経理の残業を減らすには?業務効率化やコスト削減の方法とNG例を紹介2025.01.30
毎月、月末や月初になると経理担当者が残業をしている会社は多いでしょう。経理業務には作業時期が決まっているものが多く、月末・月初はどの会社でも忙しくなります。
しかし、長時間の残業や休日出勤は、労務管理だけでなく働き方改革の推進や離職防止の観点でも適切とは言えません。
今回は、経理の残業について、その理由から残業で生じるデメリット、残業の削減方法やその際の注意点まで解説します。
【この記事の監修者】 株式会社Bricks&UK Outsourcing業務コンサルタント
経理の業務設計・運用に優れたコンサルタントが、効率的で正確な業務請負いをお約束します。
目次
経理業務の残業は繁忙期に多い
経理の残業については「多い」「大変」という声もあれば、「定時で帰れて楽」という逆の声もあります。というのも、時期によって、または会社の状況によって業務量は大きく違うからです。
経理の繁忙期とは
経理の仕事は、繁閑がはっきりしています。一般的にどの企業でも、次の期間は多忙になります。
- 毎月の月末・月初
- 年末調整のある11月~1月あたり
- 決算時期(3月決算の場合は3~5月)
この時期には、長時間の残業や休日出勤が必要となるケースが多いです。
経理の残業時間数
経理の残業時間は月に20時間~30時間とも言われます。しかし、残業時間に特化した公的な統計はなく、根拠ははっきりしません。
厚労省の「賃金構造基本統計調査」によれば、会計事務従事者の超過実労働時間数は月7時間~8時間(2020年~2023年)。しかし調査時期は繁忙期でない毎年6月のため、実際にはもっと多いものと考えられます。
経理の残業が多くなる原因
繁忙期でもそうでない時期でも、経理の残業が多くなる主な原因は次のようなことです。
- 業務量に対して人手が足りない
- 社員からの必要書類の提出が遅い
- 前倒し・先送りできない仕事が多い
- 突発的なことへの対応も多い
- 属人化が進んでおり、手分けができない
それぞれ説明します。
業務量に対して人手が足りない
やらなくてはならない業務が大量にあるのに、経理担当者が少なければ業務時間内に仕事を終えられません。
人手不足の原因には、社会全体が少子高齢化で労働者人数が減っていること、それによって売り手市場となり優秀な人材の採用が難しいことが挙げられます。
また、繁忙期の残業の多さに耐えきれず退職する人が多いことも原因の1つと言えるでしょう。
そもそも利益に直結しないバックオフィスである経理部門には、最低限の人員配置とされることも少なくありません。
社員からの必要書類の提出が遅い
経理には、社員から書類を提出してもらわないと進まない作業も少なくありません。たとえば営業社員から受け取る経費の精算書や、ほぼ全社員を対象とする年末調整の各種申告書など。
月末・月初や年末調整、決算の締め切り近くになると、それまで社員がため込んでいた書類が一気に届き、大量になることも。書き直しが必要になる人や終業時間近くになって提出する人も多く、そうなれば残業するしかありません。
前倒しも先送りもできない仕事が多い
現金や預金の管理、経費精算や帳簿付けといった業務は、発生したその日に完結しなくてはならず、先延ばしにはできませんし、前もってやっておくこともできません。
月次の締め作業や決算業務も同様で、多くは前もって始めることが難しく、先送りするわけにもいきません。そのため、特定の時期に残業が増えてしまいます。
突発的なことへの対応も多い
予期せぬトラブルやミスなどにより、突発的に業務が増え、残業になることもあります。たとえば、請求書の金額が間違っていることが判明し、締め日までに処理しなくてはならない、売掛金の残高が合わず、原因探しからしなくてはならない、など。
また、営業社員からイレギュラーな対応について聞かれた場合など、調べて説明するなどしていれば、多くの時間を取られます。
属人化が進んでおり、手分けができない
経理業務において、残業以外の課題となっているのが「属人化」です。1人経理はもちろんですが、複数人でも部内でジョブローテーションなどしなければ属人化していきます。
属人化が進んでしまった仕事は、誰かが手伝うこともできないため、残業してでも一人で作業を終わらせなくてはなりません。
また、その負荷に耐えられず当人が退職してしまった場合、マニュアル化されていない仕事を引き継ぐのには多くの時間がかかり、残された人が残業することになってしまいます。
会社から見た経理の残業デメリット
経理担当者が残業すること、残業が多いことは、当人にとってデメリットであることはもちろん、会社にも次のようなデメリットが生じます。
- 従業員のワークライフバランスを崩す
- 時間外労働にコストがかかる
- ミスが発生しやすくなる
- 退職・休職リスクが高まる
それぞれ見ていきましょう。
従業員のワークライフバランスを崩す
ワークライフバランスとは、仕事とプライベートの両方を充実させること。ワークライフバランスをとることで、仕事ではモチベーションや作業効率を上げ、良い成果を生み出すことが期待できます。
残業がプライベートの時間を侵食してワークライフバランスが崩れると、仕事へのモチベーションや作業効率の低下につながります。
時間外労働にコストがかかる
残業した従業員には、時間外手当を支払わねばなりません。1日の法定労働時間8時間を超えた分は、割増賃金を支払う必要があります。
また、残業する社員が1人でもいれば、光熱費もアップします。
ミスが発生しやすくなる
忙しい上に残業で休息時間が少なくなれば、集中力を保つことも難しくなります。経理にミスが許されないことは承知していても、疲れがたまればうっかりミスの可能性も高まります。
意思に反して残業することで、精神的なイライラが募ることも。平常心でない状態でミスなく仕事をするというのは困難です。
退職・休職リスクが高まる
残業が多かったり、残業が常態化していたりする職場では、退職や休職のリスクも高いです。
心身ともに不調をきたして退職を考えはじめる人や、ある日突然出勤できなくなる人が出てくることも。残業に対する不満解消の見込みがなければ、転職を考えても不思議ではありません。
経理の残業を減らすには
残業によるデメリットは、会社としてどれも見逃せないものです。経理が残業するのは仕方ないものと考えず、減らす方法を探りましょう。減らすには、次のような方法があります。
- 属人化を解消する
- マニュアル化で効率を上げる
- 増員で1人あたりの業務負担を減らす
- ノー残業デーを設定する
- 経費精算システムを導入する
- クラウド会計システムを導入する
- 経理をアウトソーシングする
それぞれ説明します。
属人化を解消する
業務が属人化すると、他の人は余裕があるのに特定の人だけが忙しく残業になる、といったいびつな状態になります。
属人化を解消し、業務を複数人体制にすれば、1人に負担がかかるようなこともなくなります。
マニュアル化で効率を上げる
業務を行うのに、いちいち人に聞いたり、答えたりしているとお互いに作業が進みません。経理業務を一度洗い出し、誰でもわかりやすいマニュアルを作って無駄をなくしましょう。
マニュアルを見て作業をすれば、何度も聞いたり聞かれたりするムダがなくなります。
定期的に経理担当者でミーティングなどを行い、必要に応じてマニュアルをブラッシュアップしていけば、作業効率がより高まります。
増員で1人あたりの負担を減らす
もっともシンプルな残業削減の方法は、言うまでもなく人員を増やして業務を分担することです。
ただ、人件費の増加は避けられないほか、繁忙期以外には逆に仕事がない可能性も。そのため、通常業務にゆとりがある場合は派遣社員などで一時的に増員するのが合理的です。
ノー残業デーを設定する
業務が終わっても帰りづらい雰囲気があるなど、残業が不必要に行われている場合は、週に一度の「ノー残業デー」を設けるのが効果的です。
「ノー残業デー」という大義名分があれば、帰れる人は帰れます。残業になりがちな人も、定時で帰れるよう工夫するようになるでしょう。
経費精算システムを導入する
手作業で時間や手間のかかる経費精算は、システムで処理すれば大幅に効率化でき、作業時間の短縮になります。
たとえば申請された交通費の額をいちいち確認・計算する必要はなくなります。領収書などは自動仕訳が可能になり、承認もオンラインで行えるようになるため、スピーディに処理できます。
クラウド会計システムを導入する
会計システムを導入していない、もしくは以前から社内サーバーやインストール型の会計ソフトを使っている場合には、クラウド型の会計システムを導入するのも効果的です。
クラウド型なら、ネット環境さえあればスマホなどからでもアクセスできます。作業者が限られないほか、テレワークにも対応できます。自動でアップデートするため、法改正時の適応もスムーズです。
経費精算システムや請求書発行システムと連携させればさらに業務効率化が進み、残業も減るでしょう。
経理をアウトソーシングする
社内での改善が難しい場合には、経理業務の一部またはすべてを外部のアウトソーシング業者に委託するのも選択肢の1つです。
たとえば記帳のみアウトソーシングするだけでも、従業員の作業時間は大幅に減らせます。専門業者に依頼すれば、ミスや不正も起きにくくなります。
経理の残業時間削減に取り組む際の注意点
最後に残業削減への取り組みを始める前に知っておきたい注意点を解説します。
- まずは自社の残業理由を解明する
- ノー残業デーは逆効果に注意する
- システム導入のデメリットも知っておく
- 法改正などは情報を早めに入手する
まずは自社の残業の原因を解明する
残業を減らすためには、まず当人に話を聞くなどして、残業の原因を突き止めましょう。増員やシステム導入などコストをかける前に、体制の変更や業務分担の調整などで変えられるケースもあります。
残業の理由は会社や部署の状況、個人の能力や性格などによっても異なります。何がネックかがわかれば、最適な対策を取ることができるはずです。
ノー残業デーの導入は慎重にする
仕事の量が多くて残業している場合、単に「ノー残業デー」で時間を区切って帰らせても逆効果です。「ノー残業」でも問題のない環境にすることが重要です。
業務量が減らなければ、先延ばしにして別の日の負担を増やすだけ。帰りたくても帰れないのに、ルールを守らないなどと言われれば、文句が出ても不思議ではありません。
ただ日にちを設定するだけでは、「無駄に残業していると思われているのか」など、会社への不信感やストレスにもつながります。
システム導入のデメリットも知っておく
経費精算や会計など各種システムの導入による業務効率化は、長い目で見れば残業の削減につながりますが、一時的なデメリットもあります。
たとえば、何を導入すべきか判断するため専門家に相談するなどの準備が必要だったり、導入するシステムによっては高額な初期費用がかかったりもします。運用方法やルールの周知、教育などにも、手間と時間がかかります。
効率化できるはずが、慣れるまでは従来よりも作業に時間がかかり残業になる、というのもよくある話です。
法改正などの情報は早めに入手する
法改正など対応が必要なものについては、早めに情報公開されることがほとんどです。何がどう変わるか、何をすべきかを早めに判断して、余裕をもって動くことが重要です。短期間で一気に行おうとすると、残業になりがちです。
前述のとおり、クラウド型会計システムを導入していれば、システムは自動で法改正に適応してくれるほか、業者のセミナーなども受けられます。経理アウトソーシングでも同様に、自社の負担は軽減されます。
経理の業務効率化で残業時間を削減しよう
経理業務では、月末月初の締めや年末調整時、決算期あたりで残業が発生します。前倒しや先送りができない作業が多いため、残業時間も長くなり、従業員の不満や体調不良にもつながりがちです。
残業を減らすには、属人化を解消したり作業をマニュアル化したりして誰にでもできるようにする、各種便利なシステムを導入するなどの方法があります。しかしまずは、自社の残業の原因を突き止めることから始めましょう。
社内で解決するのが難しい場合は、経理業務の一部または丸ごとをアウトソーシングする方法もおすすめです。
当社「Bricks&UKアウトソーシング」では、経理業務の一部あるいはすべてのアウトソーシングを承っています。
残業の削減が難しい場合や、ミスが多くお困りの場合、担当者の急な退職で困っている場合など、あらゆる場面でお力になります。ぜひお気軽にご相談ください。