記帳代行とは?依頼できる内容や相手、メリット・デメリットを解説2024.11.15
「記帳」とは、日々の売上や経費など、事業で発生したお金のやり取りを帳簿に記録すること。所得税法で、すべての企業・個人事業主に義務付けられているものです。
しかし、人手不足の会社や個人事業主などの場合、本業で多忙な中、どんどん発生する細かなお金の出入りを帳簿に記帳していく作業は、手間でもあり、時間を取られますよね。とはいえ、後回しにすると後が大変です。
そこで活用したいのが、「記帳代行」のサービスです。今回は、記帳代行サービスとはどんなものか、どこに委託できるのかなどを紹介。よくある疑問への回答や、メリット・デメリットも解説します。
目次
記帳代行サービスと記帳代行に委託できる業務
まずは記帳代行についての基本を押さえておきましょう。
「記帳代行」とは
記帳代行とは、企業や個人事業主に義務付けられている「記帳」の作業を、外部の業者が代行すること。利用者側から言うと、業務効率化などの手段に使われるアウトソーシングの1つです。
必要な資料を代行業者に送ると、代行業者が記帳を行います。そして、記帳したデータをもとに作成された各種の帳票が、代行業者から送られてきます。
委託できる業務
記帳代行で依頼できるのは、主に次の2つの作業です。
- 会計ソフトへの入力
- 各種帳票の作成
代行業者はまず、送られてきた通帳のコピーや領収書などの資料をもとに、勘定科目の仕訳を行い、会計ソフトに入力します。
入力したデータをもとに、各種の帳簿を作成します。
どの帳簿を作成するかは業者によって異なりますが、おおむね次のようなものです。
- 現金出納帳
- 預金出納帳
- 売掛帳・買掛帳
- 仕訳日記帳
- 試算表
- 総勘定元帳
ただし、サービスの内容・範囲は、契約前に必ず確認してください。
代行業者によっては、仕訳帳や現金出納帳、預金出納帳などは自社で作成して送る必要があるケースもあります。
記帳代行サービスの主な依頼先
記帳代行は、次のような相手に依頼することができます。
- 税理士・会計事務所
- 行政書士・行政書士事務所
- 記帳代行・経理代行サービス会社
- フリーランス経理
それぞれの違いについて説明します。
税理士・会計事務所
税理士は税金の専門家です。所得税法で定められた記帳についても詳しく、最も信頼のおける委託先と言えます。
税理士であれば、上記で紹介した帳票のほか、決算書や確定申告書の作成も可能です。
税務申告や年末調整なども依頼できますし、補助金申請や経営コンサルティング、資金調達のサポートが可能なところも多いです。
行政書士・行政書士事務所
行政書士は、官公庁に提出する書類作成の専門家です。各種の法令に詳しく、信頼がおけます。
行政書士には、記帳代行のほか、助成金(雇用関連の助成金を除く)や補助金申請の書類作成・申請代行も依頼可能です。中には経営コンサルティングをしてくれるところもあります。
記帳代行・経理代行サービス業者
記帳代行や経理代行を専門に請け負う業者もあります。記帳や経理を専門に行っているため、最新技術やノウハウの蓄積による正確かつ効率の高い作業が期待できます。
こういった代行業者には、税理士と提携して業務を行うケースも数多く見られます。
税理士と提携している場合のみ、決算や税務申告、年末調整なども依頼可能です。
フリーランス経理
「フリーランス経理」とは、個人で記帳代行を請け負っている人を指します。企業での経理経験がある人や、税理士や行政書士の資格を持つ人などが退職して独立、あるいは副業などで業務を行っています。
信頼できる知人や紹介などのほか、インターネット上の「ランサーズ」などのクラウドソーシングサービス、あるいは「ココナラ」などのスキルマーケットで簡単に探すことができます。安価で依頼できる可能性も高いです。
ただし、クラウドソーシングサービスでの取引にはリスクもあります。契約書の締結など、手続きはしっかりしておきましょう。
クラウドソーシングサービスのリスクには、たとえば病気などにより業務が突然できなくなったり、連絡が取れなくなったりすることが挙げられます。オンライン上で能力を推し量ることも難しく、作業品質が劣る人に当たる恐れも。
セキュリティの面でも、信頼できる相手かどうかの判断が難しく、対策も企業のようにはいかない可能性が高いです。
記帳代行サービスのよくある疑問
記帳代行サービスに不安や不信感を持つ人もいるかもしれません。よくある疑問もここで解消しておきましょう。
記帳の代行は税理士法違反では?
記帳の代行は、法で定める「税理士業務」、いわゆる独占業務ではありません。「記帳」そのものに資格は不要なため、誰でも行えます。
ただし、決算書や確定申告書など、税務署に提出する書類(税務書類)の作成は、税理士にしかできません。他の業者がそれらを請け負っている場合、税理士と提携しているかどうかがポイントとなります。
また、税理士に対しては、法に定める「税理士業務」(税務代理・税務相談・税務書類の作成)を行わず、記帳代行だけを請け負うのは税理士法違反では?という疑問もあるようです。
しかし、定款に定めてあれば、記帳代行だけを行うことも可能です。
参考:国税庁公式サイト|税理士の業務(参照2024‐11‐06)
https://www.nta.go.jp/taxes/zeirishi/zeirishiseido/qa/02.htm
記帳代行と経理代行の違いは?
記帳代行は、経理代行のサービスの1つです。経理代行サービスには、記帳のほか次のようなことが依頼できます。
- 売掛金・買掛金の管理
- 請求書発行
- 支払・振込の代行
- 経費精算
税理士と提携している場合は、これに加えて年末調整や決算申告にかかる業務も委託できます。
記帳代行サービスを利用するメリット
記帳代行サービスに依頼することで得られるメリットには、次のようなことが挙げられます。
手間や時間を省いて効率化できる
記帳代行の最大のメリットは、記帳にかかる手間と時間が省け、それによって業務の効率化ができることです。
特に中小企業や個人事業主など、本業のかたわらで記帳作業も行わねばならない、人手が足りないような場合には、記帳代行に依頼することで負担が大きく減らせます。
正確・スピーディーな処理ができる
代行業者なら、記帳の経験や正しい知識を持った人に作業をしてもらえます。そのため、より正確でスピーディーな処理が可能です。
自社で行う場合、知識と経験のある人がいなければ正確な記帳ができず、調べながらでは時間がかかります。正確でない記帳は、経営にも大きなリスクになりかねません。
コストダウンにつながる
記帳代行サービスを利用すれば、人件費を抑えることができます。人を雇うとなれば月に20万円以上の費用がかかりますが、記帳代行なら月に数千円~数万円で委託が可能です。
記帳に時間がかかり残業が発生している場合も、割増賃金などと比べて安く済む可能性があります。
社内での不正を防止できる
外部の業者に委託すれば、社内での属人化やブラックボックス化が解消でき、社員による不正の防止につながります。
経理担当者など社員によるデータの改ざんや情報漏洩、横領といった不正のニュースも聞かれます。1人に任せきりにするよりは、セキュリティ面でもアウトソーシングがメリットとなり得ます。
記帳代行サービスを利用するデメリット
メリットがある反面、次のようなことがデメリットとなり得ます。
社内に知識やノウハウが蓄積しない
記帳を社内でする必要がなくなれば、楽にはなりますが、知識を学んだり経験を積んだりすることはできません。
外注することによって、教育や社としてのノウハウ、キャリアといった面で成長の機会をなくすことになります。
かえってコスト増になることもある
人を雇うよりコストダウンになるのがメリットであるものの、利用の仕方や委託先業者のプラン設定によっては、追加代金などがかさんでコストが高くなる場合も。
基本の料金プランの業務範囲に自社の必要とする作業が含まれているか、サポート対象外となっていないかなどを確認することが必要です。
処理などにタイムラグが発生する
代行業者には、通帳のコピーや領収書などの資料を送る必要があります。郵送する場合は日数がかかるほか、帳簿もすぐにできるわけではありません。
オンタイムにすべてが把握できないことは、ストレスになり得ます。また、場合によっては経営判断に影響を及ぼすこともあるので、密に連絡がとれる体制にしてもらうなどの工夫が必要です。
業務やセキュリティの質は業者次第
記帳代行の委託先は数多く見つかります。しかし、業務範囲や料金だけでなく、業者や社員の質などもさまざまです。セキュリティに関しても、すべての代行業者が万全な対策を取っているとは限りません。
自社のニーズに合った最適な業者、信頼できる業者を探すには、複数の業者から相見積もりを取ったり、可能ならオフィスを訪問したりして見極めることをおすすめします。
また、記帳代行だけのアウトソーシングでは、業務効率化やコストダウンのメリットが最大限に享受できるわけではありません。経理業務が不要になるわけではなく、人員や時間を割く必要はあるからです。
経理代行サービスを使って、記帳だけでなく、経理業務を丸投げする方法もあります。状況に合わせて賢く利用しましょう。
記帳代行サービスを活用して効率化を図ろう
事業を営む上で欠かせない記帳ですが、苦労して自社で完結させなくても、記帳代行サービスに依頼することで業務の効率化やコストの削減が図れます。
委託先によって請け負う業務範囲や料金が異なるため、どの業者を選ぶかが重要なポイントです。相見積もりを取る、代行業者のオフィスを見学させてもらうなどして、自社のニーズに合い、信頼に足る代行業者を選びましょう。
当社「Bricks&UKアウトソーシング」では、経理代行サービスを引き継ぎなしでも、一部でも丸投げでも請け負うことができます。母体である税理士法人との提携により、業務改善のサポートも行えることで多くのクライアントから高く評価いただいています。ぜひお気軽にお問い合わせください。