経理ミスをなくす方法とは?「あるある」なミス、その原因と防止策2025.06.20

中小企業の経理は、限られた人数で多くの作業をこなすことが多く、常にケアレスミスなどのヒューマンエラーが起こりやすい状況にあります。
起業して間もない場合、コスト節約のため自ら慣れない経理業務を行うのが一般的ですが、ミスも多くなってしまいがち。
大きな経理ミスやミスの連続は、事業に支障をきたし、信頼の失墜などにつながります。そのため原因を正しく把握し、適切な対策を講じなくてはなりません。
この記事では、経理業務にありがちなミスやその原因、防止策を見ていきましょう。
こんなにある!経理のミスあるある
経理は会社の財政状況を正確に把握するための重要な業務です。
ただ、どれほど注意しても人間のやることにミスはつきもの。特に、人手が限られる中小企業や経理に不慣れな人にとっては次のようなミスがよくありがちです。
領収書など証憑書類の紛失

経費精算や取引の証拠として必要な、領収書や請求書、契約書などの証憑書類。大事なものだと理解しつつも、紛失してしまうことがあります。
ないと経費として認められない、取引の事実や内容が確認できないだけでなく、税務調査が入った際には指摘を受けるなどして問題となる可能性があります。
書類・データの記載ミス
手書きでもPC入力でも、記載ミスは発生します。日付や金額、取引先の名称など、一部のささいな書き間違いや入力誤りが、後で大きな問題となる可能性も。
請求書や契約書のように、相手がいる重要書類に記載ミスがあると、訂正・再作成などの手間をかけさせるだけでなく、信用問題にもなりかねません。
勘定科目の間違い

会計処理では、適切な勘定科目を選ぶことが重要です。しかし、どの勘定科目を使うべきか迷うことも多く、間違った科目を選んでしまうミスもありがちです。
たとえば「会議費」とすべきものを「交際費」として計上してしまった、もしくは逆にしてしまったなど。交際費は税金の額にも影響するので、注意が必要です。
借方・貸方の入力ミス
経理に不慣れな人には、仕訳の時に「借方」と「貸方」を逆にして入力してしまうミスも「あるある」です。
基本的なルールなので慣れればミスも減りますが、ここを間違えると、帳簿上の金額が合っていても、貸借対照表や損益計算書の数字が実態と違うものになってしまいます。
記入もれ・入力もれ
入金や支払い、経費の発生など、取引があったのに帳簿やExcel、会計ソフトなどに入れ忘れてしまう、というミスが起きることも少なくありません。
もれがあると残高が実際と合わなくなり、会社の資金状況を正確に把握できないだけでなく、決算期に気づいてやり直すなどの事態となってしまいます。
二重入力

同じ取引を会計ソフトに2回入力してしまったり、紙と会計ソフトの両方など、異なる帳簿にそれぞれ記帳してしまったりする二重入力も、よくあるミスです。
二重入力をしてしまうと、帳簿の残高が合わなくなるだけでなく、税務調査などの際、売上や経費を実際より多く見せる不正を疑われる恐れがあります。
桁数や単位の間違い
「10,000円」とすべきところを「1,000円」と書いてしまったり、「10,000万円」と入力してしまったりするミス。これもあり得ないようでよくあるミスの1つです。
桁数や単位は、1文字の間違いでも影響は大きく、場合によっては会社に大きな損害を与えます。
計算間違い・集計ミス
電卓での手計算や、Excelでの集計時にもミスは起こりがち。単純な足し算・引き算でも、複雑な計算式でも、間違えた経験のある人は多いでしょう。複数のデータの集計もれも「あるある」です。
しかし、計算間違いや集計ミスは試算表や決算書の数字に直結するため、経営判断を誤る原因にもなりかねません。
振込先・振込金額の間違い

取引先への支払いで、振込先を間違える、金額を間違えるなどのミスも、特に珍しいことではありません。
しかし、誤って振り込んでしまうと、組戻し手続きに手間や料金がかかります。それ以前に、取引先に迷惑をかけ、信頼を失う恐れも。関係が悪化すれば、経営の先行きをも左右しかねません。
売掛金・買掛金の残高不一致
未回収の売掛金や未払いの買掛金の残高が、取引先との間で一致しないことがあります。この原因は、請求書の発行ミスや、入金・支払の確認もれ、相殺処理の認識違いなどさまざまです。
残高の不一致は資金繰り予測に影響を与え、正しい計画を立てられなくしてしまいます。
在庫の計上もれ・数量間違い
商品を扱う場合、在庫の計上もれや数量の間違いも起こり得ます。棚卸しの際に数え間違えてしまったり、仕入れや販売時にデータ入力のミスがあったりすると、実際の在庫数と帳簿上の数字が合わない事態となってしまいます。
それでは会社の資産を正確に把握できず、販売機会の損失や、過剰な仕入れによる資金繰り悪化などを招きかねません。
消費税の計算ミス

消費税の計算は、軽減税率の適用や端数処理、仕入れ税額控除の適用など、とても複雑。そのためミスも多く発生しがちです。
しかしここでのミスは、消費税の申告漏れにもつながるリスクが。税務署から指摘を受け、追徴課税の対象となるなどの恐れがあります。
経理にミスが起きてしまう原因とは
経理業務で発生する「あるある」なミス、これらはなぜ起きるのでしょうか。もちろん、ヒューマンエラーは避けられない部分もありますが、原因は組織や業務体制にあることも多いため注意が必要です。
主な原因を挙げていきます。順に見ていきましょう。
属人化による知識・経験の偏り

特定の担当者にしかできない経理業務がある「属人化」の状態は、他の人からは業務内容が見えない「ブラックボックス化」にもなりがちです。
属人化やブラックボックス化は、担当者が自分のミスに気付きにくく、他人にも気づかれにくい状態です。
非効率な自己流の作業、必要な情報・知識の共有不足などにより、他人のミスを誘発するリスクもはらんでいます。
業務量の多さと時間的プレッシャー
経理部門には必要最小限の人員配置しかされていない企業が多く、1人あたりの業務範囲が広く、業務量も多くなりがちです。月末や月初、決算期などの締め日には、時間的なプレッシャーも大きくのしかかります。
そのため、普段ならしないような入力ミスや入力もれ、確認ミスなども起きてしまいがちです。
人員不足による疲労やモチベーションの低下

経理部門の場合、退職者が出ても人員が補充されないというケースも少なくありません。慢性的に人手が足りないと、各人の負担が大きい状態が長く続き、精神的ストレスや肉体的疲労も積み重なります。
それに加え、頑張りが評価されないなどして不満がたまれば、働くモチベ―ションも下がり、集中力や注意力が低下してミスを誘発することになります。
複雑もしくは不明確なルールや業務フロー
中小企業の経理には、しっかりしたマニュアルがないケースも多いもの。口頭だけで伝えられていたり、担当者任せになっていたりすることもよくあります。そのため、ルールが複雑だったり、誰に聞いてもよくわからない不明確な状態だったりします。
このような状況では、担当者が自己流の解釈で間違ったことをしたり、判断ミスをしたりすることも多くなります。
チェック体制の不備・形骸化
業務のチェック体制が整っておらず、各担当者任せになっている中小企業は少なくありません。また、体制は整えていても、実質的には多忙を理由に省略されていたり、形骸化していたり。
経理業務で起こる多くのミスは、ダブルチェックをしていれば防げるものが大半です。しかし確認が形式だけ、チェックリストがあっても使われていなければ、後々まで気づけない可能性が高いです。
紙ベースなどアナログな作業

紙の書類を扱うなど、アナログな作業を行っていることも、ミスを起こす原因となります。領収書や請求書への手入力、手書きの帳簿、電卓を使った計算などはすべて、ヒューマンエラーのリスクが高いです。
情報の転記ミスや見間違い、書類の紛失といったリスクがあるだけでなく、大量の書類を処理する手間や非効率な作業によるストレス、時間的なプレッシャーも相まって、さらにミスの可能性が高まります。
ITツール未導入または不活用
ヒューマンエラーの防止には、ITツールの活用が不可欠です。会計ソフトや経費精算システムを導入していないと、すべて手作業となり上項のとおりミスを誘発します。
導入はしていても、担当者が使いこなせていなかったり、システム連携をしていなかったり、自社に合ったツールでないものを導入してしまったりすれば、作業効率は上がらず、ミスも減らせません。
情報共有などコミュニケーション不足

情報共有がちゃんとされていない、経理部門と他部門との連携がうまく取れていない職場では、ミスが発生しやすくなります。経理精算のルールが伝わっていなかったり、特殊な扱いが必要なクライアントの情報が、経理の全員に届いていなかったりすると、計上漏れや仕訳誤りの原因に。
不明点があっても気軽に相談できない環境では、間違えたまま処理を進めてしまうリスクもあります。
経理のミスがもたらすリスクや損害
経理で実際にミスが起きてしまった場合、すぐに修正して問題なく終わるケースもありますが、そうでないケースもあります。些細なミスが、次のような損害やリスクを会社にもたらすことも理解しておきましょう。
会社としての信頼の失墜

請求書の金額間違いや、振込金額の間違い、買掛金や給与の振り込み遅延などは、取引先や従業員との信頼関係を損ねてしまいます。
お金にまつわるミスは企業の信用問題にも発展しやすく、ミスを繰り返せば致命傷に。失った信頼を取り戻すのは容易ではありません。
経営判断の誤り・ビジネス機会の喪失

経理の数値が不正確だと、経営層はその誤った情報に基づいて重要な判断をしてしまう恐れがあります。
たとえば、利益が実際より多く計上されていれば、過剰な投資をして資金繰りを悪化させてしまうことも。逆に少なく計上してしまうと、新規事業や設備投資に二の足を踏み、せっかくのビジネスチャンスを逃すことにもなりかねません。
税金の申告もれを引き起こすリスク

売上や経費の計上ミス、勘定科目の誤り、消費税の計算ミスなどは、税金の申告もれという重大なリスクに直結します。
消費税の計算間違いなどが積み重なれば、正しい納税額の計算ができず、申告内容に誤りが生じます。税務調査などで発覚すれば、加算税や延滞税などのペナルティが科されることも。余計な出費となるだけでなく、税務署からの信用も失いかねません。
組織全体で対策!経理のミスをなくす方法
経理のミスは、会社の経営や社内外からの信頼に大きな影響を与えるだけでなく、税務リスクもはらみます。個人の注意だけでは限界があるので、組織として対策を講じることが重要です。
経理ミスをなくす方法として、根本的かつ具体的な対策7つを紹介します。
業務プロセスの見直しとマニュアル化

経理のミスを防ぐには、まず業務プロセスの全体を見直す必要があります。業務の種類と担当者、方法などを洗い出し、可視化してみましょう。
その上で、あいまいな部分や、スムーズでない業務フローなどを修正します。その上で手順書やチェックリストなど、すべての業務を誰もができるようなマニュアルを作成、誰でも見られる状態にします。
複数人によるチェック体制の構築

ミスを早期に発見し、拡大を防ぐためには、複数人によるチェック体制の構築が不可欠です。たとえば、1人の担当者が入力・処理した内容を、別の担当者が必ず確認するダブルチェックは効果的です。
形式的なものではなく、チェックリストなどを活用し、具体的な項目・ミスをしやすい部分に特に注目して検証する習慣づけをすることが必要です。個人の見落としや判断ミスを組織全体でカバーしましょう。
会計ソフトやITツールの積極活用
会計ソフトや経費精算システム、請求書発行ツールなどのITツールで業務を自動化すれば、手作業による入力ミスや計算ミスがなくせます。
ミスがなくなるだけでなく、効率が高まり大幅な時間短縮が可能です。さらに、ミスを起こすことへのプレッシャー、時間や期日に追われるストレスのどちらも解消できます。
情報共有とナレッジの蓄積

会計処理の変更点や新たな取引、イレギュラーケースなど、必要な情報が関係者に確実に伝わるしくみを作りましょう。ミスをなくすには、担当者間や部署間でのスムーズな情報共有が欠かせません。
また、各個人の経験や知識を「組織のナレッジ」として蓄積することも大切です。属人化を解消し、業務マニュアルで標準化したら、過去のミス事例や対応策、よくある疑問とその回答などをデータベース化するのも効果的です。
個人のスキルアップの支援

知識や経験不足によるミスをなくすには、個人のスキルレベルを上げるほかありません。本人と会社、双方のために支援をすべきでしょう。
たとえば、資格取得の支援制度を作ったり、社外で行われる研修会に参加させたり。
社内ではメンター制度の整備や勉強会の開催などを行うことで、コミュニケーションの円滑化によるミスの減少も期待できます。
適正な人員配置と業務量の調整
経理部門に適正な人員を配置し、業務量を調整することも、ミスをなくすことにつながります。コスト節約のため最小限の人員で回しても、ミスで損害が発生すれば本末転倒です。
業務量は、スキルや経験で振り分けると、仕事ができる人に集中しがちです。しかし疲労やストレスの蓄積、集中力やモチベーションの低下にならない程度に調整しなくては、優秀な人材の離職にもつながりかねません。
経理アウトソーシングの検討

自社内での改善が難しい場合、経理業務を一部またはまるごと業務委託する「経理アウトソーシング」も1つの方法です。代行業者は経理を専門に請け負っており、ヒューマンエラーのリスクは大幅に減らせます。法改正などへの対応もスムーズです。
たとえば日々の記帳や経費精算、給与計算といった提携業務を専門業者に委託します。そうすれば、社内の経理担当者は、より専門性の高い業務や、資金繰りなど戦略的な判断を必要とする業務に集中できます。
ミスの防止は個人ではなく組織での対応を

経理のミスは、多くの場合、さまざまな原因がいくつか重なって起こります。そのため、個人の努力だけでは限界が。
業務の見直しやITの活用、情報共有など体制の見直し、チェック体制の強化など、組織全体での対策が不可欠です。
自社での改善が難しいのであれば、専門家の力を借りるのが得策です。ぜひ当社「Bricks&UKアウトソーシング」にご相談ください。