導入した
A社は、ソフトウェア会社の営業マンに「業務が劇的に効率化しますよ!」と熱心に勧められ、ソフトの導入を決めました。しかし、効率化どころか、現場が混乱しただけだったと言います。
A社の失敗原因
業務効率化という大きな目的で、ソフトの導入を決めたA社の経理責任者。しかし、具体的に「業務のどの部分をどう改善したいか」、「どこを自動化すれば効率化になるか」などは考えていなかったと言います。これが失敗の一番の原因でしょう。
「経理のソフトなんてどれも同じだろう」という認識だったことも、1つの要因です。
営業マンに勧められるまま、「他の多くの会社が使っているソフト」を「他の会社が使っているのと同じように」取り込んでもらいました。
導入後の影響
経理の実務担当者には、「請求書の発行から入金管理までの突き合わせ作業をなくしたい」という希望があったようです。しかしそれは、導入したソフトではできないことがわかりました。
結局、Excelでの管理や手作業による転記作業が残り、ソフトの使用可能部分はごく一部。手間は大して変わらないのに、ソフトの利用料だけが発生するという事態となりました。
会社規模や状況に合わないものを選んだ

B社は、まだ法人化して間もない時期にソフトを導入しました。「どうせなら長く使えるいいものを」と、大手企業も使っているという高機能・多機能なソフトを選んだそうです。
しかし、「コストがかさんだだけで失敗だった」と社長は言います。
失敗原因
B社の場合は、いわゆる「オーバースペック」なソフトを選んだことが失敗の原因です。
B社には経理担当者は1人しかおらず、経理知識は簿記3級程度、ITリテラシーもほぼなかったとのこと。
そのソフトが得意としていた、部門別の詳細な予算管理機能や、複数の承認フローを設定できる機能などは、B社には不要だったのです。
導入後の影響
ハイスペックなソフトは、B社の経理担当者の手に追えるものではありませんでした。結局、基本的な入力作業でしか、そのソフトは使われていないとのこと。
しかも、その事実を知っていたのは経理担当者本人だけ。当人の退職が決まって引き継ぎするまで、会社は把握していませんでした。
効率化どころか、使わない機能に高額な料金を支払い続けていたとわかり、すぐ別のソフトに切り替えることに。再度のデータ移行や初期設定などで、さらなるコストや手間がかかったと言います。
法改正やサポート体制を気にせず選んだ

C社は、ソフトの機能と月額費用の安さで導入を決めました。機能面では満足していたそうですが、税制改正が行われ、そこで業務がストップ、混乱してしまったと言います。
失敗原因
C社の失敗は、機能と価格以外の部分、特に導入後のサポートや法改正時などの対応について確認していなかったことです。
費用対コストを重視し、機能とコストで選んだソフトでしたが、導入している企業は少なく、開発元も小さな会社でした。そのため、導入後のサポートや、法改正時などに必要となる改善・アップデートなどが行き届いていませんでした。
導入後の影響
導入後、業者から音沙汰がなくなったのも不満でしたが、ダメージが大きかったのは、税制改正への対応の遅れです。
C社は、法改正をニュースで知ったものの、どう対処すべきかなどの連絡もなく、取引先への対応に追われました。お叱りを受けた取引先もあったとのこと。
その後、「マネーフォーワード」など大手のソフトを使っている企業では、法改正前にちゃんと説明があり、自動でアップデートされるなどしてスムーズに対応できたことを知りました。完全に選択ミスだったと後悔しているそうです。
「クラウド」の特性を理解できていなかった
D社は、「これからはクラウドの時代だ」と聞き、売れているというクラウド会計ソフトを導入しました。あらゆることが自動化できると聞いて楽しみにしていたそう。
しかし、導入後も実質的な作業量はほとんど減っていないと言います。
失敗原因
D社の場合、導入を決めた社長が「クラウド」をよく理解していなかったことが大きな原因です。「柔軟な拡張性」「他システムとの連携が簡単」などのうたい文句で、「なんとなく便利で良さそうだ」と思ってしまった、とのこと。
しかも、知識がないにもかかわらず、「少しでもコストを抑えたい」と、サポートがないプランを選んでしまいました。
導入後の影響
クラウド会計ソフトの強みは、銀行口座との連携や、社内の販売管理や給与計算ソフトなどと自動でデータをやり取りできることです。しかし導入直後に試みるも、うまく連携できなかったそう。その一度で面倒になり、それまで通りの慣れたやり方に戻ってしまったと言います。
しかも同時期、連携させようと独自に購入した別のソフトも、連携できないタイプのものと判明。製品によって連携できるものとできないものがある、ということもその時知りました。
結局、二重三重のムダとなり、「コスト削減どころかずいぶん高くついてしまった」とのことでした。
いずれのケースも、ソフト自体に欠陥があるわけではありません。ソフトには、さまざまな機能の違いがあるほか、開発元によってサポート体制なども異なります。
それを知った上で、自社の課題解決やニーズを満たすソフトウェアを選ぶことが重要。ですが、それを無視してしまったケースに失敗が多いようです。
適切なソフト選びで得られる本来のメリット

経理のソフトウェアは、適切なものを選んで適切に使えば、次のような大きなメリットが得られます。
- 自動化による作業負担の軽減と、ミスの削減
- 資料作成のスピード化による正しい経営判断
それぞれについて説明します。
自動化による作業負担の軽減とミスの削減

経理ソフトを導入する目的は、これまで手作業でしていたことをソフトに自動でやってもらい、ムダをなくすこと。たとえば、次のようなことが実現できます。
| できること | 効果 |
|---|---|
| 仕訳作業の効率化 | ・連携データが過去の取引を覚え、自動で仕訳を提案・生成 ・仕訳作業が「入力作業」から「確認作業」に変化 |
| ペーパーレス化 | ・領収書や請求書をスキャンするだけでデータ化 ・原本保管やファイリング、書類探しの手間不要 |
| データの自動連携 | ・銀行やクレジットカードの取引データ、請求書発行ツールなど、さまざまなデータをソフトに自動取込 ・数字を二重で入力する手間や、転記ミスの撲滅 |
手作業が減ることで、入力や転記の「うっかりミス」も減ります。誰にでもできる単純作業に時間を取られることなく、本来時間をかけるべき「お金の動きのチェック」や、「次の事業計画準備」などに集中できるようになるでしょう。
資料作成のスピード化による正しい経営判断

手作業や手入力が多い状態では、試算表や経営状況などのデータ作成にも時間がかかります。過去の情報に基づいて判断せざるを得なかったり、戦略実行のタイミングを逃してしまったりする可能性も。
適切なソフトを選び、最適な方法でデータ連携することで、次のようなメリットが生まれます。
| できること | 効果 |
|---|---|
| リアルタイムな状況把握 | 月末を待たず、いつでも最新の売上状況や費用、資金繰りを確認 |
| 正確・迅速な資料作成 | ・必要なデータはソフト内に集約済 ・部門別・プロジェクト別の損益計算書、金融機関への提出資料など、あらゆる経営分析資料を短時間で正確に出力 |
適切なソフトの活用により、現状に合った正確な経営判断がスピーディーにできるようになります。ビジネスチャンスを逃したり、問題への対応が遅れたりするリスクを回避できます。
失敗しないソフト選び、守るべきポイントとは

経理ソフトの導入に失敗する原因の多くは、自社に合わないソフトを選んでしまうことにあります。
ソフト選びの際に守るべきポイントを押さえておきましょう。ポイントは5つです。
- まず目的を明確にする
- 機能とニーズが合致するかを確認する
- 使いやすさも重視する
- インストール型でなくクラウド型を選ぶ
- 導入後のサポート体制も確認する
まずは目的を明確にする

ソフトを探し始める前に、経理のどんな課題を解決するためにソフトを導入するのか、その目的をはっきりさせましょう。次の順に進めるのがおすすめです。
1)課題を洗い出す
現状で負担が大きく、時間がかかっている作業、ミスが多い作業、二度手間になっている作業など、経理業務で課題となっていることを洗い出します。
2)ゴールを決める
ソフトの導入で到達したいゴールを決めましょう。月末の請求書突き合わせ作業の時間を半減させる」「担当者以外でも経費精算できるようにする」など、具体的にするのがポイントです。
目的と機能が合致するかを確認する

目的(どの課題を解決するか)を明確にしたら、ソフト選びを開始。自社が必要とする機能があるかどうかを確認します。特に次の2つは必須の確認ポイントです。
自動化できる業務の範囲
勘定科目の記帳処理だけでなく、請求書発行、給与計算、勤怠管理など、関連する業務をどこまで自動化、自動で連携できるかを確認しましょう。
ソフトの柔軟性・カスタマイズ性
ソフトが持つ学習機能とカスタマイズ機能の確認も、重要なポイントです。
自社独自の仕訳や取引パターンをソフトが学習し、ミスの指摘や提案をしてくれれば、経理に慣れない人が代理で対応してもミスを防げます。
設定変更が簡単にできれば、法改正時などにもスピーディーに対応できます。
使いやすさも重視する

どんなに高機能なソフトでも、経理の実務担当者が使いこなせなければ宝の持ちぐされです。操作性は、実際の画面やメニューを見て、いちいち説明がなくても直感的に使えるかどうかを見てみましょう。
可能なら、本格的な導入前にデモ版を利用したり、無料トライアルを試したりしてみてください。
インストール型でなくクラウド型を選ぶ

今後導入するなら、従来のPCにインストールして使うタイプより、インターネット経由で使う「クラウド型」を選ぶのがおすすめです。
クラウド型なら、ネット上での利用なのでデバイスを選ばず、外からスマホでアクセスでき、担当者以外での共有も簡単です。アップデートなども自動で行われるため、常に最新の状態で使えます。
導入後のサポート体制も重視する
経理ソフトは、導入して終わりではありません。継続・安定運用には、導入後のサポートが充実していることも必須ポイントです。
操作方法の説明や、トラブル発生時の問い合わせ方法、法改正への対応能力や専門家との連携など、のちに必要となるであろうサポート体制の有無は必ず確認しておきましょう。
ソフト導入には組織の受け入れ体制も重要

経理ソフトは業務効率化の強力なツールですが、失敗も後を絶ちません。たとえば、次のような問題があれば、失敗の可能性はどの企業にもあるので注意が必要です。
- 経理担当者や他の社員のITリテラシーが低い
- 経理部門と他部署の軋轢が大きい
- 業務設計を構築する時間や人のリソースがない
順に解説します。
経理担当や他の社員のITリテラシーが低い

高性能な経理ソフトの機能を最大限に活かすには、扱う側のITリテラシーも不可欠です。導入の責任者となる人は、ソフトの機能や有効な使い方を十分に把握し、自社に最適なものを選ぶ必要があります。
実際に利用する人も、機能や設定を理解できなければ、かえって手間が増えたり、時間がかかったりしてしまいます。導入前にしっかりとレクチャーを受けるなどしなくてはなりません。
経理部門と他部署の軋轢が大きい
各種経理ソフトの導入は、経理部門だけの問題ではありません。そのため、他部署の理解と協力も必須です。
特に普段から営業部門と揉めがちな場合、「経理が勝手にソフトを導入した」と、反発を招く可能性があります。会社全体に必要なものとして事前に理解を求め、明確な社内ルールを設けるなどして体制を整えなくてはなりません。
業務設計を構築する時間や人のリソースがない

ソフトを有効活用するためには、業務設計・システム設計も必須です。しかし簡単なことではありません。
ソフトに合わせて業務を再構築し、ムダな手作業や非効率なチェック行程を廃止するなど、全体を俯瞰して効率化を主導する人が必要です。しかし、中小企業にはその立場を担う人材や、設計する時間がないことも多く、知識がない人に託されて失敗するケースも少なくありません。
まとめて解決するなら経理アウトソーシング

自社に合ったソフトを選び、ソフトが活かせる業務設計、組織体制にすることが必要とはいえ、それを自社で完結させるのは難しいのが現実です。
そこでおすすめしたいのが、まとめて専門家に外部委託することです。最短で最適な効率化が叶います。
ソフト選定も業務設計もプロにおまかせ

自社に知識やリソースがなくても、外部の専門家に託すことで失敗を防げます。経理アウトソーシング業者なら、導入するソフトの選定から初期設定、連携方法までサポート可能。
受託の実績が豊富なら、他社の失敗パターンを把握し、回避する提案をしてくれるはず。法改正時などの対応もスムーズで、自社では最低限の作業をすればよいだけです。
現状から最適解に導く個別のアドバイス
アウトソーシングの最大のメリットは、クライアントの実状に沿った具体的なアドバイスをもらえることです。自社のやり方に合ったソフトを紹介してくれるほか、業務を誰にでもできるよう標準化し、マニュアル化して遂行してくれるので、業務のムダもなくなります。
よい業者であれば、業務フローの改善から着実に行いますし、無理に高額なソフトをすすめるようなこともありません。
最適なソフトを導入して効率化しよう

経理ソフトの導入は、これからの時代に欠かせないだけでなく、会社の成長を左右する投資でもあります。コスト削減にこだわって失敗するよりも、専門家を活用して最適化することが、結果的には大きなムダの削減につながります。
ただし、アウトソーシングをどこに委託するかの選択も大きなポイントです。当社「Bricks&UKアウトソーシング」は、業務設計やコンサルティングも得意としており、クライアントそれぞれの課題解決のため、柔軟に対応いたします。小さなお悩みでも、ぜひ一度ご相談ください。

