経理業務を外部委託する前に知っておきたい活用ノウハウと注意点2024.09.18
事業を営む上で重要な経理業務。この経理を外部に委託すると聞いて、懸念を抱く人も多いのではないでしょうか。
しかし経理業務を委託することには、本業に専念できる、担当者の急な退職や法の改正にバタバタする必要がないなど、さまざまなメリットがあります。
この記事では、経理業務を委託することについて、基本知識からメリット・デメリット、委託前にすべきことまで丁寧に解説します。
目次
そもそも経理業務の委託とは
まずは基本的な知識を押さえておきましょう。
自社の経理業務を外部業者に委託
「経理を委託する」とは、一般的に自社内で行う経理の業務を、別の企業や個人に報酬を払って行ってもらうことを言います。「経理を代行してもらう」「経理をアウトソーシングする」も同義です。
委託する相手とは雇用主と従業員といった立場ではなく、ビジネスパートナーとして対等に業務を遂行してもらいます。
経理業務の一部でも全部でも委託可能
「経理」と一口に言っても、さまざまな業務があります。委託する際、経理部門の業務すべてを委託することも可能ですし、一部の業務のみ委託することも可能です。
人材不足でまかなえない業務があるなら一部のみ委託、部門ごと廃止したいならすべてを委託など、自社の状況によって決めましょう。
派遣とは多くの点で異なる
経理人材の確保手段として雇用以外にまず思いつくのは、派遣社員の受け入れかもしれません。派遣と外部委託とで大きく異なるのは、主に契約の種類と、業務を行う場所、対価の対象です。
派遣の場合は派遣会社との労働者派遣契約、委託の場合は経理代行業者との準委任契約(もしくは請負契約、委任契約)を結びます。経理業務を行う場所は、派遣の場合は自社内ですが、委託の場合は社外です。
派遣社員の場合、労働時間に応じた対価を払いますが、委託の場合は業務の遂行によって報酬を支払います。うまく活用すれば、派遣より委託の方が低コスト・低ストレスです。
経理代行は税理士法違反ではない
経理の業務を委託することにも受託することにも、法的な問題はありません。経理業務の代行は税理士以外でも可能です。
ただし、税務署に提出する決算書類や確定申告書の作成については、税理士のみが請け負える独占業務です。税理士事務所もしくは税理士事務所と提携した経理代行業者でないと請け負うことはできません。
経理業務の外部委託に向いているケース
経理業務の外部委託は、企業規模や業界・業種にかかわらず活用できます。特に次のいずれかに当てはまる場合、経理代行が課題解決の有力候補です。
- 本業が経理業務に圧迫されている
- 経理担当者の急な退職で困っている
- 従業員の採用が難しい、採用しても定着しない
- 経理の知識不足でミスが頻発している
- 事業展開のため事業に専念したい
- 銀行に行く時間がない、待ち時間などムダをなくしたい
- 採用や育成に時間や費用をかけられない
- 経理の業務プロセスに改善・再構築の必要性を感じている
フリーランスの個人事業主や一人社長、一人親方にも、経理代行サービスの利用はおすすめです。
では、どこに経理業務を委託すればいいのでしょうか。
経理業務を委託できる外部業者の種類
経理業務を委託できる先には、大きく分けて次の3つがあります。
経理代行会社
1つは、経理業務を専門に請け負う代行業者です。経理代行サービス会社、経理アウトソーシング会社など呼び方は異なりますが同じ性質のサービスです。ただし、サービスの範囲や内容、料金などはさまざまです。
たとえば、預金管理や支払処理などフルアウトソーシングが可能なところもあれば、「入出金伝票の作成」「銀行振込」など作業単位で請け負うところも。また、そのどちらかの使い方が選べる業者もあります。
経理代行を専門に行うため、レスポンスが早いこと、柔軟に対応してもらいやすいことがメリットです。
税理士事務所
税理士事務所でも経理代行が可能です。税理士は税務の専門家ですが、税務申告には適正な経理処理が不可欠なこともあり、経理を請け負っているケースも多く存在します。
経営コンサルティングを行う税理士事務所も多数あるため、経理作業のみならず経営全般のサポートが受けられること、法に精通した専門家がいることが大きな特徴です。
ただし、訪問して作業を行ったり、専門的なサポートを行ったりするため、料金はやや高い傾向です。
クラウドソーシングサービス
「ランサーズ」や「クラウドワークス」など、インターネット上のクラウドソーシングサービスでも経理代行をしている個人や企業が探せます。税理士や会計士の資格を持った経理経験者などが仕事を請け負います。
メリットとしては、すべてオンラインでのやり取りのため、料金上の地方格差がないことが挙げられます。ただし、個々で経験・スキルなどに偏りがあったり、すぐに連絡が取れない可能性があったりします。
経理業務を委託するメリット・デメリット
上記のように「できる業務」と「できない業務」があるほかにも、メリット・デメリットがあります。順に見ていきましょう。
経理業務を委託するメリット
経理を委託することで、次のようなメリットがあります。
- 社内人材がコア業務に専念できる
- 業務効率化ができる
- 属人化やブラックボックス化の心配がなくなる
- 法改正への適応などの苦労がなくなる
- 経理人材の勤怠・教育に関する管理が不要になる
- 経理人材の入退職にかかる手間やコストが省ける
- 専門業者への委託で、より質の高い作業が可能になる
手間が大きく省けるため、業務の効率化やコア業務への集中が可能になります。そうなれば、生産性の向上につながるほか、事業の拡大や別事業への展開などに取り組む余裕も生まれます。
人材確保の必要がないので、求人募集やPCなどの備品にかかるコスト管理にかかるコストも削減できます。ただし、委託先の料金体系や委託範囲などによって逆に高くつく可能性もあるので注意が必要です。
経理業務を委託するデメリット
経理業務を委託した際にデメリットとなるのは、次のようなことです。
- 委託料がかかる
- 経理処理にタイムラグが発生する恐れがある
- 委託先との意思疎通が図りにくいこともある
- 当事者意識が薄れ、社内にナレッジ・ノウハウが蓄積しない
- 委託先のスタッフに入れ替わりが多いと、引き継ぎ等に支障がある
- 委託先から情報漏洩するリスクがある
外部に委託するからには、料金を支払わねばなりません。従業員数や委託する業務内容などによっては、人材採用以上のコストとなる恐れもあります。
駐在でないことから、処理の発生から対応までに時間がかかる可能性もあります。急ぎやイレギュラー対応が多い場合は要注意です。同じ理由で、委託先との意思疎通が図りにくいおそれもあります。
特に経理をまるごと委託した場合、自社での処理がなくなることで当事者意識が薄れがちに。法改正への対応など、自社で対応する必要がなければ知識やノウハウも蓄積されません。
経理業務のうち委託できるもの・できないもの
経理業務の一部の委託も全部の委託も可能ではあるものの、請け負えない業務もあります。
ここで、何が委託できて何が委託できないのかを確認しておきましょう。
委託できる経理業務
経理関連の業務のうち、委託できる内容は委託先によって一部異なります。順に説明します。
経理代行・クラウドソーシングへの委託
経理代行の会社には、次のような業務を委託可能です。
- 記帳代行
- 経費精算
- 銀行口座の入出金管理・振込手配
- 売掛金・買掛金の管理
- 見積書・請求書の発行
- 給与計算
ただし、委託先の業者によってサービスの範囲や内容は異なります。たとえば振込手配などは行っていない業者も多く存在します。委託可能な業務範囲は、契約前に細かく確認しておきましょう。
税理士事務所への委託
税理士事務所に依頼する場合、上項の業務に加えて、次のような業務も委託可能です。
- 法人税などの税務申告、年末調整
- 決算書・確定申告書など税務書類の作成
これらは法律で税理士の独占業務に定められています。そのため、税理士以外が請け負うことはできません。
委託できない業務
経理代行サービスやクラウドソーシングの場合、次のような業務はほとんどが対象外です。
- 現金を取り扱う業務
- 自社内に常駐しての業務
- 企画立案や判断を伴う業務・
- 資金調達、予算管理などの財務
現金の取り扱いはできないほか、企業の将来にかかわる業務については請け負っていません。また、エンジニアなどの業務委託のように、自社に常駐させることもできません。
ただし、税理士事務所であれば、資金調達など財務部門を請け負うことや、経営や税務の相談を受けることも可能です。ただし業務範囲は個々の税理士事務所により異なります。
経理代行サービスの相場はどれくらいか
経理業務を委託する上で気になるのは、やはり費用です。委託の料金は企業規模や取引件数、委託する業務の範囲などによってさまざまに異なるのですが、ここでは経理代行サービスに依頼する場合の料金相場を見ておきましょう。
初期費用
経理代行サービスへの依頼では多くの場合、初期費用として「クラウド導入費用」がかかるケースが多く見られます。クラウド導入とは、インターネット上でデータを管理・保管できる会計ソフトを導入することです。
経理業務全般をクラウド化する場合、金額は20万円以上かかるのが一般的です。
料金体系は各社で異なる
月々の利用にかかる料金については、料金体系も各社で異なります。よくあるのは次のようなケースです。
従量課金制 | 利用した分だけ料金を支払う、業務量などにより料金が毎月変動する |
定額制 | 業務量などによりあらかじめ決めた料金を毎月支払う |
時間別のプラン制 | 月20時間、30時間など月の稼働時間で設定したプラン料金を支払う |
額面だけでは高いか安いかの適正な判断ができないので、自社に必要なサービスを利用した場合にいくらになるのかを具体的に確認する必要があります。
委託する業務別の相場
委託する主な業務ごとの費用相場は次のとおりです。
委託業務 | 相場・概要 |
---|---|
記帳代行 (日々の仕訳や帳簿の作成など) | 月額1~3万円程度 (100仕訳まで1万円、201~300仕訳で2万円、401以上で3万円前後) |
給与計算 (給与・社会保険料の計算など) | 1人あたり月額1,500円~2,000円 |
ネットバンキングの振込 | 10件で5,000円前後 |
たとえば給与計算が1人あたり500円と低く設定されている場合もあります。その場合、基本料金として1~3万円が別途必要となっているケースが多いです。
また、税理士事務所や提携業者の場合、給与計算の業務に年末調整が含まれるケースもあれば、別料金となるケースもあります。
委託先による相場の比較
一定の条件下で、委託先によってどのように違うかを見ていきます。
ここでは、従業員数20名、月仕訳300件のメーカーを例にして比較してみましょう。
委託する業務内容は、振込や入金確認などの「銀行代行業務」と「会計ソフト取り込みデータの作成」とします。
委託先 | 費用相場と概要 |
---|---|
経理代行会社 | 20万円~ データは郵送がメイン |
税理士事務所 | 25万円~ 自社に来訪しての業務のため高い傾向 |
クラウドソーシングの利用 | 15万円~ オンラインで完結、クラウドソーシングサービスの利用料金も必要 |
クラウドソーシングは、来社しないことなどから他の委託先と比べて割安です。ただし、仲介するプラットフォームサイトへのシステム使用料などが別途必要となります。
経理代行料金の高低を決める要素
委託の際の料金は、次のような要件で高くなる傾向にあります。
- 企業規模…従業員数、売上高などが大きいほど高くなる
- 取引件数…取引件数が多いほど高くなる
- 業務内容…専門的な業務であるほど高くなる
- 委託先業者の規模…大手ほど高くなる傾向
ただしあくまで「傾向」なので、実際に依頼する際は同条件で相見積もりを取って比較してください。無料相談を行っていれば、問い合わせてみましょう。
自社雇用、派遣社員受け入れとの比較
自社の従業員を募集・採用するか、派遣社員を受け入れるか、それとも業務を外部に委託するか。それぞれのケースで相場を比較してみます。
自社での従業員採用
自社で人材を雇用して経理業務を行わせるには、社員1人につき毎月30万円程度の負担が必要です。
派遣社員の受け入れ
派遣社員を受け入れる場合は、派遣スタッフの給料や派遣会社への派遣料などで月に35万円~50万円の費用がかかります。
経理代行サービスの利用
経理代行サービスを利用する場合、必要に応じた使い方ができることから、月額5万円程度で済むケースもあれば20万円以上となるケースもあり、さまざまです。
当社Bricks&UKアウトソーシングの場合
当社Bricks&UKアウトソーシングでのクライアントのボリュームゾーンは、月11万円~16万円となっています。うまく活用すれば、従業員を置くのに比べ半額以下で済むことになります。
経理業務を委託する際の注意点
上記のように、経理業務の委託にはデメリットとなる部分もあります。まずはデメリットを把握し、対策を取って有効活用するのがおすすめです。
特に次の点については必ず押さえておきましょう。
経理業務の棚卸しをする
まずは自社で経理業務の棚卸しをします。経理は属人化やブラックボックス化しやすい業務のため、すべて棚卸しして見える化しないとスムーズかつ適切な委託ができません。
業務の棚卸し後、どの業務がネックになっているかなどを考え、外部委託する業務範囲などを決めます。
事前のすり合わせをしっかり行う
委託先の業者とは、事前にしっかりと打ち合わせをしましょう。その際、委託したい業務と相手が受託できる業務が合致するかどうかを確認してください。
当方は「やってもらえると思っていた」のに、委託先では「サービス対象外であることを了承済みだと思っていた」などの食い違いが生じる恐れがあります。
なるべく定期的な打ち合わせの場を設けるなどして意思疎通を図り、理解のズレや業務のモレを防ぎましょう。
委託先のセキュリティ対策を確認する
どのようなセキュリティ対策を練っているか、相手側に必ず確認しましょう。サイバー攻撃への対策、個人のミス等による情報漏洩の防止策など、あらゆるリスクを想定した対策が練られているかが重要なポイントです。
委託先が情報漏洩などを起こした場合でも、委託元の管理責任が問われます。
複数の業者のサービスと料金を比較する
経理業務を請け負う会社はいくつも存在します。複数のサービスを総合的かつ具体的に確認・比較して、自社の課題解決に最適な委託先を選んでください。
サービスの範囲や内容、料金設定は、他者と同じ名目でも内容が異なる場合があるため注意が必要です。その他、連絡の取りやすさやスタッフの入れ代わり頻度なども確認しておくのがおすすめです。
また、業務フローの改善や新たな会計ソフトの導入が必要となった場合、月額費用の他にコンサルティング料がかかる可能性もあります。また、最低半年の契約が必要だったり、支払いが前払いだったりするケースも多いので注意が必要です。
経理の委託は「Bricks&UKアウトソーシング」へ
経理業務を外部の業者に任せるには、経理代行サービス業者に依頼するか、税理士法人に依頼するか、クラウドソーシングサービスを利用する方法があります。
ただし、料金やサービス内容、質などがさまざまに異なる複数の業者があります。利用の際は、各社を比較して最適な委託先を選びましょう。
当社「Bricks&UKアウトソーシング」は、従業員150名以下の中小企業・ベンチャー企業に特化した経理代行サービスの会社です。税理士法人を母体としています。
経理業務すべての受託や、現在ご利用の会計ソフト・ツールの活用、引き継ぎ期間を持てないケースでのお引き受けも可能です。
料金は後払い制、最低契約期間もないため気軽にお試しいただけます。ぜひ一度ご相談ください。