家族経営の経理は親族任せで大丈夫?よくあるリスクと予防策を解説2025.04.23

中小企業には家族経営も多く、経理を妻や兄弟、子どもなど親族が担当している会社も珍しくありません。
たしかに親族に経理を任せることにはメリットもありますが、実はデメリットの方が大きくなっているケースもあるので注意が必要です。
この記事では、家族経営の会社の経理を親族に任せることのメリットとデメリットを解説します。デメリットやリスクを回避する方法も紹介するので参考にしてください。
目次
親族が経理をするのは家族経営ならでは

家族経営の会社で経理を行っているのは、主に次のような人です。特徴的なのは、妻や兄弟など、事業主の家族が含まれていることです。
- 事業主自身
- 事業主の妻や兄弟など家族
- 従業員
- 税理士など外部の専門家
会社設立後すぐは、取引量が少なく経理作業も比較的簡単なので、事業主自ら経理を行うのが一般的です。
しかし事業が軌道に乗ると経理も複雑化し、作業量も増えます。そのため、他の人に任せる必要が出てきます。とはいえ多くのコストはかけられません。となると、家族に白羽の矢が立つことになるのでしょう。
家族が経理を担当することのメリット
経理を家族に任せることには、次のようなメリットがあります。
- 家族ならではの信頼関係がある
- 意思疎通がしやすい
- 人件費などコスト削減できる
- 節税できる
それぞれ見ていきましょう。
家族ならではの信頼関係がある

自分の会社の経理を任せるのに、家族ほど信頼できる相手はいないでしょう。経理はお金を扱う重要な部門なので、安心して任せられる人でなくてはなりません。
家族なら、何より素性や気質などがわかっています。生計が一緒ならば特に、1人に任せても着服などの疑いを持つ必要はないでしょう。
意思疎通がたやすい

お互いをよく知る家族なら、意思疎通がスムーズなのも大きなメリットです。家族なら言いたいことがストレートに言えますし、すべてを言わずとも通じたりします。
プライベートな時間も共に過ごす関係なら、日々の生活の中で共通認識も深まり、自然と仕事に活かせる可能性も高いです。
人件費などコストが削減できる

特に個人事業主や小規模の会社で妻が経理担当の場合、対価なしで手伝うケースも少なくありません。資金に余裕がない時期には大いに助かります。
人を雇うとなれば、パートタイマーでも月に数万円の給料を支払う必要があります。福利厚生や社会保険などにも、コストがかかります。
家族が無償で協力してくれるなら、それらのコストも不要です。
節税できる
節税に関しては、大きく「経費」と「所得の分散」という2つのメリットがあります。それぞれ解説します。
家族への給与を経費にできる

家族を経理担当の従業員として給与を支払う場合、もしくは役員として役員報酬を支払う場合、会社はその給与や役員報酬を経費にできます。
経費が増えれば課税所得が減るので、法人税などの節約になります。
所得が分散できる

家族に給与を支払うことで、個人の所得税も節税できます。
所得税は累進課税で、所得が高い人ほど税金も高くなります。所得を給与や役員報酬で家族に分散すれば、適用される所得税率が低くなり、所得税や住民税を節約できるというからくりです。
個人事業主の場合は、確定申告の方法によって異なります。
青色申告の場合、「青色申告者の事業専従者」となれば支払った給与を経費にできます。それには生計を共にする配偶者またはその他の親族である、15歳以上である、6カ月以上事業に専従するなどの条件に該当することが必須です。
白色申告の場合は、給与の全額が経費にできるわけではなく、金額に制限があります。
家族が経理を担当することのデメリット
家族に経理を任せることには、次のようなデメリットもあります。
- 知識・経験不足によるミスの発生
- 関係の悪化など感情面が仕事に影響する
- 従業員の反感を招きがちである
- 客観的なチェック機能が働きにくい
それぞれ見ていきましょう。
知識・経験不足によるミスの発生

経理を家族に任せているケースは多くても、当人に経理の知識や経験があるケースは少ないのが現実です。
そのため、それまで経理をしていた事業主が帳簿の付け方などを教え、基礎知識がないまま作業だけを進めることになりがちです。
なので必然的に、知識不足で初歩的なミスをしたり、イレギュラーな場合の正しい処理方法がわからず、自己流で処理して間違えたりするリスクが高くなります。
家族関係の悪化が仕事に影響する

家族は常に仲がよいかと言えば、そうとも限りません。
たとえば夜、プライベートで夫婦喧嘩になり、次の日まで持ち越している場合。仕事にまったく私情を持ち込まず、普段どおりに振る舞うのは難しいものです。
険悪なムードで仕事をすることになると、普段なら阿吽の呼吸で進められることもスムーズにいきません。他の社員も仕事がしづらいでしょう。
従業員の反感を招きがち

家族経営の場合、給与の額が他の一般社員より多かったり、高額な役員報酬を受け取ったりするケースも少なくありません。評価基準が曖昧だったりすれば、他の社員に不公平感を与えることに。
経費精算に関しては、他の社員には厳しいのに自分や家族には甘かったりする例も。家族だからと自分も社長と同じ立場のようにふるまい、他の従業員を下に見る態度で反感を買う人もいます。
客観的なチェック機能が働きにくい

経理が社長の妻だったりする場合、たとえば仕事にミスや明らかな改善の余地があったとしても、指摘はしづらいでしょう。経理業務でチェック機能が働かないというのは、大きなリスクです。
たとえダブルチェック体制にしていても、家族本人にミスを指摘しづらければ、社員が気を使ってこっそりと修正するようなケースも。それでは不満を生んでしまいます。
いくら信頼できる家族でも、チェック機能が働かない環境では不正も生まれかねません。
家族に任せるデメリットやリスクを回避するには
経理業務を家族に任せるデメリットやリスクを避けるには、次のような対処がおすすめです。
- 経理のスキルアップを図る
- 会計ソフトなどITツールを導入する
- 専門知識のある別の社員に経理を任せる
- 外部の専門家・アウトソーシングを活用する
それぞれ説明します。
経理のスキルアップを図る
家族が担当する場合でも、簿記の資格取得を支援したり、経理担当者向けの外部セミナーなどに参加したりする機会を作り、知識とスキルの向上を図りましょう。
知識が向上すればミスが減るほか、不本意に経理を担当している場合でも、不明点が解消されるなどすれば仕事へのモチベーションも上がる可能性大。資格試験やセミナーなどで他社の経理担当者を目にすれば、刺激にもなるでしょう。
ITツールで業務を効率化する
手作業や紙ベースで作業をしているなら、会計ソフトなどの便利なツールで業務を効率化させましょう。
費用はかかりますが、パソコンに不慣れな人にでも簡単にでき、何より作業の手間と時間が大幅に削減。ミスも減らせます。
クラウド型のシステムなら、他の人も別のパソコンからいつでもアクセスできます。情報共有がいつでもできるので、ブラックボックス化も防げます。
専門知識のある別の人に任せる
こちらもコストはかかりますが、経理経験者を社員として採用することも検討してみてください。もし別部署に経験者がいるなら、本人に異動を打診するのも1つの方法です。
適材適所にして経理業務の質を上げましょう。経理の質は、事業経営にも大きく影響します。
外部の専門家やアウトソーシングを活用する
経理に関する外部の専門家には、税理士や会計士がいます。専門家と顧問契約を結び、定期的に見てもらったり、不明点があったら聞ける環境にしておいたりすることもおすすめです。
もしくは、経理を無理に自社で行わず、アウトソーシングする、つまり外注に出す方法もあります。一部の業務でも、経理部門まるごとの委託でも対応してくれます。
経理アウトソーシングについては、次の章で紹介します。
経理アウトソーシングは課題解決の有力候補
経理業務は、会社の経営に直結する業務であり、本来、知識や経験のない人に簡単に任せるべきではありません。とはいえ、自社で経理専門の人材を雇用するにも、デメリットがあります。
そこでおすすめしたいのが、経理業務のアウトソーシングです。
経理担当を自社雇用するデメリット
まず、経理担当の人材を自社で雇用することのデメリットを見ておきましょう。
- 優秀な人材の確保は難しい
- 残業代など人件費がかかる
- 採用や教育にもコストがかかる
- 不正のリスクが増加する
- 未経験・経験不足はミスによるリスクがある
- 法律や税制改正時の対応に苦労する
人材不足が深刻となっている現在、より優秀な人を確保するには、他社より良い職場環境、高い賃金などを用意しなくてはなりません。募集してくる人の経験・スキルはバラバラのため、選考も簡単ではないでしょう。
面接だけで人間性は判断できず、信頼に足る1人の他人を見極めるのは難しいもの。採用に失敗するケースはいくらでもあります。
人材を確保したら、離職を防ぐ努力も必要です。当然、適正な給与を払わねばなりません。経理は残業も多いため、割増賃金などでコストもかさみます。
そもそも採用には、給与以外にも求人広告から選考、面接などそれぞれで費用や時間、手間もかかるほか、入社後も福利厚生や教育などにさまざまな出費が避けられません。
また、法律や税制の改正に対応するにも、高い専門知識が必要です。必要な対応をしなければ、意図せず法令違反となる恐れもあります。
経理アウトソーシングを利用するメリット
経理アウトソーシングとは、経理業務を外部の代行会社に委託することです。経理の知識や経験があまりない家族に任せるよりも、外部の企業に委託するメリットの方が大きく、安心でもあります。
経理をアウトソーシングすると、次のようなメリットが得られます。
- 他の社員の不信感の解消
- 経理専門スタッフによる正確で質の高い業務
- 経理業務の効率化
- コストの節約
- 法改正などへの迅速な対応
- コア業務への集中化
家族経営の場合、家族が経理を担うことで社員から受ける不信感は、外部委託で解消できます。社員の信頼を得ることは、モチベーションの向上や離職の防止、生産性やパフォーマンスの向上につながります。
経理アウトソーシング会社のスタッフは、経理専門。いわばプロなので、ミスや時間のロスなく業務を進めてくれます。現状の業務進行にムダなところがあれば、それも改善されるでしょう。
もちろん、法改正にもスムーズに対応してくれます。
気になるコストも、人を1人雇うより安く済むのが一般的です。採用にかかる求人広告の出稿や面接などの手間も省けます。経理部門にありがちな長時間労働も、外注すればなくせます。
経営者や役員が経理担当も担っている場合には、本業やコア業務に集中できるようになります。
メリットについてより具体的な説明と、デメリットとなる点、委託先選びのポイントはこちらの記事で解説しています。
家族経営の経理にもアウトソーシングがおすすめ
家族経営の場合、コストをかけたくないという理由で経理を家族に任せているケースは少なくありません。しかし、事業規模が大きくなるにつれ、取り扱う額も増え、経理も複雑化します。
そのため、経理に不慣れな家族に無理に担当させ続けていると、経営が悪化する恐れも。なるべく早い段階で、知識や経験の豊富な経理担当者を雇うか、外部の専門家に委託することをおすすめします。
経理アウトソーシングなら、人を雇うよりも低コストで、経理専門のスタッフに委託できます。
当社「Bricks&UKアウトソーシング」は、税理士法人を母体とする経理アウトソーシング会社です。丁寧なヒアリングからの業務フロー改善など、多くのクライアントから高い評価をいただいています。ぜひお気軽にご相談ください。