経理代行の委託先はどう選ぶ?失敗しない選び方と成功のポイント2024.11.14
経理担当者が急に退職して困った場合や、経理と本業の兼務で支障が出てきたような場合に活用されている、経理のアウトソーシング。
便利なサービスではありますが、お金を管理する重要な業務を依頼するので依頼先は慎重に選ぶ必要があります。
今回は、経理代行を委託する業者の選び方や依頼の流れ、依頼前に行うべきことについて解説します。
【この記事の監修者】 株式会社Bricks&UK Outsourcing業務コンサルタント
経理の業務設計・運用に優れたコンサルタントが、効率的で正確な業務請負いをお約束します。
目次
そもそも経理代行とは?記帳代行との違いも
経理代行とは、主に次のような経理業務を自社の代わりに行ってくれるサービスです。
- 記帳
(会計ソフトへの入力、各種帳簿作成) - 請求書発行
- 売掛金管理
- 給与計算
- 経費精算
- 支払・振込手配
似たようなサービスに「記帳代行」がありますが、記帳代行は経理代行の一部と言えます。ただし、「経理代行」といいつつ請け負う業務は記帳代行のみの業者もあり、明確に区別されているわけではありません。
経理代行サービスの内容も、業者によって異なる場合があります。
経理代行を委託できる業者は主に3つ
経理代行を請け負う業者には、主に次の3種類があります。
- 税理士・会計事務所・税理士法人
- 経理アウトソーシング業者
- フリーランス経理
それぞれ次のような特徴があります。
税理士・会計事務所・税理士法人
税理士は、税金に関する国家資格の有資格者であり、経理についても専門的な知識を持っています。そのため、業務の質が高いこと、信頼性が高いことが特徴です。
また、税理士でなくては代行できない年末調整や決算書の作成も可能になるほか、税務相談や確定申告なども依頼できるのがメリットです。
ただし、料金も高い傾向にあります。
経理アウトソーシング業者
経理アウトソーシング業者は、経理代行を専門に請け負う会社です。経理の知識・経験があるスタッフを雇い、クライアントの企業や個人事業主の経理業務を代行します。
税理士法人が母体となっている業者や、税理士と提携している業者もあり、その場合は税理士にしか代行できない業務も請け負うケースが多く見られます。
フリーランス経理
経理経験者や税理士・会計士の有資格者が、個人で「ランサーズ」などのクラウドソーシングサービスや、「ココナラ」などのスキルマーケットで業務を請け負っているケースもあります。
オンラインで完結すること、個人であることなどから、費用は安く済む可能性が高いです。しかし信頼性や業務の質、セキュリティ面のいずれも、人による差が大きいため注意が必要です。
失敗しない経理代行業者の選び方
自社の機密事項を共有する相手ですから、代行業者は慎重に選ばなくてはなりません。
インターネット上で「経理代行」「経理アウトソーシング」もしくは「経理代行 地名」などで検索すると、代行業者のホームページや代行業者を紹介する記事が見つかります。
ただし、「おすすめ●選」といった内容の記事には広告が絡んでいるため、鵜呑みにするのはおすすめできません。あくまで「自社に合ったサービスはどれか」「信頼して任せられるか」という目線で選ぶことをおすすめします。
まずはインターネット上で情報を探し、候補が見つかったら問い合わせフォームや電話で質問・相談してみましょう。選ぶときのポイントは、次の7つです。
- 運営元はどんな会社・どんな人物か
- 実績はどれくらいあるか
- 自社に必要なサービス・サポートをしてくれるか
- 業務内容に見合った料金か
- 連絡はしやすいか、レスポンスは早いか
- セキュリティ対策は万全か
- 実務担当はどんな人か、どんな体制か
それぞれ具体的に見ていきましょう。
運営元はどんな会社、どんな人物か
まず、経理代行サービスの運営元がどんな会社なのかを確認しましょう。自社の機密情報を共有するに足る相手かどうかは重要です。
ホームぺージの会社概要や経営理念のほか、税理士事務所などはブログで人となりがわかることもあります。公式SNSを探すのも1つの方法です。
フリーランスであれば、クラウドソーシングサービスのサイトに掲載されたプロフィールのほか、利用者からの評価を見てください。
実績はどれくらいあるか
経理代行の実績、創業からの年数やクライアント数、評判なども確認します。これもホームページや口コミなどで確認するか、もしくは直に問い合わせるのもよいでしょう。
このとき、自社と同じ業種での実績があるかどうかも聞いてみてください。
業界特有の事情を知っている業者なら、依頼時の引き継ぎがしやすく、作業ミスや抜けの心配も少なくなります。逆に問題点を相手が指摘してくれることも。
継続契約の年数なども確認してみるのがおすすめです。
自社に必要なサービス・サポートをしてくれるか
サービスの内容や範囲は具体的に確認してください。
経理業務の丸投げができるかできないか、オンラインで完結なのか訪問も可能なのか、急ぎなどのイレギュラー対応は可能か、会計ソフトの導入サポートや業務改善のアドバイスはしてもらえるか、など。いずれも業者によって対応が違います。
また、たとえば「試算表は作ってくれるが、2~3カ月遅れるので参考にならない」というケースもあります。担当者の急な退職で引き継ぎの時間もない、という場合、引き継ぎなしで受けてくれる業者もいます。
「何をしてくれるか」も重要ですが、「自社では何をしなくてはならないか」という視点でも聞いてみるのがおすすめです。
「領収書を送るだけでいいと思ったら現金出納帳への記入が必要だった」「会計ソフトの変更が必要で何十万円もかかった」というようなケースもあります。
サービスに見合った料金か
料金設定も業者により異なりますが、単に高い・安いだけでは判断できません。基本プランに何が含まれているか、自社に不要なサービスを含んだ料金でないかを確認しましょう。
繁忙期・閑散期の差が大きい場合、それに応じた料金体制(一律でなく件数ごとなど)でなくてはムダが生じます。
また、社員の給与体系が一律でないなどの場合、作業が複雑になるため追加代金が必要になることも。追加代金がかさんで高額にならないかも要注意ポイントです。
連絡はしやすいか、レスポンスは早いか
社内ですぐ話ができるわけではないので、連絡が取りやすいかどうかも重要です。担当者との連絡手段は、電話なのかメールなのかLINEやチャットツールなのか。担当者の不在時も代わりの人に対応してもらえるかどうかなどを確認してください。
定期的なミーティングなど、状況や要望を伝える機会がもてるかどうかも確認しておきましょう。
レスポンスに関しては、問い合わせ時の対応からチェックすることをおすすめします。
セキュリティ対策は万全か
情報漏洩や不正防止のため、セキュリティ対策に関する確認も必須です。
ホームページでは、プライバシーポリシーが掲載されていることを確認、ISO027001の認証やPマークの取得の有無も見てみましょう。
問い合わせでは、具体的にどのような対策を取っているかを尋ねてみてください。
作業スペースへの入退室管理やスタッフへの情報セキュリティ教育の有無なども確認することをおすすめします。
実務担当はどんな人か、どんな体制か
問い合わせの時点で話す相手は、実務の担当者でないケースがほとんどです。どんな人が担当してくれるのかも確認しておきましょう。
作業能力を測るには、簿記2級以上の資格があるか、民間企業での経理経験が3年以上あるかなどがポイントです。
勤続年数や社内の離職率なども参考になります。
1クライアントに1人がつく体制なのか、チーム体制なのかなども把握しておくと安心です。
経理代行業者への依頼の流れ
ここで、経理代行を依頼する際の流れを見ておきましょう。まずは候補先選びから始め、次のような順で進めます。
- 1)委託先の候補探し
- 2)業者への問い合わせ・相談
- 3)相見積もりの取得・比較
- 4)委託先の選定
- 5)契約
- 6)委託の準備
- 7)委託開始
順に説明します。
1)委託先の候補探し
まずは委託先の候補として、2~3の業者に目星をつけま。す。
2)業者への問い合わせ・相談
それぞれの業者に連絡を取り、「経理のアウトソーシングを考えている」あるいは「すべきか迷っている」などと相談や問い合わせをします。
3)相見積もりの取得・比較
各社から見積もりを取り寄せ、サービス内容や料金などを比較します。不明点や疑問点があれば、この時点でしっかりと確認してください。
4)委託先の選定
見積もりの内容や、問い合わせ・相談の回答内容などをもとに、前述のポイントで委託先を選びます。
5)契約
委託する業務に応じて、相手との請負契約や準委任契約を結びます。
アウトソーシング業者やフリーランスの個人とは、秘密保持契約も交わしましょう。税理士や会計士には業務の性質上、法による守秘義務があります。
6)委託の準備
委託先業者と、業務の引継ぎや委託後の流れについて具体的に打ち合わせます。
それに基づいて業務フローの設計や業務の引き継ぎなどを行い、委託先が業務を始められるように準備します。
7)委託開始
業者に必要な資料を送り、作業をしてもらいます。作業が終了すると、データ化された資料などが送られてきます。
届いたらすぐ、内容などに問題ないかどうかを確認してください。
認識の相違や間違いなどがあれば、早めに修正事項を伝えます。
経理代行の利用を成功させるために必要なこと
委託先選びも重要ですが、経理代行を有効活用するために、次の3つの点も押さえておきましょう。
依頼前に自社の経理を棚卸しする
今の時点で、経理業務の棚卸しをしてください。誰が何をしているのか、どんな流れで作業をしているのかを洗い出して整理します。
どの作業が大きな負担になっているのか、どの作業をアウトソーシングすれば効率がよくなるかなどを確認します。
それにより、丸投げするか一部を委託するかも決めやすくなりますし、委託先への引継ぎも楽になります。
委託先とのルールを決め、必ず守る
資料送付時などのルールは事前に打ち合わせして決め、必ず守りましょう。信頼関係の構築が大切なのはもちろんですが、実害もあります。
たとえば領収書1枚でも、何の領収書かが不明だと入力の精度も甘くなります。その場ですぐに確認できませんし、社内の人間ではないので行動パターンやスケジュールから判断することもできません。
個人と会社とで分けずに大量の領収書を送った結果、経費として計上されたものの、後に税務調査で否認されたケースもあります。
送付された帳簿や試算表は必ず確認する
代行業者の作業が終わると、各種の帳簿や試算表などが成果物として送られてきます。受け取って終わりではなく、必ず中身を確認し、数字を経営に生かすことが重要です。
経理を人に任せることで数字を見なくなる経営者の方もまれにいますが、それでは適切な経営判断ができません。
アウトソーシングによってコストの削減どころか資金繰りの悪化につながる事態は避けたいものです。
経理代行サービスは賢く選んで賢く利用
経理業務をアウトソーシングするなら、委託先選びが重要です。
「税金の相談もしたいから税理士に」「作業的なことだけでいいから経理アウトソーシング業者に」など目的に合った相手を選ぶだけでなく、いくつかの業者から見積もりを取り、比較検討してみましょう。
サービス内容や料金は業者によって異なるため、事前に確認する必要があります。セキュリティ対策も万全なところを選び、情報漏れなどのリスクは最小限に抑えましょう。
当社「Bricks&UKアウトソーシング」は、税理士法人を母体とする中小企業向けの経理アウトソーシング会社です。引き継ぎなしの委託や丸投げなども可能ですので、お気軽にご相談ください。