記帳代行とは?依頼できる内容や相手、メリット・デメリットを解説2025.03.06

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「税理士法人Bricks&UK」 税務コンサルタント
会計・税務に関する高い専門知識で、株式会社Bricks&UK Outsourcingの
経理代行・アウトソーシングサービスをバックアップしています。
帳簿への記帳には、知識や経験がなければ多くの時間を要します。事業で多忙な中、面倒にすら感じる人も多いでしょう。
しかし、細かなお金の出入りは日々発生し続けます。後回しにすると、後々になってさらに大きな手間がかかります。
そこで活用したいのが、「記帳代行」のサービスです。今回は、記帳代行サービスとはどんなものか、どこに委託できるのかなどを紹介。よくある疑問への回答や、メリット・デメリットも解説します。
目次
記帳代行サービスと記帳代行に委託できる業務

まずは記帳代行についての基本を押さえておきましょう。
「記帳代行」とは
記帳代行とは、企業や個人事業主に義務付けられている「記帳」の作業を、外部の業者が代行すること。利用者側から言うと、業務効率化などの手段に使われるアウトソーシングの1つです。
必要な資料を代行業者に送ると、代行業者が記帳を行います。そして、記帳したデータをもとに作成された各種の帳票が、代行業者から送られてきます。
そもそも「記帳」とは?
「記帳」とは、日々の売上や経費など、事業で発生したお金のやり取り(取引)を帳簿に記録することです。
帳簿の作成は、所得税や法人税の申告に必要となるもの。記帳と帳簿の保存は、すべての企業・個人事業主に義務付けられています。
記帳の意義と重要性
正確な記帳は、正しい原価の管理やコストの削減につながるため、経営の改善や企業の成長に必要不可欠です。
また、自社の経営状況を金融機関など社外の第三者に正しく伝えるためにも、正しい記帳は必須です。
記帳の方法
記帳には、主に次の3つの方法があります。
- 紙の帳簿に手書きする
- 会計ソフトに入力する
- 記帳代行を依頼する
以前は、紙の帳簿に手書きし、紙で保存するしかありませんでした。
しかし現在では、「弥生会計オンライン」「freee会計」など市販の会計ソフトを利用することで、記帳の作業がかなり楽になっています。経費精算システムなどと連携し、より便利に使うことも可能です。
さらに、記帳を外部の代行業者に委託できる記帳代行のサービスも注目されています。
記帳代行へのニーズが高まった背景
記帳は、もともと商法第19条に規定されている、商人(企業や個人事業主)の義務です。
しかし記帳代行は比較的新しいサービスであり、ニーズは年々上昇中。その背景には、社会的な変化があります。
2014年になるまで、所得税の申告においては「白色申告なら」という条件付きで、記帳と帳簿の保存義務は免除されていました。
しかし2014年1月、白色申告にも記帳と帳簿の保存が義務化されます。さらに、次のような法律・制度の変化も起きています。
- 2016年 マイナンバー制度の導入
- 2019年 消費税率引き上げ、軽減税率制度の開始
- 2023年 インボイス制度の開始
- 2024年 電子帳簿保存法によるデータ保存の完全義務化
こういった変化により、正確な記帳がより重要となる一方、記帳も複雑化。十分な専門知識がない人にとって、記帳はより困難なものとなっています。
マイナンバー制度の狙いの1つは、公平・公正な税金の負担です。収入を正しく把握することで、所得隠しや脱税を防ぐ狙いがあります。
委託できる業務

記帳代行で依頼できるのは、主に次の2つの作業です。
- 会計ソフトへの入力
- 各種帳票の作成
代行業者はまず、送られてきた通帳のコピーや領収書などの資料をもとに、勘定科目の仕訳を行い、会計ソフトに入力します。
入力したデータをもとに、各種の帳簿を作成します。
どの帳簿を作成するかなど、代行業務の範囲は業者によって異なります。一般的に含まれるのは次の帳簿です。
- 仕訳日記帳
- 試算表
- 総勘定元帳
サービス内容・範囲は、契約前に必ず確認することが重要です。
代行業者によっては、仕訳帳や現金出納帳、預金出納帳などを自社で作成して送る必要があるケースもあります。
記帳代行サービスの主な依頼先

記帳代行は、次のような相手に依頼することができます。
- 税理士・会計事務所
- 行政書士・行政書士事務所
- 記帳代行・経理代行サービス会社
- フリーランス経理
それぞれの違いについて説明します。
税理士・会計事務所
税理士は税金の専門家です。法人税法・所得税法で定められた記帳についても詳しく、最も信頼のおける委託先と言えます。
税理士であれば、上記で紹介した帳票のほか、決算書や確定申告書の作成も可能です。
税務申告や年末調整なども依頼できますし、補助金申請や経営コンサルティング、資金調達のサポートが可能なところも多いです。
行政書士・行政書士事務所
行政書士は、官公庁に提出する書類作成の専門家です。各種の法令に詳しく、信頼がおけます。
行政書士には、記帳代行のほか、助成金(雇用関連の助成金を除く)や補助金申請の書類作成・申請代行も依頼可能です。中には経営コンサルティングをしてくれるところもあります。
記帳代行・経理代行サービス業者
記帳代行や経理代行を専門に請け負う業者もあります。記帳や経理を専門に行っているため、最新技術やノウハウの蓄積による正確かつ効率の高い作業が期待できます。
こういった代行業者には、税理士と提携して業務を行うケースも数多く見られます。
税理士と提携している場合のみ、決算や税務申告、年末調整なども依頼可能です。
フリーランス経理

「フリーランス経理」とは、個人で記帳代行を請け負っている人を指します。企業での経理経験がある人や、税理士や行政書士の資格を持つ人などが退職して独立、あるいは副業などで業務を行っています。
信頼できる知人や紹介などのほか、インターネット上の「ランサーズ」などのクラウドソーシングサービス、あるいは「ココナラ」などのスキルマーケットで簡単に探せます。これらのサービスを利用すると、比較的安価で依頼できる場合もあります。
ただし、クラウドソーシングサービスでの取引にはリスクもあります。契約書の締結など、手続きはしっかりしておきましょう。
クラウドソーシングサービスのリスクには、たとえば病気などにより業務が突然できなくなったり、連絡が取れなくなったりすることが挙げられます。オンライン上で能力を推し量ることも難しく、作業品質が劣る人に当たる恐れも。
セキュリティの面でも、信頼できる相手かどうかの判断が難しく、対策も企業のようにはいかない可能性が高いです。
記帳代行サービスの料金相場
気になる料金については、委託先の種類や委託する業務の範囲、取引件数などによって大きく異なります。
ただ、仕訳数に比例して高くなるというのはどの委託先でもほぼ共通しています。委託先ごとの相場を見ていきましょう。
税理士・会計事務所
税理士・会計事務所に記帳代行を依頼する場合、顧問契約を結ぶのが一般的です。
そのため顧問契約を含めた料金相場となっており、個人事業主は月額3万円~、法人は4万円~などと高めです。
行政書士・行政書士事務所
行政書士・行政書士事務所の場合、月間200仕訳までは15,000円、それ以上は「別途見積もり」としている業者が多くなっています。
また、会社設立手続きなどを合わせて申し込むことで安くなる傾向もあります。
記帳代行・経理代行サービス業者
記帳代行・経理代行サービス業者に記帳代行を委託する場合は、100仕訳で月6,000円~1万円、200仕訳で月2万円ほどが相場です。
料金体系は、「月額制」で定額の場合もあれば、「従量課金制」で仕訳数などに比例して高くなる場合もあります。
多くの場合、たとえば請求書や納品書などの証憑整理も含むと追加料金が必要となるなど、細かい料金設定がされています。
フリーランス経理
フリーランスの場合、人脈つながりで請け負うケースと、「ランサーズ」「クラウドワークス」などのクラウドソーシング経由で請け負うケースとでは料金も大きく異なります。
安くできる可能性が高いのは、クラウドソーシングを使ったサービス。時間給にして1時間2,000円~3,000円が相場となっています。
どの委託先も、料金設定は各社・各個人でさまざまです。サービス内容なども総合的に見て選ぶことが重要です。
記帳代行サービスのよくある疑問
記帳代行サービスに不安や不信感を持つ人もいるかもしれません。よくある疑問もここで解消しておきましょう。
記帳の代行は税理士法違反では?

記帳の代行は、法で定める「税理士業務」、いわゆる独占業務ではありません。「記帳」そのものに資格は不要なため、誰でも行えます。
ただし、決算書や確定申告書など、税務署に提出する書類(税務書類)の作成は、税理士にしかできません。他の業者がそれらを請け負っている場合、税理士と提携しているかどうかがポイントとなります。
また、税理士に対しては、法に定める「税理士業務」(税務代理・税務相談・税務書類の作成)を行わず、記帳代行だけを請け負うのは税理士法違反では?という疑問もあるようです。
しかし、定款に定めてあれば、記帳代行だけを行うことも可能です。
参考:国税庁公式サイト|税理士の業務(参照2024‐11‐06)
https://www.nta.go.jp/taxes/zeirishi/zeirishiseido/qa/02.htm
記帳代行と経理代行の違いは?

記帳代行は、経理代行のサービスの1つです。経理代行サービスには、記帳のほか次のようなことが依頼できます。
- 売掛金・買掛金の管理
- 請求書発行
- 支払・振込の代行
- 経費精算
税理士と提携している場合は、これに加えて年末調整や決算申告にかかる業務も委託できます。
記帳代行サービスを利用するメリット

記帳代行サービスに依頼することで得られるメリットには、次のようなことが挙げられます。
手間や時間を省いて効率化できる
記帳代行の最大のメリットは、記帳作業にかかる手間と時間が省けることです。それによって、業務の効率化が図れます。
特に中小企業や個人事業主など、本業の他に記帳作業もこなさねばならず、人手が足りない状況では、記帳代行に依頼することで負担を大幅に減らせます。
正確・スピーディーな処理ができる
代行業者に依頼すれば、記帳経験や専門知識のあるプロに作業を任せられます。そのため、より正確でスピーディーな処理が可能です。
自社で記帳を行う場合、知識と経験のある人がいなければ正確な記帳ができず、調べながらでは時間がかかります。正確でない記帳は、経営上も大きなリスクとなりかねません。
コストダウンにつながる
記帳代行サービスの利用により、人件費も大幅に抑えることができます。人を雇うとなれば月に20万円以上の費用がかかるのが一般的ですが、記帳代行なら月に数千円~数万円で委託が可能です。
記帳に時間がかかり残業が発生している場合も、割増賃金などを払うのに比べてコスト減となる可能性があります。
社内での不正を防止できる
外部の業者に委託すれば、社内での属人化やブラックボックス化が解消できます。業務の透明性が高まれば、社員による不正の防止にもつながります。
経理担当者など社員によるデータの改ざんや情報漏洩、横領といった不正のニュースも聞かれます。社員1人に任せきりにするよりは、外部の専門業者に任せる方がセキュリティ面でもメリットとなり得ます。
記帳代行サービスを利用するデメリット

メリットがある反面、次のようなことがデメリットとなり得ます。
社内に知識やノウハウが蓄積しない
記帳を社内でする必要がなくなれば、楽にはなりますが、知識を学んだり経験を積んだりすることはできません。
アウトソーシングすることによって、教育や社としてのノウハウ、キャリアといった面で成長の機会をなくすことになります。
かえってコスト増になることもある
人を雇うよりコストダウンになるのがメリットであるものの、利用の仕方や委託先業者のプラン設定によっては、追加代金などがかさんでコストが高くなる場合も。
基本の料金プランの業務範囲に自社の必要とする作業が含まれているか、サポート対象外となっていないかなどを確認することが必要です。
処理などにタイムラグが発生する
代行業者には、通帳のコピーや領収書などの資料を送る必要があります。郵送する場合は日数がかかり、その後の帳簿完成までにさらなる時間がかかります。
オンタイムにすべてが把握できないことは、ストレスになり得ます。また、場合によっては経営判断に影響を及ぼすこともあるので、密に連絡がとれる体制にしてもらうなどの工夫が必要です。
業務やセキュリティの質は業者次第
記帳代行の委託先は数多く見つかります。しかし、業務範囲や料金だけでなく、業者や社員の質などもさまざまです。
セキュリティに関しても、すべての代行業者が万全な対策を取っているとは限らないので注意が必要です。
また、記帳代行だけのアウトソーシングでは、業務効率化やコスト削減が最大限に実現できるわけではありません。経理業務そのものが不要になるわけではなく、引き続き人員や時間を割く必要はあるからです。
経理代行サービスを使って、記帳だけでなく、経理業務を丸投げする方法もあります。状況に合わせて賢く利用しましょう。
記帳代行サービスの選び方
自社に合った記帳代行サービス、信頼できる記帳代行サービスは、次のポイントに注意して選びましょう。
- 実績(クライアント数や年数、業界)
- 料金体系(追加料金の有無など)
- 対応しているソフトウェア
- セキュリティ対策
- コミュニケーション、レスポンス
それぞれ説明します。
実績(クライアント数や年数、業界)
記帳代行サービスは、資格や登録などの必要なく開業可能です。そのため、信頼性を測る方法として最もわかりやすいのはこれまでの実績です。
どれくらいの実績があるのか、数や年数などのほか、自社と同じ業界・業種での実績があるかも確認しておきたいところ。業界特有の事情を知っていた方が、ミスなくスムーズに委託できます。
料金体系(追加料金の有無など)
多くの場合、業者のホームページを見れば、料金表が掲載されています。しかし、場合に応じた追加料金がかかるケースが多いことに注意が必要です。
自社の状況に必要なサービスは何かを明確にし、それに追加料金が必要でないかも確認した上で料金を比較してください。
対応しているソフトウェア
現在使っている会計ソフトがそのまま使えるのか、変更が必要かによっても、利便性や費用が大きく違ってきます。
ただ、現在インストール型のソフトを使っているなら、不正防止や法改正への適応などのため、クラウド型に移行するのがおすすめです。
適切なアドバイスをくれる業者を選ぶのも1つの方法です。
セキュリティ対策
記帳には多くの機密情報が含まれています。セキュリティ対策が万全な業者を選ばなくては、大きな損害を被りかねません。
セキュリティ対策をしているかどうか、ではなく、具体的にどんなセキュリティ対策を取っているかを確認することをおすすめします。
コミュニケーション、レスポンス
自社に対する業者の姿勢や、自社との相性なども大事なポイントです。相談や問い合わせの時点から、コミュニケーションが取りやすいかどうか、質問などへのレスポンスが早いかを見ておきましょう。
できれば、委託後に担当予定のスタッフも紹介してもらっておくと安心です。
記帳代行サービスを活用して効率化を図ろう

事業を営む上で欠かせない記帳ですが、苦労して自社で完結させなくても、記帳代行サービスに依頼することで業務の効率化やコストの削減が実現できます。
委託先業者によって請け負う業務範囲や料金が異なるため、どの業者を選ぶかが重要です。見積もりを取ったり、代行業者のオフィスを見学させてもらうなどして、自社のニーズに合った信頼できる代行業者を選びましょう。
当社「Bricks&UKアウトソーシング」では、経理代行サービスを引き継ぎなしでも、一部でも丸投げでも請け負うことができます。母体である税理士法人との提携により、業務改善のサポートも行い、たくさんのクライアントから高く評価いただいています。
ぜひお気軽にお問い合わせください。