経理にテレワークは可能か?〜コロナ禍における経理の働き方〜2021.04.27
新型コロナウイルスの影響により、世の中では在宅勤務やテレワーク化といった働き方の変化が起こっています。
しかしそんな世の中にも関わらず、あらゆる問題を抱えテレワーク化が進みにくい職種の1つが「経理業務」。
「会社に行かないと仕事にならないし…」
「テレワーク化といっても、何から始めたらいいのか分からない…」
といった経理担当者も多く、「結局どうすればいいの?」と悩まれている方も少なくありません。
そこでこの記事では、経理業務のテレワーク化を妨げる原因から、テレワーク導入方法まで詳しく解説していきます。
ぜひ参考にしてください。
目次
経理のテレワーク導入が難しい理由
まずは、経理におけるテレワーク導入の課題点から考えていきましょう。
課題点は、大きく分けて次の3つです。
- 紙、ハンコによる業務処理
- 電子証明書式ログインにより、パソコン持ち出しが困難
- 現金精算の場合、他の社員に合わせて出社せざるを得ない
詳しくみていきます。
紙、ハンコによる業務処理
経理のテレワーク導入を妨げる最も大きな要因は「紙・ハンコを要する業務」の存在です。
実際に2020年に行われた調査によると、出社の理由として「紙の書類(請求書、契約書等)の確認や押印」が 56%であったことが分かっています。
「テレワーク導入は必要だ」と回答した人が9割を超える中、出社せざるを得ない状況が続くのは、あきらかに紙・ハンコの文化が要因といえます。
参照:一般社団法人日本 CFO 協会「新型コロナウイルスによる経理 財務業務への影響に関する調査」
電子証明書式ログインだと、PC持ち出しが困難
インターネット上から会社の口座にアクセスするときに使用される「電子証明書」。
電子証明書は、それがインストールされたパソコンでしか使用できません。
つまり、口座にアクセスしながらテレワークで経理業務を行うには、専用のパソコンを自宅に持ち帰る必要があるということ。
しかし、電子証明書がインストールされた会社のパソコンを自宅に持ち帰るのは、セキュリティ面を考慮すると困難なことでもあります。 こういった理由から、経理業務のために出社する必要がでてきてしまうのです。
現金精算の場合、他の社員に合わせて出社せざるを得ない
現金による営業担当者への経費の支払い、消耗品の購入、給与の支払いなど。
会社で現金を扱っている場合にも、現金の引き出しや社員への現金手渡しのために出社せざるを得ない状況が生まれます。
「現金を無くしたらいいんじゃない?」と簡単なことのように思われるかもしれませんが、これまでの業務フローを大きく修正していくことは容易ではありません。
経理のテレワーク導入を妨げる要因には、現金精算といった課題もあるのです。
経理のテレワーク導入方法とノウハウ
テレワーク導入への課題点を解説したところで、ここからはテレワークの導入方法とノウハウについて、3つのポイントに絞って解説していきます。
経理のテレワーク導入方法とノウハウ3つのポイント
- 業務フローの見直し・明確化・改善
- ペーパーレスの実施
- 外部とのコミュニケーション方法の見直し
業務フローの見直し・明確化・改善
まずは、これまでの業務フローの見直しからはじめます。
作業を細かく洗い出した上でフローを可視化し、流れを再確認しましょう。
下記で解説していくノウハウについても、まずはこの業務フローの見直しが前提になるため、丁寧に行ってください。
手順としては次のとおりです。
1.現状の業務フローを明確化する(可視化)
2.改善できるポイントを洗い出す
3.優先度の高いものから着手(改善対応)していく
どのような会社でも、よくよく考えると不要な作業や非効率的な作業があるものです。
とくに「昔からこうだったから」「上司にそう教えられたから」という理由で行っている作業は要注意。 目的に対して現状のフローは適切かどうか、改善できる点はないか、改めて考えてみてください。
ペーパーレスの実施
テレワーク導入を妨げる要因となっている、紙・ハンコの文化に対する解決策が「ペーパーレス」です。
これは「紙で管理しているから出社せざるを得ない」といった状況を改善することが目的となります。 まずは、各々の社内でテレワーク実施の妨げになっている書類から対処していくとよいでしょう。
ペーパーレス対応書類の例
請求書/見積書/伝票/領収書/契約書/指示書/報告書/会計帳簿
そして、ペーパーレスの実施に欠かせないのが「クラウドサービス」。
具体的には、クラウド上でデータを保管・共有できる「クラウドストレージ」、あらゆる申請書類を電子で取りまとめられる「ワークフローシステム」といったサービスです。
ペーパーレスの実施には、第1にデータの保存先が課題になりますが、上記のサービスではデータをクラウド上に保存できるため安心ですね。 今ではさまざまなクラウドサービスがリリースされているため、まずは自社に合ったサービスを探してみることから始めましょう。
外部とのコミュニケーション方法の見直し
社内でのペーパーレス実施とともに行いたいのが「外部とのコミュニケーション方法の見直し」です。
いくら社内でのペーパーレスが進んでいても、外部との書類のやり取りを紙で行っていては、完全なテレワークは実現できません。
実際に2020年に行われた調査でも、非常事態宣言中に紙の書類で苦労したことについて「請求書が紙で送付されてくる」が 60%であったと報告されています。
まずは、契約書や見積書、請求書などやり取りの多い書類から、電子でのやり取りを進めていきましょう。
参照:一般社団法人日本 CFO 協会「新型コロナウイルスによる経理 財務業務への影響に関する調査」
経理のテレワークを導入するメリットとデメリット
作業形態を大きく変更しようとすると、思わぬ弊害が生まれる可能性もあります。
安全にテレワーク導入を進めるためにも、あらかじめメリットとデメリットを把握しておくと安心ですね。
それぞれ解説していきます。
経理のテレワークを導入するメリット
経理のテレワーク導入に対するメリットは、大きく次の3つです。
①コスト削減
テレワーク導入に欠かせないペーパーレス化に伴い、用紙代や印刷代の削減が可能になります。
加えて、社員の交通費やオフィスの光熱費は大幅に削減できるでしょう。 場合によっては、オフィスの清掃代や備品代などの節約にも繋がります。
②業務効率化
上記で解説しましたが、経理のテレワーク導入には「業務フローの見直し・明確化・改善」から始める必要があります。
1つ1つの作業の意味を考えたときに「昔からこうだったから」という理由になる作業はありませんか?
もしあるのなら、それは実は不要な作業・非効率的な作業かもしれません。
作業を洗い出し改善していくだけでも、業務効率化に繋がり時間の余裕が生まれてきます。
③社員の満足度向上(ワークライフバランスの向上)
経理のテレワーク導入が実現すれば、社員にとって次のようなメリットがあります。
・通勤が無くなる
・時間が生まれる
・仕事がしやすくなる
社員の通勤が無くなれば、朝の身支度~通勤までの時間を大幅に短縮できるほか、朝夕の満員電車に乗る息苦しさからも解放されます。
すると、1日の中で新たな時間が生まれる上に余計なストレスから解放され、自分のため・家族のために使う時間・心の余裕ができ、社員の満足度向上に繋がるのです。
またペーパーレス化に伴い、チームとしての情報共有が容易になるなど作業のしやすい環境となり、業務面でもメリットを感じられるでしょう。
仕事に対する満足度、生活に対する満足度の両方が確保でき、結果としてワークライフバランスの向上に繋がるのです。
経理のテレワークを導入するデメリット
経理のテレワークを導入するデメリットは、大きく次の2つ。
①セキュリティ対策が必要
テレワークの際は「ネット上で」かつ「社外で」業務を行いますね。
すると、可能性として次のような問題が起こるケースも考えられます。
・パソコンがウイルスに感染した
・パソコンが外部から攻撃を受け、電子データを改ざんされた
・公共の場でのオンライン会議により、情報が漏えいした
このような事態を未然に防ぐためにも、セキュリティ面には丁寧に対応しておきましょう。
なお、総務省から発表されている「中小企業等担当者向け テレワークセキュリティの手引き(チェックリスト)」が活用できます。
気になる方は一度チェックしてみてください。
②業務フローの確立が必要
テレワーク導入の際の「業務フローの見直し~再考~確立」までの道のりは、決して簡単ではありません。
とくにインターネットに詳しい社員がいなければ、作業は難航します。
クラウドサービスを利用するとしても、どんなサービスがあるのか、サービスの導入からチーム間での共有方法まで、ゼロから調べて活用していくのは至難の業ですね。
経理アウトソーシングも有効
経理のテレワーク導入はメリットが大きいものの、いざ導入するには大きな労力と時間が要るものです。
そこで、
「テレワーク導入への意欲はあるけれど、導入への時間をかけている余裕がない」
「テレワークを実現するために、どうにかならないのか?」
と悩まれている方におすすめしたいのが「経理のアウトソーシング」。
簡単にいえば「経理の業務代行」です。
アウトソーシングであれば社内のリソースを割くことなく、最も早く確実なテレワーク体制が確保できます。
テレワークという初めての試みで不安も大きい中、業務の一部だけでもアウトソーシングを利用し、安心を購入するつもりで利用するのもいいですね。 経理のテレワーク推進の選択肢として、アウトソーシングを検討されてみてはいかがでしょうか。
まとめ
新型コロナウイルスの影響により、世の中では在宅勤務やテレワーク化といった働き方の変化が起こっています。
しかしそんな世の中にも関わらず、あらゆる問題を抱えテレワーク化が進みにくい職種の1つが「経理業務」。
そんな経理のテレワーク導入への道筋を示すなら、次のようになります。
1.業務フローの見直し・明確化・改善
2.ペーパーレスの実施
3.外部とのコミュニケーション方法の見直し
たった3ステップとはいえ、全体として大きな労力と作業時間の確保が必要になります。
中には「テレワーク導入のためのリソースを割く余裕がない」といった方もいることでしょう。
そこで、経理のテレワーク導入につまずいている方におすすめしたいのが「経理のアウトソーシング(経理代行)」です。
テレワーク実現へのすべてを社内で努力するのではなく、最も手のかかる経理だけでも、外注してみてはいかがでしょうか。
社内のリソースを割くことなく、一番早く確実な方法でテレワークを推進することができます。 一度、経理のテレワーク推進の選択肢として「アウトソーシング」を検討されてみてください。